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月刊JGAニュース

委員会活動報告  

『医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(第27回)』開催 平成30年5月30日水曜日 三田共用会議所 講堂

 今回「第27回医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(以下、流改懇)」が開催されましたのでご報告致します。

 流改懇は厚生労働省(以下、厚労省)の意見聴取の場として、医療用医薬品流通の現状を分析し、流通の効率化推進、公的医療保険制度の下での不適切な取引慣行の是正等についての検討を行うことを目的にしています。


 今回の流改懇は平成29年度の流通改善の取組状況と、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」(以下GL)のフォローアップについてが主題となりました。

 そのGLの状況ですが、前回の報告(第26回流改懇開催報告:JGAニュース1月117号)にてGLの原案の公開について記述しました。その後、平成30年1月23日に厚労省医政局長および保険局長の2局長通知が第26回流改懇で示されたほぼ原案通りのまま発出され、本年4月より運用が開始されています。

【第27回流改懇議題】

1.平成29年度上期等の流通改善の取組状況について

2.「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の今後のフォローアップについて

3.その他 ※配布された全ての資料は厚生労働省HPにて公開されています。

流改懇資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=127251)


 会議の冒頭に主催者側の橋本泰宏大臣官房審議官より挨拶がありました。その中で、流改懇にて過去から議論されてきた諸問題の解消のために、本年1月にGLを導入した経緯、またその実行性を担保するため厚労省経済課に相談窓口を設置した件についての話しがありました。相談窓口に寄せられた事案は、場合によってはヒアリング・指導が行われ、今後GLの遵守状況については流改懇にフィードバックされるといった流れが想定されています。また、今回の流改懇は運用を開始して最初の会合になるため、GLを巡る直近の状況、各団体の取り組み、今後のフォローアップについての議論行うよう要望されました。

 当日の配布資料を基に、資料のポイントと一部議事内容について報告致します。

1.平成29年度上期等の流通改善の取組状況について

 各資料に対し、事務局の経済課、また関係団体より説明がありました。

資料1平成29年上期等の流通実態

 事務局より流改懇にて毎回トレースしている各項目について、直近の数値を確認しました。

≪各種水準の推移≫

 平成29年度上期における各種水準について確認しました。平成27年度と比較すると、仕切価は0.2ポイント上昇、納入価は0.5ポイント下落、一次売差マイナス(メーカーから卸への仕切価格と医療機関への納入価格の逆転現象)は0.7ポイント拡大、薬価差も0.5ポイント拡大となりました。

≪単品単価取引の推進の状況≫

 調査対象となっている200床以上の病院での単品単価取引は、前年28年度と比較し7.5ポイント上昇しており、病院においては単品単価取引が増加傾向にあります。

 20店舗以上の調剤薬局チェーンでは、28年度と比較すると0.7ポイント増加傾向にありますが、27年度と比較すると1.5ポイント減少しています。調剤薬局チェーンにおける単品単価取引は横ばい傾向となっています。

≪妥結率の推移≫

 未妥結減算制度導入後は9月の妥結率が高い値で推移しています。

≪売上構成比の推移≫

 直近の数値では後発品が増加傾向、長期収載品が減少傾向にあります。

資料2医療用医薬品における情報化進捗状況調査結果(速報値)

 平成29年9月末時点の調査結果では、平成33年4月出荷分より有効期限、製造番号を含む変動バーコードの表示が必須となる「販売包装単位」、「元梱包装単位」は共に、28年と比較して増加傾向にあり順調に推移しています。

資料3流通改善ガイドラインへの対応について(日本医薬品卸売業連合会)

 GLの発出と運用を受けて、現在卸連ではプロジェクトの設置、地区ごとの説明会の実施等、その取組が強化されています。

≪川上流通における課題≫

 一次売差マイナスの解消については、過大な薬価差の解消とともに、リベートやアローアンスとった2次、3次の利益を差し引いた最終原価の設定が必要。過大な薬価差の解消には、医薬品の価値を無視した交渉の改善と同時に、卸側が仕切価を踏まえた交渉が重要と報告されました。

 在庫管理については、売上では10%前後である後発医薬品が倉庫スペースの40%以上を占めている後発医薬品が倉庫スペースの40%を超えているとされ、効率的に管理するために、元梱包装と販売包装におけるバーコード表示面の統一と規格(サイズ)の標準化が必要と要望されています。

≪川下流通における課題≫

 早期妥結と単品単価契約の推進には、医薬品の価値を踏まえた交渉に合わせ、契約書・覚書の締結の推進が重要と報告がありました。

 併せて頻繁な価格交渉の改善にも触れ、薬価調査の信頼性の観点からも、年間契約等長期の契約締結が重要と報告されています。

 医薬品の価値や流通コストを尊重した交渉を推進するため、取引先への理解を求める活動が行われます。

≪流通当事者間の課題等≫

 返品の扱いについては、モデル契約書等を参考に、事前に返品条件を取り決める事が重要。消費税への対応としては、平成31年10月に予定されている消費税引き上げ時に薬価調査を行うべきと要望されています。

資料5後発医薬品ワーキングチーム(以下、後発医薬品WT)活動報告

 後発医薬品WTの活動については、前回に引き続き日薬連推薦委員を務めている筆者より報告を行いました。

≪平成29年度の取組≫

 資料1にもある直近の流通実態を確認し、後発品数量シェア80%の取組については卸連とその品目数や返品の考え方について協議を行っています。また在庫管理については、販売規格数の現状や新バーコードの印字について意見交換を行いました。

≪仕切価の設定状況等について≫

 全体の傾向を確認しています。今後は本WTでもGL遵守状況の確認等を踏まえ、検討していきます。

≪GLのフォローアップについて≫

 急配の状況を把握するため、実態調査を実施することになりました。

≪今後の取組≫

 後発品数量シェア80%時代を前に、流改懇新提言等で課題として抽出された議題等を以降の会合で更に深堀りし、ジェネリック医薬品の効率的な在庫管理・配送の推進と流通課題の解決のため検証、検討を継続します。

資料7「流通ガイドライン」の今後のフォローアップについて

 前述のGLについて、流通関係者の留意事項を簡潔にまとめた資料が提示されました。

≪流通関係者の留意事項≫

 ・一次売差マイナスの解消

・早期妥結と単品単価契約の推進、頻繁な価格交渉の改善

・過大な値引き交渉の是正

・流通の効率化等

≪今後のフォローアップ≫

 開設された相談窓口に寄せられた相談内容、およびGLの遵守状況の確認等を流改懇に報告するとともに、継続してフォローアップを行うとされました。

資料9平成30年度仕切価設定等に関する緊急調査結果(暫定版)

 今回初めて開示された資料で、GLに記載されている「売差マイナスの改善」に関し、川上取引(製造販売業者と卸間の取り引き)のメルクマールになると想定されます。

 医療用医薬品メーカー19社(非開示)を対象に、平成29年度薬価を100とした場合の平成30年対応状況が製品カテゴリー別に示されています。表示方法は「増・変動なし・減」の3段階で、企業の実数とその割合のみで記載されました。

・新薬創出等加算品:増6社、変動なし10社、減0社

・特許品:増4社、変動なし12社、減0社

・長期収載品:増4社、変動なし10社、減3社

・後発医薬品:増7社、変動なし7社、減0社

・その他(後発品がない製品等):増5社、変動なし12社、減0社

 併せて割戻し等の運用基準の明確化が示されましたが、19社全てにおいて「割戻し・アローアンスともに、基準を書面にて提示している」と回答されています。


 冒頭の橋本審議官の話しの通り、GL運用後初めての流改懇開催となりました。以下は筆者の感想になりますが、GLに記載されている「売差マイナスの改善」については、毎年改定などの薬価制度改革が示されたこと、また本年4月の診療報酬と薬価の改定もあり、各社・各団体とも予想以上に苦慮されたのではないかと推察します。GE薬協では1月のGL発出を受け、翌2月に会員企業を対象に「流通改善ガイドライン説明会」(JGAニュース3月119号)と題し、厚労省医政局経済課の首席流通指導官にご足労いただき、GL発出の理由と内容の解説のための説明会を実施し、既に啓発にあたっています。

 川上取引における流通改善には、流改懇のワーキングチームとして活動している川上WTのみならず、今後はGE薬協が参画している後発医薬品WTでも活動と検証が必要になってきます。薬価制度と実勢価は切っても切れない関係にあり、今後の抜本的な改革に向け、GLの遵守状況の確認については、流改懇でも議論が加速するものと予想されます。

流通適正化委員会内海滋

2018年度環境ポスター・キャッチコピー最優秀賞受賞者 「ニプロファーマ株式会社 佐藤 義隆 様」より 「日々の環境活動からキャッチコピーへ」

 多くの応募作品から今年度の最優秀作品に選ばれ大変光栄に嬉しく思っています。また、私の現在の職務が労働安全衛生および環境活動の推進であり、前向きに環境活動に取り組む従業員の姿から生まれたキャッチコピーの受賞で二重に嬉しく思っています。

 ISOやEA21等の環境活動に対する認証企業も多いと思いますが、当社も多分に漏れず各工場で環境の認証を取得しています。省エネや廃棄物削減の取り組みは、なかなか難しくマンネリ化や活動滞留など様々な課題にも直面し、時には「仏作って魂入れず」のフレーズが浮かび反省し、一方でひたむきに取り組む従業員の姿に嬉しさが込み上げるなど一喜一憂の日々ですが、環境活動の代表者である社長や工場長の強いリーダーシップと従業員全員参加の掛け声のもと工場間で切磋琢磨し環境活動に取り組んでいるところです。

 キャッチコピー前半の「エコ活動、一人一人の想いこそ」は、特に若者たちが積極的に取り組む姿を想像し思い浮かびました。後半は、オゾンホールや平均気温上昇など、かけがえのない地球が病みつつあるという現状と製薬業界らしさにこだわり考える中、ストライクのキーワード「処方薬」が思い浮かび今回のキャッチコピーが生まれました。地球を中心に明るい笑顔がちりばめられた素晴らしい今年度のポスターを拝見し、キャッチコピーと相まって協会関係各位の環境活動推進の一助になれば大変嬉しい次第です。

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第21回 IGBA年次総会

 第21回のIGBA(InternationalGenericandBiosimilarMedicinesAssociation:国際ジェネリック医薬品・バイオシミラー協会)年次総会が、6月13日~15日にハンガリー・ブダペストにおいて盛大に開催されました。

 今回も、昨年と同様に、欧州ジェネリック医薬品協会の第24回総会との合同総会として開催され、参加者は合計226名(欧州:179名、米国:17名、カナダ:9名、日本:11名、その他:10名)でした。日本からの参加者の内訳はGE薬協会員企業10名、事務局1名でした。

 総会ではジェネリック医薬品とバイオシミラーを取り巻く最近の国際的な動向や課題について、「特許切れ医薬品市場の持続可能性」、「外部要因」、「いかに生き残るか」、「国際的な協調」、「データの取り扱い」、「偽造医薬品との闘い」、「付加価値医薬品」、「バイオシミラー」、「将来の戦略」など各テーマのセッションごとにそれぞれ講演と質疑応答が行われました。

 ジェネリック医薬品企業のみならず欧州議会政府、患者団体など各ステークホルダーも加わりジェネリック医薬品産業の将来の持続可能性について活発な議論が行われました。来年も6月に欧州で開催される予定です。

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