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月刊JGAニュース

沢井製薬の原薬品質保証体制  

沢井製薬株式会社

 近年、ジェネリック医薬品(以後、GEと表記)の品質や安定供給について、関係各所からいろいろなご意見をいただいています。海外原薬なので品質、安定供給が心配、等々です。しかし、GEだけでなく全ての医薬品は、その原薬・上流工程の重要中間体・出発物質まで含めると、純国産はほぼないと言っても過言ではないでしょう。
 医療用医薬品の薬価は、医療現場からの調達コスト低減圧力を受け、定期改定毎に平均8%低下し、今後は毎年改定されることが予定されています。この場合単純計算すると、6年後には薬価は当初の60%になり、販売価格も連動します。ここで製造原価(先発品で約30%、GEで約60%と言われています)が変わらない場合、先発品は黒字のままですが、GEは一気に赤字の危機に直面します。GEの製造原価のほとんどは原薬費が占めるため、原薬コストの削減が必須となります。多くのGEメーカーは原薬を自社製造ではなく他社からの調達に頼っています(沢井は100%外部購入)。何故ならGEメーカーは少量多品種の医薬品を製造販売するので、原薬毎に適した製造設備を全て自社内に保有することが困難なためです。更に、一般家電等と同様にコストの観点から海外製造(特に、韓国、中国、インド等)が徐々に増加しています。
 故に原薬の調達先を外部に依存するGEメーカーは、自社医薬品の品質保証・安定供給を確保するため各原薬製造元の品質保証体制、製造・供給体制の維持・管理について、常日頃から非常に神経を尖らせています。
 沢井製薬では、約300成分500製造所から原薬を調達しています。国内43%、欧米23%、韓国13%、中国10%、インド7%です(2020.1.1現在)。原薬を製造する原料である「上流の重要中間体」を製造する製造所を加えるとさらに海外依存率は上昇します。これに対し、サプライチェーンの状況も含むGMP管理全般について、自社による実地監査は大変重要であると考え、従前より定期的に行ってきました。何年もかけ、地道に年100ケ所以上の製造所を実地監査し、昨年度には上記の98%の製造所を完了しました(残り2%は書面による査察結果の確認。紛争近接地域、購入量が極少のため監査受入拒否等の理由)。この時一番苦労したのは、設備投資が必要な改善指導を製造元に納得させ、製造販売業者の立場として実際の改善に結び付けることでした。今後は、監査結果に基づきその改善状況や更なるGMP管理に関する確認・指導の必要性(リスク)に応じて次回監査の期日を個別設定し、各製造所が最低限のGMPレベルから当社の上乗せ要求レベルまで常時クリアできるように監督・指導する考えです。一方上記定期監査以外では、日常生産において発生する各種課題についてfor-causeauditとして都度現地に赴き、原薬製造所と協力して問題解決に努めています(定期監査の約半分の年間回数)。
 なお、これまでの監査結果から、国内海外という区分だけで品質の良し悪しは決まらないと感じています。あくまで、各製造所のGMPに対する姿勢がすべてを決めます。実際近年の例を観ても国産だから諸手を挙げてOKというようにはなっていません。製造元との日常的なコミュニケーションにより、常に品質・GMPに対する感性を共有し当社と同等レベルで維持していただくことを心がけています。
 最後に、最近(2020.3)の頭痛の種を紹介します。もちろんCOVID-19。アジア各国について無事出入国できるかの保証がなく、また欧米についてもいつ出入国に制限が付くか予断を許さない状況になりつつあります。余程の事情がない限り実地監査を延期せざるを得ず、当面は国内も含めて書面監査への変更も検討しています。毎年の承認品目数の増加、また不測の事態に備えた原薬のダブルソース化により、監督すべき原薬製造所が増えています。COVID-19対策の観点から不要不急の出張は避けるべきですが、長期に及ぶと安定供給のみならず品質保証面でもリスクが高まる事態となります。海外製造所の割合が増えると、更に実地監査のハードルが高くなります。日本にとって非常に重要な医薬品については国産化の要否、その際の「仕組」の議論を始めてもよいのではないかと考えています。

 

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