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月刊JGAニュース

製薬会社の使命と原薬に対する各種取り組み  

東和薬品株式会社

 突如姿を現したCOVID-19が、世界中の人々の穏やかな日常生活や活気に満ちた経済活動を脅かしている。病を克服する薬剤さえ手にすることができれば、多くの人命が救われ、かけがえのない日常がまた戻ってくることを誰しもが思い、一刻も早い治療薬や予防薬としてのワクチンの登場が待ち望まれている。今まさに製薬会社の真価が問われているものの、私たちに長期に渡る新薬開発を座して待つ余裕はない。この緊急事態において、可及的速やかに治療薬を提供する術は、既存薬の転用(ドラッグ・リポジショニング)であろう。
 数多くの都市がロックダウンの危機に瀕した結果、世界中の経済活動に急ブレーキがかかり、物流が止まり、グローバル・サプライ・チェーンは一瞬にして破壊された。安価な労働力をあてにして、近年国外での委託製造に依存してきた日本の多くの産業のビジネスモデルに、黄~赤信号が点滅している。製薬業とて、もちろんその例外ではない。
 さらに近年、“サルタン系薬剤、ラニチジン塩酸塩、ニザチジン、メトホルミン塩酸塩に共通する発がん性物質N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)混入問題”や“海外化学工場での爆発事故”などを契機に、“原薬の品質”や“安定供給”に関する様々な不安が渦巻き、医療現場や製薬業界を揺るがす事態を招いたことは記憶に新しい。
 こうした緊急事態に対処すべく、各社がさまざまな対策を講じてきたものの、(i)日本の医薬品には製造販売承認制度があり、(ii)自社生産を行うためには設備投資から始める必要があり、(iii)仮に他国から急ぎ代替品を輸入しようとしても、日本の規格に適合する製品の入手は容易ではなく、突然絶たれた供給ラインを一社で速やかに復旧させることは至難の業である。今こそ、先発、後発はもとより、産官学の区別なく、有事の際は袂を連ねて人々の健康に奉仕する姿勢が求められている。
 東和薬品では、グループ会社である大地化成と協働して、“原薬の活用“、”原薬の品質”、“安定供給”、“原薬製造の技術革新”に関する様々な取り組みを行っている。例えば、(1)原薬の有効活用(ジェネリック医薬品のドラッグ・リポジショニングなど)、(2)原薬のプロセス開発(工程数を減らし、高品質な原薬を得る優れた製造法の開発)、(3)原薬製造に必要な鍵中間体の調達(汎用性の高い化合物を入手)、(4)自社製造(自製化)品目の選定と製造委託(国内外協力会社との連携)、(5)技術革新(フロー精密合成など)、(6)大地化成(自製化原薬の製造)との連携、などの多岐に渡る取り組みを推進して、“原薬の品質”や“安定供給”に加えて、“プラスαの価値創造”に注力している。
 新薬開発当時から何年も経て製品化されるジェネリック医薬品は、原薬製造工程の見直しについて検討の余地が十分にある。開発当時の合成手法では、“製造工程の短縮”や“他の製造ルートによる製造”がたとえ困難であったとしても、近年新たに開発された合成手法や機器、ノウハウなどを駆使することによって製造工程の見直しが可能であり、簡便かつ複数の製造法確立による“安定供給”かつ“高品質な原薬供給”を目指すことが可能である。
 ジェネリック医薬品の数量シェア80%が目前に迫る中で、国民の誰もがジェネリック医薬品を手にする時代が到来した。長期収載品がジェネリック医薬品に置き換わることは即ち、高品質かつ安定供給の責任が問われることを意味する。先発、後発という垣根を越えて、“くすりづくり”には、今もなお様々な取り組みや技術の進歩が必要とされており、製薬業に携わる私たちは、最新技術の粋を極めた製品化を常に意識して邁進する姿勢を忘れてはならない。

 

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