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月刊JGAニュース

特別寄稿  

中国産原薬の価格高騰でジェネリック医薬品メーカーに影響か

株式会社じほう 報道局

海老沢 岳

  先日、弊社日刊薬業で中国政府が環境保護の規制を強化した影響で、中国産原薬の価格が高騰している状況を伝える記事を書いた。
 中国でかつては地方政府の官僚が賄賂の受領や地元の産業振興の観点から汚染物質の流失に目をつぶっていたが、中央政府が環境汚染の規制に本腰で乗り出した結果、工場の操業停止や閉鎖が起きている。
 原薬の原材料となる“出発物質”の製造で中国が世界で使用される出発物質の7、8割を作っているとみられ、世界各国で原薬価格が高騰する恐れが出てきているという。
 新薬は薬価が高いので薬価に占める原薬の割合は低いが、後発品は薬価の50%から60%とも言われ価格高騰の影響が後発品メーカーでより大きいとの傾向もある。
 取材を進めていると、識者からは中国での環境保護規制はまだ関係法制の整備中なので今後さらに厳しくなっていく可能性は高いし、政府もそういう方針を打ち出していると、中国産原薬の価格高騰問題も続くとの見方を示している。
 日本ジェネリック製薬協会の澤井光郎会長も5月末の会見で「法令によって中国全企業の環境保護投資が進んでおり、さまざまな分野で値上がりが起きている」と危機感をあらわにしていた。
 原薬価格高騰の問題は▽新興国での人件費の高騰▽規制強化に対応できなかったライバル工場の閉鎖により原薬メーカーが競争優位に立ち値上げする▽環境規制に対応するため設備投資がかさみ値上げする―などいくつもの要因が絡み合ってわかりにくい。
 製薬業界に情報提供する媒体としてこうした社会問題にも目を向けて現場で何が起きているのか今後も報道していきたい。

バイオシミラー CMO

株式会社薬事ニュース

野口 一彦

 先日、塩野義製薬の摂津工場内で行われたペプチスター本社工場の地鎮祭を取材した。ペプチスターは、ペプチドリーム、塩野義製薬、積水化学工業が創業3社として昨年9月に設立した“特殊ペプチドCMO”。来秋の稼働を目指す新工場では、ペプチド原薬の合成・製法の研究開発や製造受託等を行う計画だ。
 ペプチスターの窪田規一社長は、着工記念式典での挨拶で「特殊ペプチド創薬のマーケットを作る観点からすると、製造も関わらないわけにはいかない」と、ペプチスター創業の理由を述べた。窪田社長はもともとペプチドリームを設立した社長である。ペプチドリームは、グローバル製薬企業と特殊ペプチド創薬に関する共同研究を進めている。ノバルティスや米メルク、サノフィ、GSKなど錚々たる面々との間で研究を進めているが、「特殊ペプチド原薬をどこが製造するか」という大きな問題を抱えていた。窪田社長は当初、製薬企業が製造してくれると考えていたが、「特殊ペプチドを作ることはなかなか難易」。そこで、いち早くマーケット
を作るために、自らが製造に関わるべきと判断したわけだ。
 ここまでの話を聞いた時、頭に浮かんだのはバイオシミラーである。医療政策的にも、患者アクセスにとっても重要な役割を果たすバイオシミラーであるが、国内ではマーケットが十分構築されていない。医師や患者の理解不足で使用が進まないとの意見が多いが、そもそもバイオシミラーの製造や開発の担い手がいない(限られている)ことが大きな要因だろう。窪田社長風に言えば「マーケットを作る観点からすると、もっと製造に関わらなければいけない」ということだ。では、誰が製造に関わるべきか。
 厚生労働省経済課の飯村康夫・ベンチャー等支援戦略室長は「GEメーカーは、BSをやならないと今後生き残れない」と講演でコメントした。しかし、ジェネリック医薬品企業がバイオシミラーの工場を作るのは無理だろう。すでに数量シェア80%目標に向け、銀行から借金して工場を拡張している。東京理科大学の坂巻弘之教授によると、1万5000 ~ 2万リットルの培養槽を建てるのに、300億円~ 500億円の投資が必要だそうだ。数量シェア80%目標達成のための設備投資に加え、薬価引き下げの逆風もあり、ジェネリック医薬品企業にバイオシミラーの培養槽を建設する余裕はなさそうだ。ここにペプチスターのモデルが参考にできるのではないか。ジェネリック医薬品企業や新薬企業、化学企業らが共同出資し、バイオシミラーCMOを作るのだ。ペプチスターは新たに14社が出資に加わった。国が使用を促進するバイオシミラーのCMOなら、もっと出資が集まるかもしれない。しかも、バイオシミラーに限定する必要はない。サンドのバイオシミラー製造工場は、親会社であるノバルティスのバイオ医薬品の製造工場と同じだという。つまり、同じ工場で革新的なバイオ医薬品も製造可能なのだ。
 そんなことを考えていたときに、大手ジェネリック医薬品企業の社長にインタビューする機会があり、他社と共同でバイオシミラー CMOを設立するアイデアについて探りを入れてみた。すると「検討していないが、一考の価値あり」とのこと。その後「簡単にはいかないと思う」と付け加えられたが、万が一話が進んでいるということになれば幸甚である。

ジェネリック医薬品メーカーの責任

薬事日報社 編集局

村嶋 哲

 ジェネリック医薬品メーカーが、存在感を発揮してきた。調査会社のIQVIAが発表した2017年の販売会社別売上ランキングで、18位に日医工、20位に沢井製薬と初めてジェネリック医薬品メーカーがトップ20入りしたのだ。新薬枯渇で先発品メーカーが売り上げを落とす中で、一気に浮上してきた。
 4月に施行された収載後10年が経過した長期収載品の薬価を引き下げる「G1」「G2」という新たな薬価算定ルールでは、最終的には長期収載品をジェネリック医薬品と同じ薬価まで引き下げ、市場からの撤退も迫ることとなる。長期収載品とジェネリック医薬品が競争する構図から徐々に、長期収載品のライフサイクルが短くなっていき、将来的には長期収載品不在の時代がやってくる。まさに、ジェネリック医薬品数量シェア80%を象徴しているといえるだろう。
 ただ、ジェネリック医薬品の実力が試されるのはこれからだ。その理由として、長期収載品と同じ価格になれば、長期収載品を選びたいと考える医療従事者や患者がまだ多く存在するからだ。国の使用促進策もあってシェアを伸ばしてきたが、長期収載品が撤退しなければ、患者視点でフェアに選ばれなければならず、長期収載品とジェネリック医薬品の境界がなくなっている印象だ。
 これまで求められなかった社会的責任にも応えていかなくてはいけない。薬剤耐性菌(AMR)への取り組みもその一つだ。医薬品アクセス財団は、製薬企業を対象に、新たな抗菌薬の研究・開発、抗生物質の製造に関する責任方針、抗菌薬のアクセスと適正使用に関するアプローチについて、複数の情報源から情報を収集し、比較分析しているが、調査の中でジェネリック医薬品企業にも言及している。現在販売されている抗生物質の大半を占めているため、薬剤耐性の拡大を抑制する上で重要な役割を担っているが、他の企業群に比べ、透明性が相対的に低いからだ。
 6月にハンガリーで開催された国際ジェネリック・バイオシミラー協会年次総会でも、世界的ジェネリック大手のマイランやサンドから、耐性菌への対応ではジェネリック医薬品メーカーの対応が重要との意見が挙げられた。こうした状況を対岸の火事と考えるのではなく、抗菌薬を販売するジェネリック医薬品メーカーも安定供給と適正使用という責任を果たしていくことが求められる。こうした企業姿勢が、ジェネリック医薬品が将来にわたって使われるための信頼感に直結するのではないかと考えている。

ジェネリック医薬品供給システムの変革期へ

株式会社アズクルー 月刊ジェネリック

賀勢 順司

 医療用医薬品において、数量的にはジェネリック医薬品主導のマーケットが目の前に現れた。今後この状況が再逆転することはないだろう。従来とは比較出来ないほど、安定供給と品質確保が重要となっている。このためジェネリック医薬品メーカーの多くが製剤工場を新増設し、品質保証部門を拡充させてきた。問題は今回のような広範囲の薬価引き下げが続けば、更なる設備投資が難しくなるだけでなく、これまでの投資の償却計画も見直す必要が出て来る点だ。各社は、従来以上に製造コスト削減に注力し始めた。例えば「安定供給の飾り」的だった原薬セカンドソースを「納入価を競わせる」ための実質的なツールと位置づけたり、少しでも条件の良い受託製造企業に製剤を委託するなど従来に無い仁義なき変動が見える。注目すべきはこの動きがジェネリック医薬品という枠を超えて、AGや先発品を巻き込んでいる事だろう。
 供給市場がコストダウンに積極的になることは当然と言えようが、第一義としてしまっては品質などの面でトラブルが起こり兼ねない。行政は、ジェネリック医薬品メーカー自身が適切な収益を上げていかなければ安定供給、品質確保に支障が生じることを充分理解すべきである。
 もう一つの懸念材料は、現行の医療用医薬品関連の制度がどのくらい継続可能なのかという点だ。今年4月、国は薬価制度を大幅に改定したが、決して10年単位で変更不要という目処が立っているわけではない。「薬価は市場実勢価でやっているというのが厚労省の中で非常に重い思想」「薬価調査がしっかり出来るかどうかが医療保険制度、医薬品行政の中では重要な価値」(三浦明経済課課長、6月講演)という考えの下、薬価調査に於いて一品目毎に販売者側データと購入者側データの突合を方針として打ち出した。一方で、「ジェネリック医薬品薬価の一本化、長期収載品をジェネリック医薬品薬価並に」といった目標を掲げる。毎年薬価調査、毎年薬価改定といった作業は、市場に競争原理が機能して初めて医療費削減に繋がる。「品目別薬価」を完全に捨て「同一成分は同一薬価」を目指せば、メーカーもディーラーも供給意欲を低下させることは間違いない。厚労省には、医療用医薬品市場の20年後、30年後のより分かりやすい未来図を示して頂きたい。
 ジェネリック医薬品市場において、日々不安感が広がっている。GE薬協が製造者団体として様々なルールを従来以上に強く提言すべき時期に入ったように感じる。そして、協会に入会するかどうかは別にして、新薬系ジェネリックメーカー・担当部門、AGメーカーを加えた医療用エッセンシャル・ドラッグについて協議出来る場を主導しては如何か。

風鈴の音

医薬経済社

坂口 直

 猛暑が続いている。滝のように噴き出る汗に辟易するなか、そよ風が風鈴を鳴らす。心地よい音色は一服の清涼剤かもしれないが、筆者を含め大多数の人々にとっては、やはり「夏のボーナス」だろう。ただ、各メディアが集計する大企業のボーナスランキングは、爽やかな気分を一掃してしまうので、読み飛ばそうと必死なのは筆者だけかもしれない。
 結局、好奇心に負けてランキングを眺めて呆然とする筆者をよそに、拙宅には、「安かろう悪かろう」ではなく、「安かろう悪くなかろう」製品が並ぶ。家具一式は「お値段以上」の会社、日用品は「百均」、衣服は「ファストファッション」。休日は家族でショッピングモールへ出かけ、フードコートで牛丼、ハンバーガーなどをいただく――。このご時世、何が起こるかわからないので、気付けばせっせと「低コストオペレーション」に励んでいる。
 ただ、筆者のような小市民が安さを享受しているのも、単に海外の安価な人件費や材料費などによるものだ。真偽のほどはわからないが、例えば、ファストファッションでいえば、従業員は劣悪な環境下で働かされ、工場からは化学染料が川に流れているという。何だか申し訳ない気持ちになってしまうが、対策を打ち出そうとする国もある。「世界の工場」といわれる中国だ。習近平国家主席が環境対策に乗り出し、劇的な変化が起きている。
 伝聞するところでは、当局が取り決めた環境基準を超えた工場は、即、操業停止になる可能性があるという。中央の意向に沿うよう、地方当局は違反した業者を情け容赦なく摘発し、その結果、廃業に追い込まれ、工業団地がゴーストタウン化した地域もあるそうだ。業者が操業を続けるには、環境基準を順守するための設備投資を余儀なくされ、そうすると、その投資分が取引価格に反映される構図になっている。
 実はまさに今、製薬業界がこの状況に直面している。中国由来の原薬は、現在値上げの傾向にある。これまで環境に配慮しなかった故に弾き出された価格が、お上の取り締まりとあれば従わざるを得ない。その一方で、予期せぬ制度変更により、ますます利益率が細る国内製薬会社、とくに少量多品種のジェネリック医薬品を手がける製薬会社は煽りを食らう。利幅が薄くなるものの、各社との競争は続く。後発品使用促進策の「追い風」はいつしか「逆風」に転じ、「チャリン、チャリン」という響きはどうやら過去のものとなってしまったようだ。

日本ジェネリック製薬協会、名称を変更しませんか?

東京理科大学経営学部教授

坂巻 弘之

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 日本ジェネリック製薬協会(JGA GE薬協)の最新の統計によると、わが国のジェネリック医薬品シェアは、2017年度で69.9%とのことである。四半期での分析結果では、2017年度第4四半期(30 年1月~同3月)に74.1%に達したとされている。2015年4月に公表された「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」では、2018年3月までに60%以上と、新たな数量シェアによる目標値がはじめて設定されたが、当初の目標よりかなり早いペースでジェネリック医薬品の使用が進んできた。現在は、2020年9月までに80%とすることになっている。
 現行の数量シェアの計算方法や目標値設定は、中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会における平成24(2012)年度改定のための議論がベースになっている。当初の目標値は、欧州でも医薬品使用量の多い米英仏独にイタリア、スペインを加えた6カ国を参考に60%という値が設定された。この議論に筆者は、参考人として発言する機会があったが、目標値設定をマラソンにたとえ、「トップランナー(米独英)を目指すのではなく、まずは、目前のフランス、スペインを目指してはどうか」というような発言をした記憶がある。
 その後、毎年実施されているロードマップ検証検討事業でも、IMS Health(2018年4月にIQVIAに社名変更)データにより、上記6カ国との数量シェアの比較が行われている。2017年の推計値では、日本62%、フランス68%、スペイン64%と、目標とした2カ国にほぼ肉薄するまで迫っている。同データによれば、米国92%、ドイツ87%、英国77%であり、いずれ、数量シェアも頭打ちになることが予想され、数量シェアの次の論点を考えなくてはならない。
 ところで、欧米のジェネリック医薬品業界団体がそれらの名称を変更している。欧州では、EuropeanGenerics Medicines Association (EGA)が2016年3月 にMedicines for Europeに 1)、米国では、Generic Pharmaceutical Association (GPhA) が 2017 年 2 月 Association for AccessibleMedicines(AAM)に2)、という変更を行っている。Medicines for Europeの名称変更の理由は、(1)ジェネリック医薬品の普及により患者アクセスの向上と財政の効率化、(2)バイオシミラーのさらなる普及の重要性、(3)付加価値医薬品(value added medicine)の開発と供給など、業界のスコープの広がりがあったとされる。AAMでも、ジェネリック医薬品とともにバイオシミラーによる患者中心の医療とコスト解決策等を理由に挙げている。
 わが国でも、ジェネリック医薬品をめぐる環境は変化している。バイオ医薬品だけでなく、低分子(化学合成)医薬品には高額な医薬品もあり、患者の経済的負担は経済的・心理的なアクセス阻害要因となりうる。また、「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」の両立が重視されているが、ジェネリック医薬品とバイオシミラー普及による薬剤費節約がなければ、これらを両立することは不可能である。
 ジェネリック医薬品の付加価値製品については、日本は、欧州より進んだ開発が行われてきているといえるが、バイオシミラーの使用促進については、今後、バイオシミラーへの理解を進めていくことが重要で、低分子ジェネリックとは異なる取り組みも必要である。
 もう一つ、今後日本のジェネリック医薬品産業が考えるべき新たな役割があると思われる。今回(平成30(2018)年度)の薬価制度改革は、新薬メーカーの産業育成の視点が強く反映されており、長期収載品に依存した企業体質から脱却し、よりイノベーティブな新薬開発を求めている。その結果、ジェネリック医薬品が上市されて一定期間を経た長期収載品の新たな薬価引下げルールの導入とともに、「退出」する道筋も示されている。
 これまで長期収載品を扱う企業は、特許が切れた後も、実質的に、情報収集・提供等の機能を担ってきたが、厚労省のスキームでは、特定のジェネリック医薬品メーカーが、薬価上の「評価」を受けることになっており、情報収集等の役割を担うことになる。しかしながら、特許切れとなった成分についての情報を特定の1社が担うという仕組みがベストな解決策といえるのだろうか。業界団体や学会がその役割を担うべきと考えている。
 いずれにしても、今後、ジェネリック医薬品メーカーも長期収載品を扱うことになるし、先発企業の中には、長期収載品ビジネスから撤退し、商社系企業に事業売却するところも出てきている。医薬品ビジネスの経験がないところが、生命関連の医薬品情報に責任を持てるかとの疑念もある。そこで、業界団体としてジェネリック医薬品、長期収載品という切り分けをせず、トータルに特許切れ後の「成分」に対する責任をもつべきではなかろうか。
 これからのジェネリック医薬品に関わる議論は、患者中心という基本的な視点に、先発品と同等の有効性・安全性というこれまでの使命に加え、安価なジェネリック医薬品・バイオシミラーによる患者アクセスの向上と、財政への貢献、そして特許切れ製品の情報を含めた付加価値の議論が必要と思われる(図)。
 日本ジェネリック製薬協会としては、これまでのジェネリック医薬品、付加価値製品に加え、今後、バイオシミラー、長期収載品も含めた特許切れ成分まで議論の範囲とすべきと考える。その意味で、日本ジェネリック製薬協会という名称から、より幅広いスコープを包含する名称に変更してはどうだろうか。


図 患者中心の医療と特許切れ製品市場

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1) Medicines for Europe :
https://www.medicinesforeurope.com/news/ega-becomes-medicines-for-europe/
2) Association for Accessible Medicines:
https://www.drugstorenews.com/pharmacy/gpha-changes-name-association-accessible-medicines/

全国健康保険協会(協会けんぽ)のジェネリック医薬品使用促進の取り組み

全国健康保険協会 神奈川支部

1.はじめに

 協会けんぽ神奈川支部では、7月1日に神奈川県厚木市内で開催されたパネルディスカッション「ジェネリック医薬品シェア80%達成に向けた課題と解決策」に、パネリストとして参加しました。
 以下、協会けんぽ神奈川支部におけるジェネリック医薬品に係る現状、課題及び取組についてご紹介します。

2.神奈川県・協会けんぽ神奈川支部の現状

(神奈川県の現状)
 神奈川県は、本年4月から第3期の医療費適正化計画をスタートさせましたが、この計画期間中に取り組むべき課題の一つとして、ジェネリック医薬品の使用促進を掲げています。
 使用割合の目標は、「骨太の方針2017」を踏まえて80%と設定していますが、神奈川県の平成30年1月時点の使用割合(調剤のみ)は70.4%であり、目標達成までの道のりは決して安易なものではありません。
 厚生労働省の統計によると、神奈川県の使用割合は、全国平均(71.9%)を下回る70.4%であり、かつ全国平均との差は拡大傾向にあります。また、全都道府県内での順位も平成26年3月時点の29位から、平成30年1月時点では38位まで後退しています(図表1)。
 このようなことから、神奈川県は、今年度、厚生労働省が実施する「後発医薬品使用促進事業」の重点地域に選定されました。

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(神奈川県のジェネリック医薬品の使用促進に係る阻害要因・課題)
 協会けんぽ神奈川支部の平成30年2月時点の使用割合は72.9%ですが、協会けんぽ全国平均(74.6%)を下回っており、かつ全国平均との乖離幅が拡大しています。
 協会けんぽが作成した「ジェネリックカルテ」(地域ごとのジェネリック医薬品使用促進の阻害要因を「見える化」したもの)をみると、神奈川支部に関しては、(1)医療機関の視点からは、院内処方・院外処方ともにジェネリック医薬品の使用割合が低い、(2)薬局の視点からは、一般名処方限定のジェネリック医薬品使用割合が低い、(3)患者の視点からは、ジェネリック医薬品を拒否する加入者の割合が高い、などの阻害要因が見えてきます(図表2)。
 協会けんぽ神奈川支部においては、これらの阻害要因について、優先順位を付けて対策を講じていくことが大きな課題となっています。

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3.協会けんぽ神奈川支部の取組

 このような中で、協会けんぽ神奈川支部が取り組んでいるジェネリック医薬品の使用促進策についていくつかご紹介します。
(行政への働きかけ)
 神奈川県が設置している神奈川県後発医薬品使用促進協議会に、協会けんぽ神奈川支部からも委員として参画しています。
 平成29年10月に開催された協議会では、平成30年度からスタートする第3期の医療費適正化計画に関して、ジェネリック医薬品の使用促進策等について議論が行われましたが、支部長からは、神奈川県の使用割合と全国平均の差が拡大していることなどを踏まえ、「県は、使用割合を大きく伸ばしている他県の取組を参考に追加施策を検討すべき。また、使用割合が低い市区町村にターゲットを絞り、使用割合が低い原因を解明して使用促進に取り組むべきである」などの意見を発信しています。

(加入者への働きかけ)
 協会けんぽは、平成21年度以降、加入者に対して、現在使っている医薬品をジェネリック医薬品に切り替えた場合のお薬代の軽減可能額を通知する「ジェネリック医薬品の軽減額通知サービス」を年2回実施しています。
 平成28年度は、神奈川支部の通知対象者約26万6千人のうち約6万2千人(23.3%)の加入者にジェネリック医薬品に切り替えていただきました。
 その推定軽減効果額は、約11億3千万円に上ります(図表3)。

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(薬局への働きかけ)
 ジェネリック医薬品の使用割合は、後述のとおり、神奈川県内でも2次医療圏によってかなりバラつきがあります。このバラつきは、個々の薬局単位まで分解していくとさらに顕著になります。
 使用割合のバラつきをなくし、全体の使用割合を高めることを目的に、本年6月、医薬品処方数量が多い約800の薬局に対して、それぞれの薬局のジェネリック医薬品処方割合と神奈川県内での立ち位置、さらには薬効分類別の処方割合なども記載したお知らせをお送りしました。
 このお知らせでそれぞれの薬局がどのような立ち位置にあるかを「見える化」することによって、薬局のみなさまのジェネリック医薬品使用促進の意識がより向上するとともに行動の変化が現れることを期待しています。

4.厚木市でのパネルディスカッションについて

 平成29年10月診療分における協会けんぽのジェネリック使用割合(薬局所在地ベース)は県平均で 70.0%でしたが、2次医療圏別使用割合(図表4)では、最も高い川崎南部医療圏(73.4%)と最も低い湘南 西部医療圏(64.6%)では、なんと9ポイント近くの開きがあります。

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 また、湘南西部医療圏に次いで県央医療圏の使用割合が低くなっていますが、7月1日にパネルディスカッションが開催された厚木市は県央医療圏にあり、湘南西部・湘南東部医療圏にも隣接しています。
 厚木市の会場にお越しいただいたこれらの医療圏内にある医療機関・薬局の関係者や一般市民のみなさまに2次医療圏のジェネリックカルテを用いて、例えば、「湘南西部医療圏では、院外処方の一般名処方率を向上させ、院外処方のジェネリック使用割合を上げることが課題である」など、3つの2次医療圏のそれぞれの阻害要因と課題についてお示しできたことは、たいへん有意義だったと思っています。
 パネルディスカッションの翌日には、パネルディスカッションを傍聴されていた他の医療保険者から、「地域別の使用割合は協会けんぽと同様の傾向が見られる。今後、神奈川県などとの連携を強化して取り組んでいきましょう」という電話をいただき、たいへん心強く感じたところです。
 今回のパネルディスカッションが、神奈川県のジェネリック医薬品の使用割合の向上の契機となることを大いに期待しています。

5.おわりに

 協会けんぽ神奈川支部は、今回のパネルディスカッションを契機に、骨太の方針に掲げられた80%という目標に向けて、行政、医療機関・薬局、他の医療保険者との連携の強化などを進め、神奈川県全体の使用割合の向上に貢献していきたいと考えています。
 日本ジェネリック製薬協会及び会員の皆様には、さらなるご支援をお願い申し上げます。

 

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