選択迫られるジェネリック医薬品メーカー 引き金引く地域フォーミュラリ
Monthlyミクス編集部 望月 英梨
「2017年9月に発売したオルメサルタンOD錠、ロスバスタチンの2剤だけで、18年度の売上計画は100億超のダウンになる」-。第一三共エスファの義若博人代表取締役社長は、8月26日に京都市で開催された日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会で今回の薬価制度抜本改革の影響を語った。
18年4月実施の薬価制度抜本改革では、先発品の0.5掛けで収載されたAGの実勢価格を、遅れて先発品の0.4掛け(10銘柄以上)で収載された後発品と一定のルールのもとで価格を集約するルールを導入した。この影響により、薬価は下振れし、業績に大きく響いたというわけだ。
AGは、先発品と同一品質の後発品を謳い文句に、後発品の使用に抵抗感を抱く医師や薬剤師、患者に「選択」を後押しするきっかけとなった。その結果、後発品の市場促進のスピードを速める一手となり、ジェネリック医薬品メーカーは、AGに活路を見出してきた面もある。実際、ジェネリック医薬品メーカーの業績もAGの有無で大きく左右されてきた。後発品の上市から一価格帯になるまでの期間の短縮や、初収載価格の引下げは、次回2020年度の薬価制度改革に向けて論点に浮上するだろう。
◎地域フォーミュラリの浸透で動き出す構造改革
薬価以外の医療環境の変化でも外堀を埋められつつある。その一つの大きなうねりとなりそうなのが、フォーミュラリの浸透だ。以前にもこのコーナーで紹介したので記憶にある方も多いと思う。フォーミュラリとは、最も経済的で効果的な医薬品の推奨リストのこと。
これまで聖マリアンナ医科大学や昭和大学など、大学病院や基幹病院を中心に策定されてきた。しかし、従来のように長期収載品から薬価差益が得られないなかで、医療経営の厳しい地域医療機関のなかで、フォーミュラリ策定に向けた動きも出始めている。そして、こうした動きを決定的にすることになりそうなのが、策定したフォーミュラリを地域に波及させる“地域フォーミュラリ”だ。地域医療連携推進法人・酒田市病院機構(山形県)や、昭和大学病院などで進められるほか、日本調剤がデータ作成業務を受注した協会けんぽ静岡支部でも今秋の策定を見据える。冒頭の学会では、日本調剤のデータを活用したシミュレーションで、PPIにフォーミュラリを導入したところ、後発品の切り替えに加え、年間約40億円の薬剤費削減効果が得られたという。標準治療薬が後発品であることも多く、フォーミュラリは後発品の浸透に一役買うことも期待される。
ただ、ジェネリック医薬品メーカーにとって、こうした動きは歓待だけすべきものであるかは、簡単に答えが出せない課題だ。言うまでもないが、ひとたび地域フォーミュラリの第一選択となれば、地域の医薬品は総取りも視野に入る。一方で、フォーミュラリから外されれば、その地域でシェア争いに加わることさえ難しくなる。ジェネリック医薬品メーカーにとっては諸刃の剣とも言える。
勝ち残るためには当然のことだが、後発品80%目標を示されている2020年度までの道のりを考えるだけでは十分ではない。高齢化の進展と、労働生産人口の減少がクロスする2040年を見据えた後発品産業、そして企業としてのビジョンを描くことこそが必要だろう。すでに富士フィルムファーマが19年3月31日付で解散を発表したほか、第一三共グループがアルフレッサファーマに長期収載品を承継するなどの動きも出始めている。
勝ち残れるか、それとも撤退を選択するか―。ジェネリック医薬品メーカーは2枚のカードの選択をいま、まさに迫られている。