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月刊JGAニュース

特別寄稿  

ジェネリック医薬品及びバイオシミラーの使用促進に向けて

一般社団法人 日本病院薬剤師会 副会長

(国立大学法人 浜松医科大学 教授・医学部附属病院薬剤部長)

川上 純一

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 貴協会および加盟企業関係各位におかれましては、平素より私ども日本病院薬剤師会(以下、日病薬)に格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。寄稿の機会を頂きましたので、ジェネリック医薬品及びバイオシミラーの使用促進に向けた日病薬における取り組みにつきまして2点ご紹介申し上げます。
 1点目は、2年ごとの診療報酬改定に際して、日病薬では厚生労働省関係者に要望書を提出しており、これまでもジェネリック医薬品の使用促進に関する内容を継続して取り上げてきました。特に2014年度改定で新設された後発医薬品係数(DPC/PDPSの機能評価係数2、2017年度まで)は政策誘導としても大きなインパクトがあったと理解しております。
 2018年度改定に向けては、経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる、骨太の方針)2017において2020年9月までに使用割合80%が目標として示されたことから、日病薬としても後発医薬品使用体制加算の評価の見直しを重点要望としました。改定内容としては、同加算について使用割合の引上げと増点に加えてDPC対象病棟入院患者も追加されました。これによりDPC病院では外来での医薬品使用も含めて機能評価係数1として今後も評価されることになります。また、DPC/PDPSの基礎係数の見直しでは、各医療機関群の診療密度を算出する際、外的要因の補正のため、後発医薬品のある医薬品については後発医薬品の最も安価なものに置き換えることになりました。
 今後も、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針(2016.12)や医薬品産業強化総合戦略(2017.12)に示されたように、イノベーション推進や医療の質向上は国民皆保険の持続性や国民負担の軽減との両立が必要であり、医薬品業界も産業構造の転換が求められています。日病薬としても、医薬品を取り巻く社会情勢を十分に理解して経済性も含めたその適正使用により、医療の安全性と質向上に関与していく所存です。
 2点目は、日病薬が協力している本年度の厚生労働省医政局経済課委託事業である「バイオ医薬品の使用促進に係る普及啓発等事業」のご紹介です。1点目とも関係しますが、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針において、革新的バイオ医薬品及びバイオシミラーの研究開発支援の検討が示されました。骨太の方針2017においても、バイオ医薬品およびバイオシミラーの研究開発支援方策の拡充や、2020年度末までにバイオシミラーの品目数倍増(成分数ベース)を目指すことが盛り込まれました。さらに、本年度の骨太の方針2018においても、バイオ医薬品の研究開発の推進を図るとともに、バイオシミラーについては有効性・安全性等への理解を得ながら研究開発・普及を推進することが明記されています。
 これらの背景をふまえて、バイオ医薬品及びバイオシミラーに対する理解を促進するため、医療関係者および一般の患者等を対象とした啓発資料の作成や講習会の実施等を通じて普及啓発を図ることを目的とする本事業がスタートしています。現在は、資材作成と全国各地での医療関係者向け講習会(本年度内で12回)および市民公開講座(2回)の準備を行っています。
 講習会につきましては、日病薬ホームページに案内を掲載しておりますので(https://jshp.jp/2018bio/)、ご関心のある方は是非お申し込みの上参加いただけましたら幸いです。第1部では主に国立医薬品食品衛生研究所の講師より「バイオ医薬品とバイオシミラーの基礎知識」を講演いただき、第2部では日病薬関係者から「バイオシミラーを評価するポイントと病院での導入事例」について紹介いたします。バイオシミラーの有効性や安全性、品質に対する科学的な評価に加えて、医薬品採用時のポイントなど現場目線の情報も提供する予定です。
 今後も日病薬の活動にご理解とご支援を賜りますよう何卒お願い申し上げます。

全国健康保険協会(協会けんぽ)のジェネリック医薬品使用促進の取り組み

全国健康保険協会 静岡支部編

 今回は、協会けんぽ静岡支部より、薬局と連携した「ジェネリックお見積り」、レセプト解析による医療機関及び門前薬局への情報発信、また今後予定されている長期収載品にかかる診療報酬改定の影響の調査と、地域フォーミュラリ策定に向けた働きかけについて紹介いたします。

1.薬局と連携したジェネリックお見積り

 患者個人へのジェネリック医薬品の啓発については、保険証に貼付するシールから、お薬代節約術などをテーマとしたセミナーなど多様な取り組みが行われておりますが、その中でも最も効果を上げているのが軽減額通知です。その理由は、個人ごとの切り替え効果額を伝えることで、切り替えのきっかけに結びついているからです。ただし、軽減額通知は、データ集約、費用の関係上、年間で2回の発送に留まります。
 そこで、目線を変え薬局と連携し、処方箋を渡したその場でジェネリック医薬品に切り替えた場合の効果額を試算できる取り組みを開始しました。

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試算というと大袈裟に聞こえますが、薬局で使用しているレセコンの機能の一部を活用することで特別なシステムを構築する必要がなく、試算も早ければ1、2分で行うことが可能です。この試算について、従来から独自のサービスとして実施している薬局も多く存在することが、事前ヒアリングで明らかとなりました。
 そこで、協会けんぽ静岡支部のパイロット事業として実施することとなり、参加薬局を募集したところ県内1,800薬局のうち、実に560薬局からの参加をいただき、処方箋を預かったその場でのジェネリック試算を8月より実施しています。
 また、協会けんぽ静岡支部のホームページでは、試算に対応する薬局を探せるよう環境を整えているほか、県内の軽減額通知対象者全員にQRコードから対象薬局を探せる案内チラシも送付している。
 なお、試算の結果、切り替えにつながったかどうかを記録することとしており、協会けんぽで解析することで、年齢ごとに異なると思われる「切り替えの誘因となる金額等」を調査していきます。
 薬局にとっては試算サービスが他薬局との差別化のツールとなること、また、患者さんにとっては切り替え効果額を知ることで、切り替えのきっかけに繋がることを願います。

2.医療提供側への働きかけ

 ジェネリック医薬品の使用促進には、医療提供側への働きかけも重要となります。静岡支部では平成28年度に全国初となる薬局向け「ジェネリック通信」を送付したことに加え、昨年度は基幹病院と門前薬局双方に対し、ジェネリック医薬品使用促進のための情報発信及び訪問を行いました。

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 「ジェネリック通信」は、レセプトから医療機関ごとに、①自機関の立ち位置を表す情報(県内における外来、入院レセプトのジェネリック医薬品使用割合、一般名処方割合の他機関との比較)、②処方箋受付時の門前薬局のジェネリック医薬品割合、③県内平均と比較しジェネリック医薬品使用割合の低い薬剤情報を抽出し、医療機関ごとに解析した結果をリーフレットの形にして提供したものです。
 大規模の医療機関はレセプト数量も多く、ジェネリック医薬品使用割合への影響も大きいことから、当該医療機関とその門前薬局へ働きかけを行い、自機関の位置を把握いただきながら、先発使用数量が大きくジェネリック医薬品の取り組みを優先的に実施すべき薬剤の提案を行いました。大規模の医療機関では診療科も多岐に渡り、ジェネリック医薬品の使用については各診療科ドクターに一任されている機関が多いが、医療機関を一つの単位として提案を行ったことで、薬剤部から医療機関全体へ活用いただける資料との評価をいただいております。
 
 また、外来のジェネリック医薬品割合を左右するのはやはり門前薬局ですが、処方箋の一般名処方割合は同条件のはずが、薬局間でジェネリック医薬品の使用割合に差異が存在します。このため、他薬局との比較情報を示しながら、前述の取組優先薬剤の提案等を踏まえた情報提供、訪問を行いました。
ジェネリック医薬品使用割合の伸長が鈍化する中で、県平均以下の医療機関、薬局の引き上げが課題といえます。

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3.診療報酬改定の影響

 2018年診療報酬改定により、ジェネリック医薬品上市後10年を経過した長期収載品の価格が引き下げられる新ルール「G1、G2」が新設されました。G1(後発品への置き換えが進んでいる品目)は6年が経過すると、ジェネリック医薬品と同じ薬価になる仕組みとなっています。これにより長期収載品は、市場から退場できることとなりましたが、そのまま市場へ残った場合、ジェネリック医薬品へ移行するのではなく、薬価が下がった長期収載品を使い続ける動き、またこれまでジェネリック医薬品を使っていたものが、価格が同じなら長期収載品へ戻ってしまうのではないかという懸念が各方面でなされています。
 そこで、協会けんぽ静岡支部においても政府目標80%達成に向け、診療報酬改定によるジェネリック医薬品への影響について、特に長期収載品への滞留、ジェネリック医薬品から長期収載品への切り戻しに着目し、検証をしていきます。

4.地域フォーミュラリの推進

 昨年11月の中医協総会において、厚生労働省よりジェネリック医薬品の効果的な推進策として、フォーミュラリの活用が提案されました。また、昨年度から今年度にかけて、医療機関単位でのフォーミュラリ事例も創出されています。
 地域包括ケア、地域医療構想が進む中で患者が急性期から慢性期、在宅へ移行しても受診医療機関ごとに処方薬剤が変わることなく、安心して薬物治療を受けられる受療体制の確立、ジェネリック医薬品を含めた薬物治療全体の医療費適正化のためには、フォーミュラリが地域で機能していくことが重要と考えられます。
 協会けんぽ静岡支部では、パイロット事業として地域の医療機関と連携しながら、保険者初となる地域フォーミュラリ策定に向けた働きかけをしていく予定です。

 

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