10年ひと昔
日新製薬株式会社
代表取締役社長 川俣 知己
10年ひと昔と言いますが、今から10年前のジェネリック医薬品業界はどうだったでしょう。私も来年には還暦を迎えますので振り返ることにしました。
2007年10月に「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」が発表され、GE薬協もこれに先立ち信頼性向上プロジェクトを立ち上げ、様々な場面でジェネリック医薬品の信頼性向上に向けたシンポジウムの開催や、GE薬協加盟企業の底上げのために目標を掲げ、そのアンケート調査を行い、各社の取り組みを促す勉強会を行っておりました。私も当時、品質委員会の委員長を務めておりましたので、信頼性向上プロジェクトのメンバーとして、活動致しました。
また、各都道府県の使用促進協議会の委員として、手分けして参加しました。当時は新指標で35%程度のシェアしかありませんでしたので、ジェネリック医薬品に対する風当たりは非常に強く、医師の参加委員はご関心がなく、薬剤師の参加委員からはジェネリック医薬品の悪評の指摘をうけるなど、ジェネリック医薬品側の委員は常に批判をうける側にいました。学会・論文発表も、イトラコナゾールやツロブテロール等のネガティブ文献が後を絶たず、その対応に追われていました。
現在は2018年度第一四半期の数量シェアが72.2%と10年間で倍増し、ロードマップが目指す80%にもう少しという状況になっています。当時、ジェネリック医薬品に否定的だった方々にもう一度、話を聞いてみたいくらいです。
ジェネリック医薬品のシェア拡大の背景には、調剤体制加算や処方箋の変更不可への制限、我々ジェネリック医薬品メーカーの真摯な取り組みも大きかったと思いますが、新薬系メーカーやその関連会社のジェネリック医薬品市場への参画、更にはオーソライズドジェネリックの登場も貢献してきたと思います。それまでジェネリック医薬品嫌いだった医療関係者も新薬メーカーが販売する
ジェネリック医薬品なら使用しても良い、特許切れ新薬と全く同じオーソライズドジェネリックなら使用しても良いと、軟化したのも事実です。ただ、新薬系メーカーが販売するジェネリック医薬品は、大半は、もともとジェネリック医薬品メーカーとの共同開発で承認されたもので、オーソライズドジェネリックにいたっては、我々ジェネリック医薬品メーカーが取り組んでいる付加価値ジェネリック医薬品とは一線を画すもので、何の進化もない旧式のものです。今後は、こうしたものから、我々のジェネリック医薬品へ切り替えてもらう取り組みが必要となると思います。
ジェネリック医薬品の使用促進と共に、改定されてきたのが薬価制度です。10年前はジェネリック医薬品の初収載時の薬価は、先発の7掛けでした。その前2003年までは8掛け、1995年までは9掛けという時代もありました。それが2012年には初収載7掛け、内用は10銘柄超の場合6掛け、2014年には初収載6掛け、内用は10銘柄超の場合5掛け、2016年には初収載5掛け、内用は10銘柄超の場合4掛けと急速に下がってきてしまいました。ジェネリック医薬品の使用促進に応えるため、各社の莫大な設備投資や、全規格揃え、一般名への変更などの信頼性向上への取り組みも、かつての薬価制度が支えてきたものでありました。また、銘柄別薬価から3価格帯への収束、更には1価格帯となる時代には、付加価値ジェネリック医薬品のインセンティブをどのように維持するのかが課題となります。
たった10年で、ジェネリック医薬品市場は、こんなにも変化しました。これからの10年は予想だにしない変化に見舞われることになり、我々にとって良い変化かも悪い変化かも判りません。
このような時代に社長を務めることになってしまい、責任は重大ですが、次の世代に引き継げるジェネリック医薬品業界の熟成に努めて参りたいと考えています。