委員会活動報告
『医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(第28回)』開催
平成30年12月7日 TKP市ヶ谷カンファレンスセンター ホール7A
流通適正化委員会 内海 滋
今回「第28回医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(以下、流改懇)」が開催されましたのでご報告致します。
流改懇は厚生労働省(以下、厚労省)医政局長の意見聴取の場として、医療用医薬品流通の現状を分析し、公的医療保険制度の下での不適切な取引慣行の是正等についての検討を行うことを目的にしています。
今回の流改懇は、平成30年1月23日に発出され同年4月より運用が開始された「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン(以下、GL)」(医政発0123第9号、保発0123第3号)について、GL運用直後であった上期4-9月の進捗状況の確認と課題の抽出が主題となりました。
【第28回流改懇議題】
1.流通改善の課題と進捗状況について
2.その他
※使用された全ての資料は厚生労働省HPにて公開されています。流改懇資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_127251.html)
会議の冒頭に主催者側の吉田学医政局長より挨拶があり、「4月より運用されているGLについて半年が経過した。適正流通の確保について、未だ課題である一次売差マイナスの是正、早期妥結の推進、単品単価取引の推進に関する上期の進捗を確認したい。流通改善については、以降も流通関係者と行政が一体となって推し進めて行くので、引き続き支援を賜りたい」と要請されました。
当日の資料のうち今回の流改懇にて議題のメインとなった資料は、厚生労働省作成の「流通改善の課題と進捗状況」(資料1)になります。特にその資料のポイントと一部議事内容について報告致します。
(資料1) 流通改善の課題と進捗状況(平成30年12月7日厚生労働省)
流通課題である各項目に対し、その課題がGLの記載内容のどの部分に相当するのかについて、今回より整理が行われました。課題項目は以下の4点が挙げられています。
1.一次売差マイナスの解消、適切な仕切価・割戻し等の設定
2.バーコード表示の推進
3.早期妥結の推進、単品単価契約の推進、頻繁な価格交渉の改善
4.過大な値引き交渉の是正
1.一次売差マイナスの解消、適切な仕切価・割戻し等の設定
一次売差マイナスの解消は、平成19年流改懇より『緊急提言』として発表された流通課題の一つで、他の流通課題が昨今改善傾向にある中で、本件は各流通当事者が一丸となって取り組まないと達成出来ない項目です。
平成30年度上期の結果、マイナスの幅は縮小し、「一次売差マイナスの解消」については改善傾向が示されました。平成30年度上期の納入価率は前回調査時の平成29年度と比較し、2.0ポイントの上昇(90.5%⇒92.5%)となり、一方、仕切価率は平成29年度と比較し、0.6ポイントの上昇(94.2%⇒94.8%)となっています。つまりは仕切価率の上昇を納入価率の上昇が上回ったことでマイナス幅は縮小し、改善に転じたという結論になります。
納入価率の上昇について当局は「過大な値引き交渉の是正に伴った結果」と説明がありましたが、売差マイナスの解消については以降の価格交渉においても更なる取組の強化が求められます。また仕切価率の上昇については、医療機関側の委員より苦言を呈されたかたちとなり、流改懇当日において問題提起されました。
川上取引における適切な仕切価・割戻しの設定については、平成30年10月3日に医政局経済課事務連絡として発出された「適切な仕切価・割戻しの設定について」(流改懇参考資料5)にて≪卸機能と割戻しの項目・内容≫についての整理が既に行われています。今回の流改懇においては、当該事務連絡の内容を十分理解した上、川上の当事者である各メーカーと卸売業者が適切な仕切価・割戻しの設定について積極的に取り組むよう要請がなされました。以降は事務局側もその対応状況をモニターしていくことになります。
2.バーコード表示の推進
平成28年8月30日に「医療用医薬品へのバーコード表示の実施要項」の一部改正についての3課長通知が発出され、販売包装及び元梱包装については2021年4月出荷分より有効期限・製造番号を含む新バーコードの表示が必須となっています。本件はGLにも記載されており、医療安全・トレーサビリティ・流通効率化・偽造品流通防止の観点からも取組を進めるよう求められています。
大きなトピックとしては、平成30年10月18日に行われた「医薬品医療機器制度部会」にて医薬品・医療機器のトレーサビリティの向上が話し合われており、その留意事項として「バーコード表示の段階的な法制化」が挙げられています。現在、各メーカーは3課長通知に伴い、新バーコード表示製品が2021年4月出荷分より適正に流通できるよう、現在も取り組みを進めています。
3.早期妥結の推進、単品単価契約の推進、頻繁な価格交渉の改善
妥結率の推移に関しては、18年度上期が「薬価改定後の半期」であったため、未妥結減算ルールの順守を含む早期妥結に向けた取り組みについては、大変重要な期間となります。
平成30年度上期の妥結率は、200床以上の病院が92.3%、20店舗以上の薬局が95.9%と高い妥結率を示しました。しかし、前回薬価改定があった時期(平成28年9月)と比較して、200床以上の病院が3ポイントのマイナス、20店舗以上の薬局が0.5ポイントのマイナスとなっています。以前より交渉時間が短いなど一部問題点が指摘されていましたが、今回は後述予定の「単品単価契約の推進」が大きく伸長したため、以降は私見ではありますが、今回から妥結率の報告に単品単価契約の状況や前回の単品単価取引率を下回らない取り組みなどの報告が必要となったことに起因するのではと推察しています。報告の簡素化や前倒しの報告など、作業が短期間に集中しないような取り組みが必要と思われます。
平成30年度上期の結果により、大きく改善を見たのが「単品単価契約の推進」です。ここ数年、200床以上の病院と20店舗以上の調剤薬局における単品単価取引の状況が、60%前後で頭打ちになっていました。4月からのGLの運用と相まって、今回の報告では、200床以上の病院で28.2ポイントの上昇(56.2%⇒84.4%)、20店舗以上の調剤薬局で34.2ポイントの上昇(62.3%⇒96.5%)と劇的に改善しました。合わせて日本保険薬局協会からの報告(資料4:単品単価取引推進のための覚書締結状況について)においても、以前60%前後であった覚書締結率が73.1%まで上昇したとの報告がありました。
これは川下取引における流通当事者が、積極的に取り組みを進めてきた結果と言えます。単品単価取引の推進は、現行薬価制度の根幹を成す部分であるため、高い数値の保持が今後も求められます。
4.過大な値引き交渉の是正
GL本文には「個々の医薬品の価値を無視した値引き交渉、医薬品の安定供給や卸売業者の経営に影響を及ぼすような流通コストを全く考慮しない値引き交渉を慎むこと。」と記載されています。それらの交渉が行き詰まった場合に相談が可能な窓口として、GL運用と同時に医政局経済課に「相談窓口」が設置されています。
GL運用から流改懇開催までの期間で、寄せられた相談件数は21件(仕切価交渉12件、その他9件)で、主だった事例を含め報告がありました。ただし運用上の問題点として「取引への影響を恐れ、相談を躊躇する例」もあり、その運用については慎重に行うべきとされました。
以降の資料についてはポイントを解説します。
(資料2)メーカーの取組
日本製薬工業協会(以下、製薬協)より2018年度の取り組みに関する報告がありました。
詳しくは記載しませんが、前述の≪卸機能と割戻しの項目・内容≫の発出については、流改懇のワーキングチーム(WT)である川上WTにおいて製薬協が主要な役割を果たされました。JGAも川上側の団体であるため、10月3日に発出された事務連絡の内容と取り組むべき項目については、日本製薬団体連合会からの通知を受け、JGAも活動を強化していく所存です。
(資料3)流通改善ガイドランを踏まえた流通改善の推進について
日本医薬品卸売業連合会から、流通改善に向けた取り組みと課題について報告がありました。
(1)流通改善と消費税引上げに伴う薬価改定ついて
(2)流通改善GLの推進について
(1)川上流通における課題
(2)川下流通における課題
(3)流通当事者間の課題等
川上流通の課題は、一次売差マイナスの解消に向けての「卸機能の適切な評価と反映」が必要とされ、今後の交渉を推進していくと説明されました。また川下流通についても「医薬品の価値と流通コストを順守した価格交渉」を推進していくと説明の上、取り組み先への理解を求められました。
また(3)にて「返品の扱い」と「消費税引き上げへの対応」について触れ、今後大きな課題として取り組みの強化が必要と説明がありました。
今年度2回目の開催となった流改懇ですが、4月のGL運用開始後、半期の数値が確定して初めての開催となりました。今回対比に用いられた数値は、当然GL運用以前の数値であるため、運用前と運用後の対比は可能でありますが、仮に次回開催が「平成30年度下期」の数値が確定してからの開催となると、運用されてからの進捗の確認も合わせて行われることになっていきます。
当然ながら流通課題の解消は道半ばであり、三浦明経済課長も「商慣行の変革には継続が重要」と話されていました。流改懇の開催で、流通課題が改めて流通当事者同士で共有され、国民が理解しやすい適正流通の推進と確保に向けて、JGAは以降も議論に参加していきます。
平成29年度流通体制に関するアンケート調査結果
アンケート調査の概要 |
●調査方法
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会員会社へのMail送信による聞き取り調査 |
●調査期間
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平成29年4月1日~平成30年3月31日 | |
●調査期日
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平成30年8月1日 | |
●提出会社
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42社中41社(提出率:97.6%) |
前提条件
● 会員各社の決算月が異なりますが、アンケートは直近2期分の決算の数字でご返答下さい。例えば3月決算の会社は平成29年3月度決算と平成30年3月度決算の数字を、12月決算の会社は平成28年12月度決算と平成29年12月度決算の数字をご記入下さい。
● 吸収合併など集計に影響を及ぼすと考えられる事項があった場合は、備考欄にご記入下さい。<
● 対象品目は承認品目とし、販売のみの製品は除いて下さい。また、原薬の販売や受託加工賃は含めず、あくまでも医療用医薬品の最終製品の売上高のみをご記入下さい(*質問4については全販売品目を対象としてご回答願います)。
調査結果
質問1:御社の医療用医薬品の販売金額と構成比をご記入下さい。
○「A.ジェネリック医薬品(後発医薬品)」は、「診療報酬上の後発医薬品」(日本薬局方における「診療報酬上の後発医薬品」は含み、昭和42年9月末日以前承認品目は除く)を対象として下さい。
○「B.先発医薬品」については、上記に該当しない医療用医薬品の売上をご記入下さい
コメント
回答のあった39社の医療用薬品の売上の合計は7,343億円、そのうちジェネリック医薬品の売上高は6,391億円で、前年度からの伸長は+6.9%であった(販売額ベース) 。
質問2:質問1の「A.ジェネリック医薬品(後発医薬品)」について、ルート別年間売上(単位:百万円)と構成比をご記入下さい。
○ 「A.ジェネリック医薬品(後発医薬品)」の金額が、以下の合計と等しくなるよう記載下さい。
コメント
回答のあった39社の、ジェネリック医薬品の売上は、卸ルートを中心に伸長しており、全ジェネリック医薬品=販売金額の卸ルートの構成比は59.4%にまで上昇した。 販社ルートは集計を開始して、初めて減少に転じた。
質問3:施設別取引高と構成比をご記入ください。(※質問2で(1)~(3)に売上があった会社のみ)
○ 各社で把握しているもののみを記載して下さい(電子化データ未入手などの理由により集計ができない場合は「未集計」に記載下さい)
○ 病院の売上((1)200 床以上/(2)199 床以下)については、任意の記載事項とさせていただきます。○ 質問2の「小計」が、以下の「医療機関 合計」と等しくなるよう記載下さい。
コメント
調剤薬局での伸びが+11.1%と大きく、販売金額の構成比では65.1%となった。
質問4:卸業者との取引についてご記入下さい。(2018年3月31日現在)
コメント
自社販路の多くが卸チャネルを活用しており、また2/3の会社は販社のチャネルを活用している。
質問5:緊急配送体制についてお伺いします。(※質問2で(1)~(2)に売上があった会社のみ)
御社は緊急配送体制(=卸業者より規定の受注締切時間以降に緊急配送の求めがあった場合、それに応じる体制)を有していますか?また、平成28年度中に要請があった件数、対応できた件数をご記入ください。
※「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」に記載の取組(抜粋)
引き続き、卸業者が納期(翌日配送等)を指定する場合に、当該納期に対応する配送体制を確保するとともに、卸業者が在庫切れした場合の即日配送を95%以上にする。〔継続事業〕
コメント
自販する33社のうち、26社が規定時間外の注文にも応じる体制を確保しており、実際に依頼を受けた17社については、集計期間中に緊急出荷の依頼があった件数の99.8%に対応できたとの集計であった。本年度に緊急出荷に対応できなかった6件(1社)について、その理由を確認したところ、いずれも緊急出荷が可能な時間帯が過ぎてからの出荷依頼とのことであった。
質問6:仕切り価格の卸業者への提示について。
コメント
仕切り価格の提示が完了した時期ついては、会員各社でばらつきがみられた。
8日以上を要する会社に理由を確認したところ、(1)他社の全薬価も見てからの決定、(2)価格決定までの事務手続き、(3)相手が多い(アポ取りに時間が掛かる) 等が寄せられた。
また、割り戻し、アローアンスについては、未回答の1社、また割り戻し、アローアンスを設定していない1社を除き、各社とも書面により提示していた。
質問7:2021年3月末に向け、販売包装単位、および元梱包装単位への変動情報を含むバーコードの付与が原則化されます。御社の状況について下記の表に記載ください。
○ 2018年3月末現在の状況をお答えください。
○ 委託製造を含む全アイテム、そのうち自社製造分についてそれぞれご記入をお願いします。
コメント
販売包装単位への変動情報を含むバーコードの付与状況は、内用薬、注射剤では自社生産分が70%前後、委託生産分がやや遅れて60%程度となっている。一方で、外用剤においては自社、委託とも40%程度と大きく遅れている状況である。また、本梱包装単位への付与状況は、販売包装単位より高い水準で進んでいる。
また、アイテム数の大小と変動情報を含むバーコードの付与状況を別途にプロットしたが、アイテム数の多い会社では、むしろ変動情報の付与が進んでおり、5-600アイテム程度の会社以下で、取り組みに差がみられた。