EN

月刊JGAニュース

特別寄稿  

広い層へ、経済性も踏まえたわかりやすいアプローチを

株式会社じほう 報道局 報道1部
大塚 達也

 7 月の日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会で東邦大学医学部医療政策・渉外担当特任部門の小山信彌教授は、後発医薬品の数量シェアが目標の 80%目前となっている状況について「もうこの数字だけを追求して、良かったと言っている時代ではない」と指摘した。
 小山氏は 2014 年まで用いた数量シェアの旧指標(後発医薬品 / すべての医薬品)の観点に立つと、現行の新指標(後発医薬品 / 後発医薬品 + 後発医薬品のある先発医薬品)ではシェアの高い沖縄県で実は「置き換えの出来ない先発医薬品」の使用割合が高い一方、新指標でシェアの低い高知県で「置き換えの出来ない先発医薬品」の使用割合が低い点などを例示。本当の医療費抑制に向けて、旧指標と新指標、さらには数量シェアと金額シェアのデータを用いて多面的に判断していく必要があると訴えた。
 たしかに旧指標や金額シェアなど、目先の 80%以外の数値に目を向けることで、また次の課題が見えてくる。近年、院内や地域におけるフォーミュラリー推進が加速しているが、これもまさに旧指標の観点で薬剤費の抑制に取り組もうという動きだ。
 様々な数字が出てくるのは、国民に理解を求める上でも大いに役立つだろう。後発医薬品の使用がどれだけの医療費削減につながるのか、逆にこのままだと、どれだけ自己負担が増えるのか。できるだけ具体的な数値を、医療従事者や患者だけでなく「患者予備軍」の国民に向けても発信していけば、さらに後発品を推進していけるはずだ。
 もちろん、高齢者に後発医薬品を選択してもらうための高付加価値製剤や、医療従事者への安全性や安定供給に関する情報提供など、基礎的な課題には絶えず取り組んでいかなければならない。
 その上で、今後はさらに広い層へのアプローチを行うべきだ。医薬品そのものの情報提供は難しい。だが、医薬品業界の現状や医薬品の経済性に関する情報発信は、これまで以上にもっと積極的に展開していった方が国全体を医療費削減の動きに向かわせられると思う。

株式会社薬事ニュース
野口 一彦

 核医学検査用放射性医薬品などを製造販売する日本メジフィジックスは、今年 3 月 29 日、モリブデン99 の自社生産プロジェクトに着手したと発表した。がんの骨転移などの診断に使用されるテクネチウム製剤の原料であるモリブテン 99 は、原子炉で製造する特殊性から 100%輸入に頼っている。しかし、モリブテン 99 を製造している海外の原子炉の多くは老朽化しており、安定供給に対するリスクがあるとして、日本メジフィジックスは原子炉を使わない電子加速器による自社生産プロジェクトを立ち上げたのである。生産開始は 2023 年を目指している。
 医薬品原料の確保は、放射性医薬品もジェネリック医薬品も共通の課題だ。ジェネリック医薬品においても、医薬品原料の多くは中国などの海外諸国に生産を担ってもらっている。ジェネリック医薬品企業では、原薬製造国の情報を開示する動きがでているが、沢井製薬や東和薬品でも約半分が海外だ。一方で、医薬品原料の生産には、大量の廃棄物や CO2 の排出、有毒なガスなども発生する場合もある。東和薬品の吉田逸郎社長は「環境に対する負荷も(海外に)引き受けてもらっているところが大きい」と指摘。中国でも環境問題がクローズアップされてきており、原料確保がさらに困難になるとの見方を示している。
 医薬品原料の確保は、さらに必要かつ重要となってくる。数量シェア 80%目標の達成が目前に迫り、数量の更なる確保はもちろん、長期収載品の撤退スキームが適用された場合は、撤退する長期収載品分の原薬確保もジェネリック医薬品メーカーが担わなければならない。しかも、原薬自体の品質の問題も表出してきている。果たして、長期収載品の撤退スキーム自体が本当に運用されるものとなるのか、疑問視する声も聞こえてくる。
 実は、先ほどのモリブデン 99 では、内閣府が官民検討会を立ち上げ、国内製造化を目指すアクションプランを 2011 年に策定した。いわゆる国から推進の方針が示されたわけだが、原子炉を使用する中性子放射化法を想定していたにもかかわらず、事業化は「民間でやるべき」とし、補助金といったインセンティブもとくに示さず、掛け声だけで終わったといっても過言ではない。ジェネリック医薬品の原薬調達の問題も、もはや一企業でできる範囲を超えてきている気がしている。このままでは、長期収載品の撤退スキームも「笛吹けども踊らず」となる危惧がありそうでならない。

海外に向かうジェネリック企業

薬事日報社
村嶋 哲

 ジェネリック医薬品メーカーによる海外展開がここにきて加速している。日医工と沢井製薬の米国企業買収を皮切りに、他の企業も追随して海外市場に触手を伸ばす。かつては、日本と海外では顧客が求める医薬品品質の価値観に乖離があり、安価な製造コストで大量生産できる企業に有利なため、海外で勝負することに慎重な見方をする企業が多かった。国内市場の風向きがこの数年で一気に変わり、グローバルでの成長を考えるようになってきている。
 “総合ジェネリック医薬品メーカー”を標榜する日医工は今年度からスタートした3カ年新中期経営計画で海外売上高600億円を設定。米子会社「セージェント」によるバイオ後続品事業が本格化すると見られ、現在第3相試験実施中の抗TNF-α抗体「インフリキシマブ」の米国での上市を見込んでいる。欧州には特許切れした成分を別適応症で承認取得を目指すドラッグリポジショニングによるオーファンドラッグを展開していくほか、タイを中心とした東南アジア地域でも製品承認の品揃え強化を図っていく。
 沢井製薬は、米子会社「アップシャー・スミス・ラボラトリーズ」の売上が昨年度だけで400億円を計上し、海外売上比率で 20%台に達した。米国ジェネリック医薬品市場で価格が下落するなど市場環境が厳しくなっているが、インドの製薬企業「ドクター・レディース・ラボラトリーズ」から片頭痛治療薬2剤を獲得し、ジェネリック医薬品以外のブランド品を拡充するなど対応する。
 富士製薬は2030年までの長期ビジョンで海外売上比率 30%という目標を掲げる。2012年にタイ最大の製造受託企業を買収し、日本品質の医薬品を新興国に届ける戦略を打ち出す。不妊症治療薬や造影剤などのジェネリック医薬品は日本向け製造を開始しており、昨年6月には日本で医薬品販売支援事業を手がけるアポプラス・ステーションのタイ法人と業務委託契約を結び、富士製薬のタイ法人内に医薬品販売部門を設立した。 今年2月に造影剤「イオパーク注」について、同社製品では海外初となるタイでの承認を取得した。
 高田製薬は、自社で製造した注射剤で海外市場に参入する。海外初製品となる循環器疾患を対象とした注射剤では、昨年 12 月にベトナム、今年6月にはアルゼンチンで現地提携企業が承認を取得した。日本で製造した高品質な注射剤で海外市場を開拓し、特に注射剤の需要が高い東南アジアや南米地域で事業展開を進める方向だ。

 大原薬品はナイジェリア製薬大手と提携した。持ち株比率約 20%を取得し、持分法適用会社とすることで、アジア・アフリカを中心とした新興国への展開を図る。日本ケミファはベトナム工場の稼働で東南アジアや中国を中心に開発から製造、販売までの一貫体制を築く。
 ジェネリック医薬品メーカーが海外市場に進出するのは新たな展開だが、文化や医療環境が異なる市場を相手に、1社単独で開拓していくのはなかなか難しい側面もある。当然、現地のパートナー企業と連携していくのが第1選択肢になるだろう。ただ少し考え方を変えて、同じタイミングで海外市場に打って出る日本企業同士が日の丸連合体を結成し、ターゲット地域の市場を取りに行く戦略はどうだろうか。
 昔は全社が共通のビジネスモデルと見られていたジェネリック医薬品メーカーだが、独自色のある戦略で多様性が生まれてきている。多様性を持った企業が集まり、日本企業が持つ強みがどこにあるかを考え、それぞれの国でそれぞれのやり方で手を組めば勝算が出てくる。ジェネリック医薬品メーカーに限らず、新薬メーカー、周辺分野の企業も協力可能な産産連携の枠組みによる海外事業モデルでもいいだろう。是非期待したい。

共に生きる仲間としての製薬企業

株式会社アズクルー 月刊ジェネリック 編集部
賀勢 順司

 日本ジェネリック製薬協会(以下、GE 薬協)が 9 月に公表予定の「次世代産業ビジョン」の概要が、7 月初めに開催された日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会のセミナーにおいて解説された。聞いた限りにおいて、業界団体として一歩踏み込んだ内容が盛り込まれていると感じる。「基本的な医薬品として長期収載品、ジェネリック医薬品の垣根はなくなる」ことを前提とし、両者を「特許期間満了医薬品」と位置づけて社会へ貢献する存在を目指すという内容は一般にも非常に理解出来るものだろう。元々、二つを分ける最大の壁は薬価にあった。これを国が「先々、一本化する」と定めたのだから包括して未来像を考えなければならないのは当然だろう。これでやっと GE 薬協が「低薬価・低価格で生きる企業団体」から「日本を支える企業団体」へと明確に変わる道筋が付くのではないか。無理な難癖をつけるとすると、長期収載品+後発医薬品=ジェネリック医薬品という考え方を 2010 年頃までにGE 薬協が打ち出していれば―新薬メーカーの反発は大きかったろうが―先験的な業界団体として評価されただろう。効能や副作用がハッキリと解る医療用医薬品として、ジェネリック医薬品のポジションを定めることとなったはずだ。
 新しい GE 薬協の残る課題は、「製品の品質や企業としてのガバナンス、コンプライアンスを加盟企業に明文化した基準として求められるか」ではないか。正直なところ今もジェネリック医薬品供給のトラブルは存在する。国の規制に丸投げするのではなく、自主基準を厳しく守ることがジェネリック医薬品の価値を高めると考える。これによって非加盟企業に対しても大きな影響力を持つことになるだろう。さらに年々拡大する新薬メーカーのジェネリック事業や AG 事業に対して、GE 薬協が協会加盟を積極的にアプローチすることも重要ではないか。すでに長期収載品に関してはジェネリックメーカーに移譲された品目が多くなってきた。一方で新薬系ジェネリックメーカーが増加している中では、「特許期間満了医薬品」企業を統括する団体としてこれらへのアプローチは不可欠だろう。
 製薬企業の納入戦は、新薬もジェネリック医薬品も激しい。生き馬の目を抜くような商戦が繰り広げられてきた。急速に進む高齢化と国民医療費の高騰は、この様な企業間の消耗戦を許容しなくなってきたことを示している。特許期間満了医薬品の健全な使用を業界団体として進めていくのなら、新薬メーカーの行く末も配慮しなければならない。彼らが意味のある新薬開発を続けるために、昔彼らが心血を注いで開発した長期収載品と臨床データを大切に扱う必要がある。一般用医薬品メーカーを含め全ての医薬品メーカーが、個々に、また団体として今まで以上に深く話し合う場が求められている。そうでなければ日本の医薬品市場が破綻しかねない。ジェネリックメーカー、団体の責任は日々重くなっているのだと思う。

難局を乗り切る力

医薬経済社
坂口 直

 「1×15=100」。一見すると、何かの謎解きのようだが、これはこれで正解だ。現在TBSで放送中の日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」第2話で、「選手をどう活かすかで、15 が 100 にもなれば 0 にもなる」という監督のセリフの下りで書かれた数式だ(ラグビーは1チーム15人でプレイする)。同ドラマは左遷されたエリート社員が、低迷する社会人ラグビー部の再建をめざす物語だが、目頭を熱くする諸兄姉もいるのではないだろうか。かくいう私も学生時代に楕円球を追いかけていた手前、毎回こみ上げてくる。なかでも大雨の中、スーツ姿でタックルバッグ(ボクシングのサンドバッグのようなもの)にぶつかっていくシーン(第1話)は圧巻だった。出世コースから外れたサラリーマンの悲哀と覚悟が感じられた。
 日本でのラグビーW杯開催を9月に控えるなかで、同ドラマは世間にラグビーへの関心を持ってもらう援護射撃となるだろう。15年のW杯で日本代表は強豪南アフリカに大金星を上げ、「五郎丸ポーズ」が一世を風靡した。そこからじわじわと注目を浴びだしたが、過去には世界トップのニュージーランドに100点以上もの得点差をあけられ、惨敗したこともある。当時はあまりの海外との格差に人気も低迷したが、それでも世界に対抗しようと日本代表の監督、選手たちはもがいた。15年W杯の日本代表には非日本人の選手も多く、主将は日本人に帰化したリーチ・マイケル選手が務め、国際色の強さに面食らった人々もいたかもしれない。しかし、この国際化は故平尾誠二氏が99年W杯で外国人選手を主将に起用していた頃から始まっており、それがようやく南アフリカ戦の勝利へとつながった。 
 どん底からの這い上がりは、かつてのジェネリックの歴史を彷彿とさせる。一昔前は「ゾロ」と蔑まれ、業界全体が肩身の狭い思いをしてきた。ところが、平成後期に政府がジェネリック使用促進に舵を切ると、一気に数量シェアを拡大。ジェネリックの名称も定着してきた。おそらく人知れず先達が取り組んできた活動が結実したのだろう。ただ問題はこれからだ。数量シェアが80%に届いたとしても、毎度頭を悩ます薬価改定に加え、近年は安定供給に絡んだ原薬確保が課題となっている。あるいは売上げに結びつく大型品の特許切れがなくなりつつあり、各社はAIや働き方改革など時代の潮流にも対応しなければならない。
 W杯後のラグビーもジェネリックと同じ難局に直面する。W杯の熱が冷めた後、いかに人気を維持できるかが問われる。数量シェアが80%に到達したジェネリック業界も、業績を維持、あるいは拡大していくための新たな方策が必要になってくる。状況は厳しいかもしれないが、経営者の戦術と、それに応える社員の熱意次第ではその力は100にも0にもなる。

京都府における後発医薬品(ジェネリック医薬品)安心使用促進事業について

京都府健康福祉部薬務課

 ジェネリック医薬品を普及させることは、患者負担の軽減や医療保険財政の改善に資するものであり、ジェネリック医薬品の使用促進の意義として、医療費の効率化を通じて、限られた医療資源の有効活用を図り、国民医療を守ることがあげられます。
平成29年6月9日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017について」において、2020年(平成32年)9月までに、後発医薬品の使用割合を 80%とし、できる限り早期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討すると定められています。
 本稿では、このような背景の元、京都府が実施してきたジェネリック医薬品安心使用促進に向けた取組みについて紹介します。

1 京都府のこれまでの取組みについて

 京都府では、平成 21 年度より医療関係者、保険者、学識経験者等による「京都府後発医薬品安心使用対策協議会」を設置し、ジェネリック医薬品の安心使用のための環境整備を検討してきました。また、京都府薬剤師会と協力の元、保険薬局を通じたジェネリック医薬品に関する正しい知識の普及、 ジェネリック医薬品に係る理解促進のための研修会の開催や最近ではラジオCM番組の制作及び放送により、広く府民への広報を実施しています。さらに、ジェネリック医薬品の品質の信頼性確保面では、ジェネリック医薬品製造所等に対する製造管理及び品質管理状況に関する立入調査の実施、京都府保健環境研究所においては先発品との品質の同等性を確認する試験を実施するなど、ジェネリック医薬品の安心使用促進に係る様々な取組みを継続して行なっています。

2 平成30年度の取組みについて

平成 30 年度は、厚生労働省が都道府県毎の数量シェアや薬剤費の規模を踏まえて選定した、重点地域に指定されたことから、「重点地域使用促進強化事業」として、これまでに実施してきた普及啓発活動や研修会に加え、以下の3点を柱として取組みました。
(1)現況把握のための調査・分析

・広報モニターを活用した府民のジェネリック医薬品に関する意識を調査
・全医療機関を対象としたジェネリック医薬品の使用状況調査
・全保険薬局を対象としたジェネリック医薬品の取扱いに係る実態調査
(2)モデル事業の実施
・府内 200 床以上(一般病床)の病院を対象としたジェネリック医薬品採用リストの作成
・薬局実態調査等の結果を基に、複数の薬局を開設する法人薬局への個別訪問
(3)意見交換会の開催
 国の指定する重点地域とされたことを受け、ジェネリック医薬品安心使用促進について、幅広く意見交換を行なうため、従来の協議会から出席団体等を拡大し、開催頻度も年 1 回から年 2 回に増やし、多職種意見交換会として開催しました。
今回は、主に府民のジェネリック医薬品に関する意識調査について報告したいと思います。

(1)府民広報モニターを活用した意識調査結果について
【調査概要】
・実施方法:京都府広報モニター制度により実施
・実施時期:平成 30 年 11 月
・回答者:府内在住者 285 名(年齢及び性別分布は次のとおり)

img01.jpg

【調査結果】
1.ジェネリック医薬品(後発医薬品)に関する認知度及び使用率

img02.jpg

 ジェネリック医薬品の認知度は 90%を超えており、認知されていることが示された。
また、「知っている」と回答された方の内、約半数がジェネリック医薬品を使用されており、薬を服用されていない方を除くと、約 65% の方がジェネリック医薬品を利用されていた。


2.ジェネリック医薬品の使用をはじめたきっかけ(複数回答可)

img03.jpg

 使用を始めたきっかけとしては、薬剤師(薬局)からのすすめが最も多く、次いで医師のすすめが、テレビ・ラジオ等のCMの順であった。これらの結果から、医療関係者によるすすめが府民にとってはジェネリック医薬品への切替えのきっかけになることが明らかとなった。
 
3.ジェネリック医薬品への変更を決めたポイント(複数回答可)

img04.jpg

 変更を決めたポイントとしては、「費用が安くなること」が最も多く、次いで「先発医薬品と同等であること」、「医師や薬剤師のすすめ」と回答された結果であった。


4.ジェネリック医薬品を使用していない理由(複数回答可)

img05.jpg

 使用していないと回答された方(51 人)の理由としては、「効果や安全性に対する不安」が最も多く、「医師のすすめがない」、「使い慣れた薬がいい」といった回答が多い結果であった。また、漠然とした「なんとなく使用したくない」といった回答も一定数あった。


5.ジェネリック医薬品に変更したが、元の医薬品に戻された割合とその理由

img06.jpg

 戻した理由としては「薬局に在庫がなかった」や「信頼性の問題があるという報道」などの回答があった。


7.使用促進に向けた情報(複数回答可)

img07.jpg

 どういった情報があればジェネリック医薬品を使用してみようとなるかについては、「安全性が変らないこと」「効果が変らないこと」に関する情報が多く、次いで「医師や薬剤師のすすめ」「費用」の情報であるとの結果であった。


8.オーソライズドジェネリックの認知度
 オーソライズドジェネリックの認知度については、約9割の方が知らないとの結果であった。


【府民向けアンケート(広報モニターアンケート)質問項目】
※( )内は得たい情報
問1 ジェネリック医薬品(後発医薬品)を知っていますか。(認識度)
1:知っている
2:知らない


問2 問1で「1:知っている」を選ばれた方にお聞きします。ジェネリック医薬品を使用していますか。
(使用実態)
1:使用している
2:使用していない
3:ジェネリック医薬品を使用しているわからない
4:薬を服用していない


問3 問2で「1:使用している」を選ばれた方にお聞きします。
ジェネリック医薬品の使用をはじめたきっかけは何ですか。(複数回答可)(使用の契機)
1:医師のすすめ
2:薬剤師(薬局)のすすめ
3:知人(家族等)のすすめ
4:保険者からの差額通知
5:京都府や市町村からのお知らせ
6:テレビ・ラジオ等のCM
7:特になし
8:その他( )


問4 問2で「1:使用している」を選ばれた方にお聞きします。ジェネリック医薬品への変更を決めたポイントとは何ですか。(複数回答可)(判断のポイント)
1:費用が安くなるから
2:効き目(効果)や安全性が変らないから
3:飲みやすい(使いやすい)工夫がされているから
4:医師や薬剤師からすすめられたから
5:その他( )

問5 問2で「2:使用していない」を選ばれた方にお聞きします。ジェネリック医薬品を使用していない理由をお答えください。(複数回答可)(使用しない理由)

1:費用があまり安くならないから
2:効き目(効果)や安全性に不安があるから
3:使用感(飲みやすさや使いやすさ等)が異なるから
4:医師がすすめないから
5:薬剤師がすすめないから
6:使い慣れた薬がいいから
7:なんとなく使用したくないから
8:その他( )


問6 ジェネリック医薬品を使用されたことがある方にお聞きします。ジェネリック医薬品に変更したが、元の医薬品に戻されたことがありますか。「ない」場合は1を、ある場合はその理由を選択肢の2
~からお答えください。(複数回答可)(GEの不都合)
1:ない 
2:費用が変らない(安くならない)から
3:使用感(飲みやすさや使いやすさ等)が異なるから
4:効き目(効果)が異なるから
5:副作用(アレルギー等)が出たから
6:その他( )


問7 どういった情報(説明)があればジェネリック医薬品を使用してみようと思いますか(複数回答可)
(使用促進に向けた情報)
1:効き目(効果)が変らないこと
2:安全性が変らないこと
3:使用感(飲みやすさや使いやすさ等)の違いに関すること
4:費用(いくら安くなるか)のこと
5:医師や薬剤師のすすめがあること
6:情報(説明)があっても使いたくない
7:その他( )


問8 オーソライズドジェネリックをご存じですか。
1:知っている
2:知らない


(2)医療機関への使用状況等調査結果について
 医療機関向け調査は、平成 30 年 10 月から 12 月にかけて府内全病院及び診療所を対象に調査を行い、1,531機関(回答率58%)から回答を得ています。結果からは、ジェネリック医薬品安心使用促進に当たっては未だ品質や情報提供、安定供給に対する不安が払拭されていないことが伺われ、行政に対しては「薬価制度の見直し、名称の改善(一般名が煩雑)、第三者による品質等の試験結果の公表等」、メーカーに対しては「安定供給、試験結果や先発医薬品との相違点等に関する情報の提供、原薬製造所の公表等」、薬局に対しては「調剤した後発医薬品情報の医療機関へのフィードバック、薬局での後発医薬品採用基準の公開等」といった、多くの貴重な意見・提案を頂いたところです。

(3)薬局実態調査結果について
 薬局実態調査については、一般社団法人京都府薬剤師会への委託事業として実施しました。
 実施期間は平成 30 年 11 月 1 日から 12 月 6 日まで、府薬剤師会会員薬局 983 薬局に実施し、702薬局(回答率 71.4%)から回答を得ました。
 調査結果からは、「変更不可」のチェックがない処方箋に対し、ジェネリック医薬品を調剤した割合は、54.2%となっていました。また、「後発医薬品調剤体制加算」の加算のない薬局では、加算がある薬局と比較して「先発医薬品名で処方され変更不可のチェックがない処方」、「一般名処方」に対してジェネリック医薬品を調剤した割合がそれぞれ 20 ポイント以上低いという結果となっていることが確認され
ました。

4 今後の取組みについて

 平成 31 年 1 月における「最近の調剤医療費(電算処理分)の動向」における京都府のジェネリック医薬品使用割合(数量ベース)は 75.3%であり平成 30 年1月より 6.3 ポイント伸びています。伸び率については全国平均(5.6 ポイント)を上回っているものの、依然として使用割合は全国平均を下回っています。昨年度の現況把握のための調査等において、医療機関では約 6 割、薬局では約 7 割の方々に
ご協力頂き、非常に多くのご意見を頂きました。
 今後の取り組みとしては、引続きジェネリック医薬品推進の意義や品質について分かりやすくお伝えしていくとともに、昨年度に得られた府内におけるジェネリック医薬品使用の実態や課題を踏まえ、多職種の皆様からもご助言を頂き、ジェネリック医薬品を安心使用していけるよう努めていきたいと考えています。

大阪府後発医薬品安心使用促進事業に関する活動報告

門真市薬剤師会 しろくま薬局
沼田 浩貴

1.はじめに
 急速に進む高齢化社会や医療技術の進歩によって国民医療費が今後益々増加することが見込まれる中、医療の質を落とすことなく、国民皆保険制度を堅持していくためには、医療資源の効率化を通じて医療費の適正化を図ることが求められています。
 ジェネリック医薬品の使用促進は、限られた医療資源を有効活用し、国民の医療を守り、医療保険制度を持続可能なシステムとすることに重要であると考えられています。
 国策として、厚生労働省では 2013 年(平成 25 年)4 月に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定し、国や都道府県及び関係各所が行うべき取組みをまとめ、具体策を提示しました。平成 30 年度は、特にジェネリック医薬品の使用促進が進んでいない地域が重点地域として指定を受け、各地域の課題解決に向けた事業が実施されることとなりました。


2.重点地域使用促進強化事業
 大阪府は、前述の重点地域の一つとして指定を受け、国のモデル事業である「重点地域使用促進強化事業」を実施することとなりました。大阪府のジェネリック医薬品の使用割合(数量ベース)は、年々増加していますが、全国平均値を常に下回っている状況が続いています。(図表 1 参照)
 今回の事業では、府内でのジェネリック医薬品の使用率が増加しにくい要因の中から課題の絞り込みを行い、課題解決に向けた取組みとして「薬局における患者啓発と意識調査」と「地域におけるモデル事業」が実施されました。

【図表 1 年度別、全国平均と大阪府のジェネリック医薬品使用割合の比較】

img08 (1).jpg

※「調剤医療費(電算処理分)の動向調査」(厚生労働省保険局調査課)を改編したものである。なお、調剤医療費とは、薬局での調剤報酬費であり、病院・診療所内で使用される薬剤費は含まない。

img09.jpg

 ここでは平成 30 年度に門真市薬剤師会で取り組んだ「地域におけるモデル事業」の活動内容について詳しく触れていきたいと思います。
 大阪府内の 3 カ所のエリアがモデル地区として選定され、門真市はそのエリアの 1 つとして選ばれました。この度の事業の取組みの中では、門真市薬剤師会が関わっているこれまでの通例の各行事にジェネリック医薬品の普及のための活動を盛り込むことをはじめとし、医師会、歯科医師会にご協力いただき三師会の連携した取組み、さらには門真市に本社がある東和薬品株式会社様にもご協力いただき、門真市ならではの特化した活動を進めてまいりました。
 以下では、「地域におけるジェネリック医薬品の安心使用促進のための環境づくり」と「薬局薬剤師による患者さんに寄り添った丁寧な説明の実施」を軸に取組みました各施策についてご紹介させていただきます。


(1) 地域におけるジェネリック医薬品の安心使用促進のための環境づくり
 今回の事業をより多くの方に認知していただくために三師会連名のポスターを作成し、市内の医療機関に掲示していただきました。また、市民向けの健康教育講座や健康展での啓発活動(写真1)、ジェネリック医薬品製造工場の見学会(写真 2)も実施しました。
 具体的な取組み内容として、親子連れの来場者が多い健康展では、主に保護者の方向けに冊子(「日本がもし 1000 人の村だったら」日本ジェネリック製薬協会作成)を用いて、次世代に向けて国民皆保険制度を引き継いでいくためにジェネリック医薬品を選択することの有用性をお伝えしました。お子さんの病気の治療に直結する医療制度や薬の話は保護者の方からの関心が強く、多くの質問をいただけたことで私たちにとっても学びの時間となりました。
 そして、工場見学会では、ジェネリック医薬品の製造工程を職員の方からの解説を受けながら見学していただくことで、市民の方のジェネリック医薬品に対する漠然としたマイナスイメージが解消され、安心感を高めることができたと考えます。また、ジェネリック医薬品の長所として価格帯が先行する傾向にありますが、OD 錠の実験等を通して、患者さんのために考えられた製剤工夫についても知っていただける時間となったことは大きな成果であったと考えます。

img10.jpg

img11.jpg


(2)薬局薬剤師による患者さんに寄り添った丁寧な説明の実施
 事前準備として、薬剤師会会員間での意見交換会を開催しました。同じ地域の中で働く薬局薬剤師が集まり意見を出し合うことで、日々の業務に活かせるジェネリック医薬品を勧めるときの好事例や変更後のトラブルを共有することができました。
 次に、地域や患者さんへの働きかけとして取組みました、「ジェネリック医薬品変更後のフォローアップ調査」と「お薬手帳を活用した情報共有」の活動報告を個別にご紹介いたします。


①ジェネリック医薬品変更後のフォローアップ調査
 調査期間は 10 月中旬から 11 月の 1 カ月半としました。この期間内でジェネリック医薬品への切り替えにご協力いただいた患者さんを対象に、次回の来局時にアンケート用紙を用いて直接ヒアリングを行い、130名の患者さんから服用中に不安に感じたことや使用感に関する意見をいただくことができました。
 集計をしたところ、効果や使用感に不安を感じられた 13 名の方が先発品に戻すことを要望されましたが、大半の方がそのままジェネリック医薬品を選択される結果となりました。アンケート結果を細かく分析すると、不安に感じたことに「有」と回答された一方で、今後の服用希望については「ジェネリック医薬品の服用を続けたい」と回答している患者さんもおられました。これはすなわち、薬局薬剤師による患者さんへのフォローアップがその後の患者さんの選択に良い影響を与えた可能性があるということの表れではないかと感じます。


②お薬手帳を活用した情報共有
 この取組みでは、ジェネリック医薬品に切り替えた薬剤名と患者さんがジェネリック医薬品を選択された理由をお薬手帳の活用により処方医に伝えることで、地域の連携が一層深まり安心使用が促進される効果を期待しました。

 方法としては、調剤の現場で実践していただくにあたり負担にならないよう、確認した理由の項目にチェックをするだけの形式にし、お薬手帳にすぐに貼付いただけるようシールタイプで印刷する工夫もいたしました。今後も様々な形で、患者さんと薬に関係する情報が一元化されているお薬手帳の本来の役割がより一層向上するよう努めていきたいと思います。

img12.jpg

4.総括

 今回の一連の取組みを通し、事業に関わった薬剤師の多くが、患者さんにとってもっとも身近な薬の相談者は薬剤師であることを改めて実感されたのではないでしょうか。また、ジェネリック医薬品を普及推進するにあたり、まだまだ薬局薬剤師が介入できる場が存在することを確認できた機会でもありました。今後も薬剤師が患者さんの背景や気持ちをくみ取り、寄り添ったアドバイスを行うことができたなら、ジェネリック医薬品の安心使用の輪が拡がり、使用促進に繋がっていくのではないかと考えます。
    
 最後に、今回のモデル事業が今後のジェネリック医薬品安心使用促進事業の発展の一助になることを願います。

 

PDFでご覧になる方はこちら