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月刊JGAニュース

特別寄稿  

岡山県におけるジェネリック医薬品使用促進の取組について

岡山県保健福祉部医薬安全課

1 岡山県におけるジェネリック医薬品使用状況について

 岡山県におけるジェネリック医薬品の使用状況は、平成 31 年 2 月現在の「最近の調剤医療費(電算処理分)の動向」におけるジェネリック医薬品割合において、79.4%であり、全国平均(77.5%)を上回っています。その一方で、未成年者での使用割合が低いなど、課題も抱えています。
 国が掲げた「2020 年 9 月までに、後発医薬品の使用割合を 80%とする」目標を受け、岡山県においても、患者及び医療関係者が安心してジェネリック医薬品を使用することができる環境整備を図ることを目的に、平成30年度から、医療関係者並びに学識経験者・消費者等を構成員とする「後発医薬品の安心使用のための協議会」(以下「協議会」という。)を再設置し、普及啓発等を行っています。

2 事業について

(1)県民に対する普及啓発
 ジェネリック医薬品に対する知識を深めるため、県民を対象とした研修会や、啓発用パネルを用いた展示を行っています。

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(2)アンケート調査について
 ジェネリック医薬品の使用実態や課題を把握し、必要な施策に資することを目的に、岡山県後発医薬品の安心使用のための協議会の平成 30 年度事業として、アンケート調査を実施しました。
(1)対象
病院・診療所 2,478 施設
「おかやま医療情報ネット」に掲載されている一般外来不可施設を除く全施設(病院 161、診療所 1,343、歯科 974)
保険薬局 797 施設
「おかやま医療情報ネット」に掲載されている保険薬局の全施設
患者 2,391 名
調査対象薬局に処方箋を持参された患者の中から1薬局につき3名を無作為に抽出


(2)回収結果

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(3)調査結果
◯ジェネリック医薬品に対する考え方について
 ジェネリック医薬品の処方に関して、医療機関については「積極的に処方する」「特にこだわりはない」、薬局については「積極的に患者に説明して調剤する」施設が多く、患者県民についても、ジェネリック医薬品を知っている、使ったことがあるという回答が多いという結果でした。

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 その一方で、医療機関の回答の中には、ジェネリック医薬品の効果や品質確保、副作用等の点で、ジェネリック医薬品に不安を感じているというもの、患者県民の回答の中には、効き目が異なると思う、今までの薬に慣れている、性状や使用感が異なるなどから、使いたくないというものもありました。
◯ジェネリック医薬品の課題について
 ジェネリック医薬品の効果が先発医薬品と異なる経験や安定供給されなかった経験がある医療機関、薬局も依然としてありました。これらの経験が平成 25 年以降と回答した施設が多く、引き続きの課題であることがわかりました。

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(4)平成 21 年度との比較
 平成 21 年度に行ったアンケート調査と比較を行ったところ、ジェネリック医薬品の使用に対して、積極的な医療機関、薬局は増えており、患者県民についても、ジェネリック医薬品を知っている方、使用経験のある方の割合が確実に増えていることが分かりました。
 その一方で、ジェネリック医薬品に対して積極的でない理由としては、効果に対するもの、情報不足に対するもの、品質に対するものが引き続き多くなっており、在庫管理の負担についても未だ 45%の薬局であげられていました。
 ジェネリック医薬品に対して重視する項目についても、引き続き、適応症が同じであること、情報提供体制、安定供給体制が重視されていることが分かりました。

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(5)アンケート結果考察
 これらの結果から、ジェネリック医薬品の品質や効果に関すること、安定供給に関すること、情報提供体制に関することが課題として考えられました。これに対し、品質や効果に関しては継続的な監視指導を行うこと、安定供給体制に関しては企業への要請、情報提供体制については普及啓発や企業への要請を行うことなどを予定しています。
(3)令和元年度事業について
 アンケート調査の結果も踏まえ、令和元年度は次の事業を中心に行うこととしました。今後も、ジェネリック医薬品の安心使用について、御理解、御協力いただけるよう、さまざまな施策を行っていく予定です。
・採用の参考となるよう、ジェネリック医薬品採用品目リストの更新を行う。
・ジェネリック医薬品の品質に対する不安の対策として、ジェネリック医薬品の工場見学を実施する。
・県広報紙、ホームページ、ラジオ等を活用し、広く県民に対して普及啓発活動を積極的に行う。

世田谷薬剤師会におけるジェネリック医薬品の使用促進の取り組みについて

一般社団法人世田谷薬剤師会 会長 富田 勝司
世田谷区管理センター運営委員会

1.世田谷区の概要

 先ずは世田谷区の概要から説明させて頂きます。世田谷区は東京都 23 区の西南端にあり、東は目黒区・渋谷区、北は杉並区・三鷹市、西は狛江市・調布市、南は大田区とそれぞれに接し、さらに多摩川を挟んで神奈川県川崎市と向かい合っています。
 平成 30 年 6 月時点での住民基本台帳によると、人口 906,354 人、世帯数 478,608 世帯であり、東京23 区では、人口、世帯数ともに第 1 位、人口密度は 14 位で、現在も緩やかな増加傾向にあります。

2.世田谷薬剤師会について

img06.jpg その世田谷区の中には現在、一般社団法人世田谷薬剤師会(世田谷、北沢地域)と、一般社団法人玉川砧薬剤師会(玉川、砧、烏山地域)の二つの薬剤師会があり、それぞれ会員数 137名、178 名、会員薬局店舗数 111 店舗、127 店舗でお互いに協力し合い行政、医師会、歯科医師会等と連携を取り業務を行っています。
 今回は世田谷薬剤師会の話になりますが、基本方針は、世田谷区民の福祉・厚生の増進と会員の薬学薬業の進歩・発展ならびに医薬分業の推進と会員相互の親睦を図ることを主な目的として設立された団体です。

3.世田谷薬剤師会のジェネリック医薬品への取り組み

(1) 概況 高齢化と人口減少が加速し、医療技術の進歩等で国民の医療費は年々増加にある中で社会保障制度を長期的に揺るぎない制度とすることが最重要課題になっています。その状況において国民皆保険制度の維持にジェネリック医薬品の使用促進が一つの手段となっています。「経済財政運営と改革の基本方針2017」では、2020 年 9 月までに後発品の使用割合を 80%にする案が示されました。
 最近の世田谷区におけるジェネリック医薬品の使用割合は、平成 29 年度 3 月時点では、64.2%であり、東京都の平均 68.5%、全国平均 73%かからやや遅れています。平成 30 年 12 月の時点でも 70%、東京都の平均 73%、全国平均 77%で同様の状況です。
(2)世田谷区管理センターの役割
(1)管理センターの概要
 このような状況の中で世田谷薬剤師会としては、2020 年 9 月までにジェネリック医薬品の使用割合80%の目標が達成出来やすい環境作りを会員薬局に対して行っておりますが、その一つが管理センターの役割・運営です。
 世田谷区管理センターは世田谷薬剤師会が独自で運営している世田谷薬剤師会会員のための施設であり、昭和 55 年 2 月に開設しました。当時は医薬分業が現在のように進んでおらず、処方箋発行枚数も少ない状況の中で、会員薬局が薬の無い状態を少しでも減らし、患者様にご迷惑をかけないために薬剤の小分け業務を中心とした備蓄センター機能を持った施設として開始しました。現在に至っては、面分業がさらに推し進められ、またジェネリック医薬品への変更を推進する上で会員薬局の在庫・備蓄の負担を減らし患者様へ迅速かつ確実に医薬品をお届けする上で大変役立つ存在になっています。

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(2)管理センターの採用品目
 現在の取り扱い医薬品数は約 3,000 品目であり、そのうちジェネリック医薬品については延べ 10 社、約 930 品目を採用しております。年 2 回のジェネリック医薬品薬価収載が行われる中で、新しく収載された医薬品は仮備蓄として 3 ヶ月間在庫をしておき、会員薬局からの発注が出た時点で本採用としています。新規収載で数種類から数十種類収載されるジェネリック医薬品の採用については、複数社より採用しています。


(3)管理センター採用品の採用基準
 医薬品の採用については管理センター運営委員会で審議し理事会にて決定しています。
主な採用基準は以下のようになっています。
◯安定供給
◯適応症が先発品と同一、又は同一予定になるもの。
◯品質、原薬の原産国等の情報が開示されている。
◯メーカー・卸からの情報提供が頻繁にあること
◯その他


(4)管理センターの受注および配送
 会員薬局からの受注について錠剤は1錠単位、散剤は5グラムから、外用剤も5グラムから受注しており、会員薬局の不良在庫をなるべく少なくするようにしております。
 受注を受けた医薬品について平日は、午前・午後の2便、土曜日は午前の1便でルート配送をしております。
(3)勉強会・研修会
 学術情報活動としては会員の職能向上のため、ほぼ毎月医療機関・介護事業所・メーカー等に依頼して講演勉強会を企画開催しておりますが、最近ではジェネリック医薬品メーカーとの共催でジェネリック医薬品の製剤設計・開発等(より服用しやすい剤型。味覚等)についての勉強会も企画しています。

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(4)薬の無料相談におけるジェネリック医薬品の推進
 行政(世田谷区)との共催で年に4回程度、世田谷区民を対象とした薬の無料相談会を行っていますが、その中でもポスター、リーフレット等を使用してジェネリック医薬品の使用促進を行っています。

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最後に
 ジェネリック医薬品の使用促進を取り組むうえで、医薬品の安定供給、品質の確保は絶対であり、販売の中止、最近での原薬への異物混入等による製品の回収等が今後起こらないよう取り組んでいただきジェネリック医薬品数量シェア 80%時代に向けてお互いに取り組んでいきたいと思います。

 

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