新型コロナウイルスは新たな試練か
報道局日刊・PJ編集部 大塚 達也
中国湖北省の武漢を中心とした新型コロナウイルス問題は昨年末の発生確認以降、感染者の拡大とともに様々な産業に及ぼす影響が深刻化している。
日本商工会議所が2月中旬に国内中小企業約2600社を対象に実施した調査では6割強が「経営に影響が生じている」または「問題の長期化で影響が出る懸念がある」と回答した。その影響について多くは「受注や売り上げ、客数の減少」を挙げたが、次いで「生産拠点や仕入れ先の変更に伴う調達コスト上昇」「自社従業員や顧客の感染防止対策等に伴うコスト増」が多かった。
規模の大小を問わず国内のジェネリック医薬品製造販売業者にとっても、新型コロナウイルスの猛威は対岸の火事というわけにはいかなくなってくる。とくに懸念の材料となるのは、原薬の安定供給だろう。国内製品は中国に原薬や中間体の製造を依存する傾向が高く、これまで中国の製造施設における事故発生や、環境基準不適による操業停止などによって何度も医薬品の供給制限が起こってきた。
今さら説明するまでもなく、国内のジェネリックメーカーは安定供給を確保するため原薬の複数ソース化や海外の工場視察の強化に取り組んでいる。ただ、中国への原薬依存という本質的な問題をクリアしているわけではない。
現時点で原薬の在庫に余裕がある国内メーカーでも、今後中国国内で新型コロナウイルスの感染が拡大し、原薬の製造施設や流通体制に影響が出てくれば調達に支障をきたす恐れもある。
すでに厚生労働省医政局経済課は製薬各社に、原薬の在庫や製品の製造状況を確認し、状況に応じて別の製造ルートが確保できるように努めることを要請した。日本製薬団体連合会(日薬連)も有事に備え、供給調整のスキームを策定。市場シェア(数量ベース)30%以上の医薬品が1カ月以上欠品する場合、欠品した企業をリーダーとする供給調整チームを招集するタスクフォースを設置した。供給不安が発生した際、当該企業は経済課に連絡し、供給調整チームが必要と判断されれば、日薬連が当該製品と同一成分や代替薬を持つ複数企業から成るチームを招集する。チームでは在庫評価や増産、原薬融通の検討などを行い問題に対応する。
厚労省や日薬連のこうした対策の背景には、新型コロナウイルスだけでなく昨年発生した抗菌薬セファゾリンの供給制限など過去の諸問題がある。ジェネリック医薬品業界にしてみれば今回のスキーム策定を「転ばぬ先の杖」と呼ぶには、これまで転び過ぎている。弱まることのない価格プレッシャーの中、安定供給に向けた試練ばかりが続くが、なんとか踏ん張って乗り越えていかなければならない。