“2020年9月”-ジェネリック業界にとって節目の時
株式会社ミクス ミクス編集部 デスク
望月 英梨
“2020年9月”。ジェネリック業界にとっては節目となるときを迎えた。国の政策誘導もあり、数量を伸ばし、成長を続けてきた。ミクス編集部の調査によると、先発メーカーを含む、本誌が集計した国内売上高ランキングでも日医工が17位、沢井製薬が19位、東和薬品が22位と上位に食い込む。ただ、80%という節目を迎え、これからは優勝劣敗とも言えるような厳しい競争が起きることが想定される。ジェネリックメーカーの真価が問われるのは、まさにこれからだ。
今年の上半期だけでも、ジェネリック業界にとっては激震と言えることも多かったのではないか。ジェネリック最大手の日医工は4月に12成分15品目、5月に8成分9品目の自主回収に及び、田村友一社長が謝罪する事態に発展した。7月には、共和クリティケアが受託製造したソフトバッグ製剤をめぐり製造販売元の自主回収が相次ぐなど、品質や供給不安をめぐる事態が相次いで発生した。ジェネリックメーカーの強みである生産能力に課題が噴出したことは、医療現場でも重く受け止められた。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続き、世界的にロックダウン(都市封鎖)がなされるなかで、3月から4月にかけて、インドや中国などから、日本への空輸の見通しが立たず、安定供給への影響が懸念される事態も起きた。これをきっかけに、原薬の国内製造回帰などの議論も巻き起こっている。サプライチェーンがグローバルへと拡大するなかで、こうした課題は、何もジェネリックメーカーに限ったものではなく、先発メーカーも同様に抱える課題だ。
◎各社の行動に医療現場から熱い視線が
ただ、ジェネリック医薬品80%時代のなかで、品質管理と安定供給の責務は増している。高血圧や心疾患など、生命にかかわる多くの疾患の治療薬はいまや、ジェネリックが多くを占める。ジェネリック各社の行動には、医療現場からはこれまでにない目線が注がれているのは間違いない。
医療機関への情報共有も重要なテーマだ。「企業の規模や体力によっても対応が違う。医療機関、薬局の規模やどのような薬を使っているかでも違ってくる。日薬連が情報提供についてしっかり対応するように加盟社に通知を発出していることも承知しているが、具体的な事例についてはバラつきがあるのは事実だ」―。日本薬剤師会の安部好弘副会長は、厚労省の医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議でこう発言した。8月28日に大筋了承された、同会議の取りまとめ案でも、「情報の網羅性・信頼性を高める点から、各社の自主的な取組みに委ねるのには限界がある」と指摘する意見を明記。医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)を活用することも盛り込まれた。
依然として、副作用の情報提供や報告などをめぐっては、ジェネリックが用いられているにもかかわらず、医師や薬剤師から先発メーカーへ問い合わせが届くと聞く。少なくとも、これまでのような先発メーカーの陰に隠れるような姿勢は許されるものではないだろう。医薬品はそのモノと情報がセットになって初めて価値を発揮する。MR数の少なさだけを理由に、医療現場に情報が周知されないようなことはあってはならない。当然、情報提供は品質や安定供給と同じレベルで議論がなされる必要がある。
ポスト80%時代は、ジェネリックメーカーが先陣を切って戦える、晴れ舞台だろう。ただ、80%という節目の時だからこそ、品質確保や安定供給に向けて、総点検するタイミングにしてはいかがだろうか。もちろん、生産や流通だけでなく、情報提供も含めて、だ。製薬企業の責務ともいえる、品質確保や安定供給の責務を果たせなければ、ポスト80%時代の新たな戦いへのスタートラインにさえ立てないのだから。