ジェネリック医薬品の情報提供のあり方について
日本ジェネリック製薬協会 くすり相談委員会
2020年4月の非常事態宣言下においても、当協会の会員企業はくすり相談の電話受付対応を継続し、電話受付による情報提供体制を維持、その他FAX、メール、各社ホームページ等のWEBサイトへの誘導など様々な方法で対応し、情報提供は行われました。そして現在も様々な方法での情報伝達を努めております。
当協会くすり相談委員会は、2018年度にくすり相談窓口における対応状況のアンケートを実施しております。そのアンケート結果では、ジェネリック医薬品の普及に伴い相談件数も大幅に増加していることが明確になりました。
中でも医療関係者の皆様からの相談項目として「品質等」の問い合わせが全体の28%を占め、最も多い問い合わせでした。「品質等」への問い合わせの内訳で半数以上が「安定性等」※1に関する問い合わせであり、その内容としては「粉砕後(脱カプセル後)の安定性試験」、「簡易懸濁試験結果」※2が多く、医療現場ではより患者さんのニーズに合った実臨床の調剤・服薬のため、このような品質関連の情報を製薬企業に求めておられることが浮き彫りとなっております。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品が広く実臨床で使用された後に、販売される医療用医薬品であるため、実際の医療現場でのご使用を踏まえた様々なお問合せを頂いております。そのため、ジェネリック医薬品の承認申請には必ずしも提出が求められていない、無包装状態の苛酷条件による安定性、混合して使用される頻度が高い注射製剤などの多くの医薬品との配合変化のデータなどに加え、製品の有効性・安全性情報、先発医薬品との同等性に関する詳細な資料、表示・識別、安定供給、原薬・製剤に関する情報など様々な情報提供が求められております。
各ジェネリック医薬品企業は、提供できる情報の充実や(MRを通じた情報提供に関してはもちろんですが)くすり相談対応者への教育研修、くすり相談対応時間の延長、各社ホームページの充実、AIの導入検討など、医療関係者の皆様の一助となるよう努めています。お問い合わせを頂いた医療関係者の皆様からのニーズについて求められる情報の内容や質だけではなく、情報提供の方法も日々変化しており、そのニーズに1つ1つお応えするために各会員企業は努力しております。
今回は、ニーズの1つとして、『承認上認められていない用法等である錠剤の粉砕や崩壊・懸濁性及び経管投与チューブの通過性等に関する情報』の情報提供の在り方について報告させていただきます。
前述致しました調剤・服薬支援のために医療関係者の皆様に必要性の高いとされております「粉砕後(脱カプセル後)の安定性試験」、「錠剤の粉砕や崩壊・懸濁性及び経管投与チューブの通過性」に関する情報は、安定性や通過試験に関する多くのデータをお示しする必要があること、また在宅医療の臨床現場で直ちに必要となる情報であることから、医療関係者の皆様の利便性を考慮して、ジェネリック医薬品企業の多くは自社ホームページ上にこれらの情報を掲載しておりました。
しかしながら、2019年4月より適用されました「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」では、これらの情報は承認上認められていない用法・用量に該当し、未承認医薬品に関する情報提供になることから、その情報提供方法について見直しが必要になりました。
これらの情報は実臨床でも必要とされる情報であることは行政当局にも十分に理解されており、当該情報の提供方法の取扱いについては、2019年9月6日に厚生労働省より「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインに関するQ&Aについて(その3)」注)が発出され、『承認上認められていない用法等である錠剤の粉砕や崩壊・懸濁性及び経管投与チューブの通過性等に関する情報』を、インタビューフォームにおいて情報提供することは、医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインにおける医療関係者からの求めがあった場合の情報提供となることと整理されました。医薬品のインタビューフォーム自体は、添付文書を補完し、医療関係者の要望に応じたデータ等を取り纏めた資材であることから、こうした整理が行われることになりました。ただし、その記載にあたっては、承認上認められていない用法等であることを考慮して、試験法の明示など記載事項・内容について、一定の共通ルールに従って行われることが求められています。
一方、医療用医薬品の情報提供に関連して、2017年6月に医療用医薬品添付文書の記載要領改定(新記載要領)の通知が発出され、2019年4月より施行されております。この新記載要領の添付文書改訂に伴い、添付文書を補完するための情報として日本病院薬剤師会等の要請により作成しておりますインタビューフォームの記載内容の改訂も必要となるため、ジェネリック医薬品のインタビューフォームにおいても、ジェネリック医薬品の新記載要領添付文書に準じた充実を図るため、日本ジェネリック製薬協会安全性委員会及びくすり相談委員会インタビューフォーム検討チームにおいて、「後発医薬品インタビューフォーム作成について(2020年9月暫定第1版)」を作成、日本ジェネリック製薬協会ホームページにて公開致しました。
また、従前各社ホームページに掲載されていました『承認上認められていない用法等である錠剤の粉砕や崩壊・懸濁性及び経管投与チューブの通過性等に関する情報』についても、インタビューフォームにて情報提供が行われることから、年内迄には掲載方法が変更になります。この掲載方法については、「後発医薬品インタビューフォーム作成について(2020年9月暫定第1版)」に解説が記載されています。抜粋にて、紹介します。
- 自社ウェブサイトへの掲載については、承認上認められていない用法等であることを考慮して、インタビューフォームから情報を抜粋して掲載するのではなく、インタビューフォームへのリンクにより、該当項目が直接閲覧できるようにすること。
- 企業ポリシーに基づき、インタビューフォームに記載せず個別の問い合わせに応じて情報提供する場合は、問い合わせ先を記載すること。
医療関係者の皆様からのニーズが高い『承認上認められていない用法等である錠剤の粉砕や崩壊・懸濁性及び経管投与チューブの通過性等に関する情報』の情報提供については、当協会の会員企業は一定の共通ルールに従った情報提供が行われるよう、これらの取扱いを周知しております。また、当協会の会員以外のジェネリック医薬品企業の皆様に於かれましては、日本ジェネリック製薬協会のホームページにおいて公開している、「後発医薬品インタビューフォーム作成について(2020年9月暫定第1版)」を再度ご確認いただけますと幸いです。
当協会くすり相談委員会は、引き続き、医療関係者の皆様ならびに患者さんからのくすり相談事例の検討と情報の共有化により対応スキルを向上させるとともに、医薬品の適正使用の推進、医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン等を遵守し、ひいてはジェネリック医薬品の信頼性向上に努めてまいります。
以上
※1 2018年度のアンケート調査において、簡易懸濁試験結果に関する相談は「安定性等」として集計を行った。
※2 2018年度のアンケート調査では、“簡易懸濁試験”という言葉で集計を行った。
注)令和元年9月6日付厚生労働省医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課 事務連絡