年頭所感
会長 澤井 光郎
2021年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
会員会社におかれましては、平素より協会運営ならびにジェネリック医薬品の使用促進に格別なご支援ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
昨年は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、4月に緊急事態宣言が発出され、7月から開催される予定であった東京オリンピック・パラリンピックも1年延期され、社会経済活動全般に大きな影響が出ました。新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられました方々のご冥福をお祈りするとともに、罹患された皆様には心よりお見舞い申し上げます。
人口減少・少子高齢化が進行している我が国では、給付と負担のバランスを取りながら持続可能な社会保障制度の確立が求められています。そうした中で、良質なジェネリック医薬品の安定供給を通じて、限られた医療資源の有効活用に寄与し、社会保障制度の持続性に貢献し続けることは、私どもジェネリック医薬品業界の使命であると認識しております。
ジェネリック医薬品の政府目標として、2017年6月に閣議決定された“経済財政運営と改革の基本方針2017”では、「2020年9月までに、後発医薬品の使用割合を80%」とすることが掲げられていましたが、昨年9月の薬価調査(速報値)では78.3%、当協会の調査(速報値(第2四半期))では78.9%でした。目標値には達しませんでしたが、この10年間で、ジェネリック医薬品の数量シェアは倍増し、販売数量は倍以上に伸長しました。
これは国のジェネリック医薬品普及促進策の中、当協会及び会員会社の皆様が一丸となってジェネリック医薬品の理解増進に取り組み、「製品の安定供給」、「品質に対する信頼性の確保」、「情報提供の充実」に不断の努力をおこなったことだけでなく、医療関係者様、保険者様、流通関係者様、行政当局の皆様をはじめ多くの方々からご支援頂いた結果であると考えております。改めまして関係の皆様に感謝申し上げます。
ジェネリック医薬品の80%時代が近づき、国内の医療用医薬品の約半数がジェネリック医薬品となり、今やジェネリック医薬品業界は医薬品供給の「医療インフラ・社会インフラ」として大きな責任を負っていると認識しております。
一方で、昨年11月27日の経済財政諮問会議で田村厚生労働大臣からも示されているように、ジェネリック医薬品の使用状況にはバラツキがあります。「年齢別」では小児と高齢者、「薬効分類別」では外皮用薬や中枢神経系用薬、「地域別」では薬剤費の大きい大都市圏(東京都、大阪府、神奈川県)の使用割合が低い状況にあり、これらに対する取り組みの余地はまだまだ残されております。
また、2019年の抗菌薬の供給不安に始まり、昨年はコロナ禍でのサプライチェーンの脆弱性の顕在化、GMP逸脱による製品の自主回収、年末には会員会社において経口抗真菌剤イトラコナゾールの製造過程で通常の臨床用量を大きく超える睡眠導入剤リルマザホン塩酸塩水和物が混入し、服用された患者様に重篤な健康被害が発生しました。この事案は医薬品の信頼を大きく揺るがすものであり、当協会全体に関わる極めて重大な問題であると認識しております。従来より、医薬品の厳格な製造管理・品質管理こそが製薬企業の本分であるとの認識のもと、会員各社が努力してきたつもりでしたが、今回の様な前代未聞の事態を引き起こした事は誠に遺憾に存じます。
私どもはこのような事態を二度と発生させないよう協会をあげて、患者様をはじめとした皆様の信頼回復に取り組まなければなりません。会員各社におかれましては、製造販売又は製造を行う医薬品の品質確保、コンプライアンスの徹底には、なお一層の万全な体制で対応していただくよう改めてお願い申し上げます。
2021(令和3)年度薬価改定では、乖離率5%を超える品目が改定の対象となり、後発医薬品の83%(品目)が改定されることとなりました。加えて、今後は昨年3月に通知された「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正」やICH Q3D(元素不純物)、ICH M7(DNA反応性不純物)の適用などへの対応が必要となります。
このように私どもには多くの重い課題がありますが、今年1年これらの課題に的確に対応し、まずは、ジェネリック医薬品業界全体の信頼を回復させるとともに将来展望を明るいものにしていきたいと考えます。
本年も、皆様方のご支援ご協力のもと、また当局や関係団体のご指導をいただきながら、ジェネリック医薬品業界の発展に誠心誠意尽くしてまいります。
引き続きご指導・ご鞭撻の程、何卒、よろしくお願い申し上げます。