委員会活動報告
『医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(第30回)』 が開催されました
開催日:2020年11月24日(火)
場 所:TKP 新橋カンファレンスセンター ホール15D
このたび、「第30回医療用医薬品の流通改善に関する懇談会 (以下、流改懇)」が開催されましたのでご報告いたします。
流改懇は、厚生労働省(以下、厚労省)医政局長の意見聴取の場として、医療用医薬品流通の現状を分析し、公的医療保険制度の下で不適切な取引慣行の是正等について検討を行う事を目的としております。
今回の流改懇は約1年5ヶ月ぶりの開催でした。期間中に消費税の増税による薬価改定と通常改定があった事に加え、新型コロナウィルス感染拡大という特殊な環境が川下取引などにどう影響したのかを中心に議論がなされました。
第30回流改懇議題
1.流通改善の課題と進捗状況について
2.その他
※配布された資料は、下記 厚労省ホームページにて公開されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_127251.html
以下、当日の配布資料「流通改善の課題と進捗状況」を基に説明いたします。
1.一次売差マイナスの解消、適切な仕切価・割戻し等の設定
2.バーコード表示の推進
3.早期妥結・単品単価契約の推進、頻繁な価格交渉の改善、過大な値引き交渉の是正
1.一次売差マイナスの解消、適切な仕切価・割戻し等の設定
平成30年1月23日付けで「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドラインが発出されており、平成30年4月1日から適用されております。さらに平成30年10月には医政局経済課事務連絡として「適切な仕切価・割戻しの設定について」が発出され、各社に取り組みを求められております。
川上取引における各水準の推移の数値について、流改懇当日は非公開とされたものの、12月2日に2020年上期の速報値が公開され、20年度の薬価に対する仕切価率は 95.1%(前年 94.9%)で、19年度から 0.2 ポイントの上昇となりました。納入価率 92.0%、割戻し率 5.9%で前年と変化はなく、結果として一次売差は拡大した形となっております。(図1参照)
併せて、各社の割戻しの運用基準の変更状況が公開されており、19年10月時点28社、20年4月時点では46社で、前回(29回)報告の17社から大きく増加しております。
さらに、今回から「仕切価の見直し・変更状況」について、2019年10月時点、2020年4月時点のカテゴリー別(新薬創出等加算品、特許品、長期収載品、後発医薬品、その他【後発品のない先発品】)に報告があり、「主な引上げ理由」「主な引下げ理由」などが示されました。(図2参照)
後発医薬品は、引上げ品目数の多さが目立つ形となりましたが、期間中 2 度の薬価改定があり、厳しい状況であったものと推察しております。
関連して、日本製薬工業協会より「メーカーの取組」が報告されました。単品単価交渉や単品単価契約のさらなる促進につながるよう、流通改善ガイドラインなどに則り、「卸機能の適切な評価、割戻しを定期的に見直している。割戻しのうち、仕切価を修正するようなものについては仕切価への反映などの対応をしている」と説明。更に、2019年4月は、薬価改定が無かったにも関わらず、割戻しの運用基準の変更、仕切価の見直しを実施した会社もあった。その後の消費増税改定や20年4月の通常改定でも、適切な割戻し、仕切価等の設定を行い、流通改善に向け取り組んでいる旨が報告されました。
その他、医薬品の安定供給について、「医療用医薬品の安定供給に関する自己点検」の再徹底を会員会社に周知しているなどの報告がありました。
2.バーコード表示の推進
「医療用医薬品における情報化進捗状況調査結果(2019年9月末)」が資料として示され、表示必須項目となっている販売包装単位、元梱包装単位ともに、前回の調査数値より伸長しております。傾向としては、注射薬>内用薬>外用薬の順で、外用薬の伸長の鈍さは変わっておりません。
各メーカーにおけるバーコード表示の対応完了見込み時期については、未定と回答したメーカーが3社あり、いずれも製造委託品や他社製造販売品の併売品について、委託先等で対応計画中と回答があったとの報告でした。こちらにつきましては、平成28年の通知内容に基づき、各社期日に間に合わせるよう対応されているものと存じます。
3.早期妥結・単品単価契約の推進、頻繁な価格交渉の改善、過大な値引き交渉の是正
「早期妥結・単品単価契約の推進」
早期妥結の推進、妥結率の推移について、2020年9月時点の妥結率は 95.0%で前年度と同水準、流通改善ガイドラインの適用以降9割超の水準を確保しています。単品単価契約の推進については、2020年度上期における単品単価取引の割合は、200床以上の病院(82.0%)、20店舗以上の調剤薬局(95.6%)であり、こちらも2019年度とほぼ同水準であったと報告がありました。(図3参照)
これに関連し、日本医薬品卸売業連合会から上期の川下取引について、「新型コロナの影響で例年とは全く異なる状況で価格交渉は大変厳しい状況であった。安定供給に資するため配送業務を最優先に取り組んでおり、流通改善に積極的に取り組める状況ではなかった」と報告がありました。
【単品単価契約の推進】
「頻繁な価格交渉の改善」について
ガイドライン適応後の平成30年度以降も9月時の妥結水準がその後に大きく低下しております。「過大な値引き交渉の是正」について
直近の状況として、Q&A の一例が挙げられておりますが、上段の「頻繁な価格交渉の改善」も含め、本会議で掘り下げる事はありませんでした。
1年5ヶ月ぶりの開催という事もあり、大きなプレッシャーを感じながら参加しました。
流通改善が停滞していると囁かれる中で、関係者が一堂に会した形(一部 Web 参加)で開催された事は、歩を進めるために大きな意義のある開催であったと感じております。
会議終盤、医療関係者から安定供給に関して苦言を呈される場面があり、林経済課長から「欠品問題はしっかり対応していく」という発言がありました。
政府目標であった2020年9月時点での数量ベース80%目標は達成されなかったものの、ジェネリック医薬品は更なる推進が見込まれており、昨今の安定供給に関する市場からの厳しいご意見は期待の裏返しであると考えます。
今一度、我々も生命関連製品を扱っている事を認識し、引き続き、流通適正化の推進に取り組み、国民及び医療関係者からの理解を得られるよう努力を継続してまいります。
2019年度流通体制に関するアンケート調査結果
【アンケート調査の概要】
*調査方法 会員会社への Mail 送信による聞き取り調査
*調査期間 2019 年 4 月 1 日~ 2020 年 3 月 31 日
*調査期日 2020 年 7 月 27 日
*提出会社 40 社中 40 社(提出率:100%)
【前提条件】
●会員各社の決算月が異なりますが、アンケートは直近2期分の決算の数字でご返答下さい。例えば 3月決算の会社は2019年3月度決算と2020年3月度決算の数字を、12月決算の会社は2018年12 月度決算と 2019 年 12 月度決算の数字をご記入下さい。
●吸収合併など集計に影響を及ぼすと考えられる事項があった場合は、備考欄にご記入下さい。
●対象品目は承認品目とし、販売のみの製品は除いて下さい。また、原薬の販売や受託加工賃は含めず、あくまでも医療用医薬品の最終製品の売上高のみをご記入下さい(*質問 4 については全販売品目を対象としてご回答願います)。
【質問1】御社の医療用医薬品の販売金額と構成比をご記入下さい。
○「A.ジェネリック医薬品(後発医薬品)」は、「診療報酬上の後発医薬品」(日本薬局方における「診療報酬上の後発医薬品」は含み、昭和 42 年 9 月末日以前承認品目は除く)を対象として下さい。
○「B.先発医薬品」については、上記に該当しない医療用医薬品の売上をご記入下さい。
表.販売金額と構成比
回答社数:36 社(未回答 4 社) ※未回答には医療用医薬品の合計のみを開示した 1 社を含む
表.医療用医薬品の売上規模
表.GE 医薬品の売上規模
【コメント】
回答のあった 36 社の医療用医薬品の売上の合計は 7,670 億円、そのうちジェネリック医薬品の売上高は 6,882 億円で、前年度からの伸長は+3.7% であった(販売額ベース)。先発品の伸びとしては長期収載品の承継が自社承認に切り替わった例も報告された。
【質問 2】質問1の「A.ジェネリック医薬品(後発医薬品)」について、ルート別年間売上と構成比を ご記入下さい。
○「A.ジェネリック医薬品(後発医薬品)」の金額が、以下の合計と等しくなるよう記載下さい。
表.ルート別年間売上
【コメント】
回答のあった 34 社のジェネリック医薬品の売上は、卸ルートのみ伸長しており、全ジェネリック医薬品中、販売金額の卸ルートの構成比は 62.5%に達した。販社ルート、直販ルート及び販売委託が微減となった。
【質問 3】施設別取引高と構成比をご記入ください(*質問 2 で①~③に売上があった会社のみ)。
○各社で把握しているもののみを記載して下さい(電子化データ未入手などの理由により集計ができない場合は「未集計」に記載下さい)
○病院の売上(①DPC 対象病院/②その他の病院)については、任意の記載事項とさせていただきます。
○質問 2 の「小計」が、以下の「医療機関 合計」と等しくなるよう記載下さい。
表.施設別取引高と構成比
【コメント】
金額、構成比ともに大きい調剤薬局が 3.9% 伸び、販売金額の構成比で 67.2% となった。
病院も +3.8% 伸びた。
【質問 4】卸業者との取引についてご記入下さい。(2020 年 3 月 31 日現在)
<卸 / 販社との取引の有無>
【コメント】
自社販路の多くが卸チャネルを活用しており、また 76% の会社は販社のチャネルを活用している。
【質問 5】緊急配送体制についてお伺いします(*質問 2 で①~②に売上があった会社のみ)。
2019 年度中に要請があった件数、対応できた件数をご記入ください。
【コメント】
実際に依頼を受けた 16 社については、集計期間中に緊急出荷の依頼があった件数の 100% に対応できたとの報告があった。
【質問 6】2021 年 3 月末に向け、販売包装単位、および元梱包装単位への変動情報を含むバーコードの付与が原則化されます。御社の状況について下記の表に記載ください。
○ 2020 年 3 月末現在の状況をお答えください。
○ 委託製造を含む全アイテム、そのうち自社製造分についてそれぞれご記入をお願いします。
1) 調剤包装単位
2) 販売包装単位
3) 元梱包装単位
【コメント】
販売包装単位、元梱包装単位への変動情報を含むバーコードの付与状況について「有効期限」について集計した。販売包装単位での付与率は昨年度の同集計よりも進み、内用薬で 85%(自社生産品では 89%)、注射剤では 86%(同 89%)となった。一方、外用剤でも進捗はみられたものの、68%(同 58%)とやや遅れがみられる。尚、元梱包装単位でも同様に外用剤で遅れが見られた。
昨年の傾向と同様、アイテム数の多い会社は、高い遂行率となっているが、アイテム数が 500 未満の会社に遂行率の低い会社が見受けられる。
2020年の薬学生向け講義の実施について
当協会では、薬学生の皆さんにジェネリック医薬品について正しくご理解をいただくため、薬学生向けの講義を承っております。2020 年の実施状況をご紹介します。
これまでは対面での講義でしたが、昨年は新型コロナウイルスの影響で、リモートでの実施、オンデマンドでの実施と、幅広い方法にて対応させていただきました。講義は、「薬学生向けの教育資材」をもとに行っています。
【昭和薬科大学】
日 時:2020 年(令和 2 年)7 月 3 日(木)10:40 ~ 12:00
場 所:昭和薬科大学 講義室よりリモート講義
演 者:後藤 秀樹(広報委員会 ニュース・講演部会 委員)
テーマ:ご存じですか?ジェネリック医薬品
概 要:6 年生 178 名を対象に、国家試験特別講義として開催いたしました。講義室より、在宅の学生の皆さんに向けてのリモート講義として実施いたしました。
【九州保健福祉大学 薬学部】
日 時:2020 年(令和 2 年)12 月 10 日(木)10:45 ~ 12:15
場 所:日本ジェネリック製薬協会 会議室より九州保健福祉大学 講義室へ向けたリモート講義
演 者:酒井 佑介(広報委員会 ニュース・講演部会 部会長)
テーマ:ご存じですか?ジェネリック医薬品
概 要:薬学生向けの啓発活動の一環として、九州保健福祉大学の高村教授の一コマをいただき、5 年生 101 名の学生の方にご聴講いただきました。
【同志社女子大学 薬学部】
日 時:2020 年(令和 2 年)12 月 22 日(火)~
場 所:オンデマンド授業の為、録画データによる配信
演 者:酒井 佑介(広報委員会 ニュース・講演部会 部会長)
テーマ:ご存じですか?ジェネリック医薬品
概 要:協会としては初のオンデマンド配信対応となりました。対象の学生数は 4 年生 121 名でした。
協会ホームページでは、フォームにて講義の受付を行うとともに、薬学生向けの教育資材やジェネリック医薬品に関する国家試験過去問解説を掲載しております。
協会ホームページの「医療関係者の方向け」ページにてご確認ください。
日本ジェネリック製薬協会 ホームページ:https://www.jga.gr.jp/