AMEDとは
AMED(Japan Agency for Medical Research and Development)正式名称は「国立研究開発法人 日本医療研究開発機構」(理事長:三島良直)といい、平成27年4月1日に発足しました。
設立目的は医療分野における基礎から実用化までの研究開発が切れ目なく行われ、その成果が円滑に実用化されるよう、大学や研究機関などが行う研究を支援し、研究開発やそのための環境の整備に取り組むことを目的としています。
令和2年12月21日に閣議決定された令和3年度社会保障関係予算のうち、AMEDの予算は1261億円で前年度比+2億円の予算が決定しました。
令和3年度の主な取り組みとして、新型コロナウィルス感染症の拡大を踏まえ、効果的な治療法等の研究開発等を含む以下6つのプロジェクトで構成されています。
1.医薬品プロジェクト 383億円(AMED336億円、インハウス47億円)
医療現場のニーズに応える医薬品の実用化を推進するため、創薬標的の探索から臨床研究に至るまで、モダリティの特徴や性質を考慮した研究開発を行う。これに加え、新型コロナウィルス感染症の影響を踏まえ、クライオ電子顕微鏡※の整備等により創薬基盤を一層強化する。
2.医療機器・ヘルスケアプロジェクト 109億円(AMED)
AI・IoT技術、計測技術、ロボティクス技術等を融合的に活用し、診断・治療の高度化や、予防・QOL向上に資する医療機器・ヘルスケアに関する研究開発を行う。
3.再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクト 185億円(AMED)
再生・細胞医療の実用化に向け、細胞培養・分化誘導等に関する基礎研究、疾患・組織別の非臨床・臨床研究や製造基盤技術の開発、疾患特異的iPS細胞等を活用した難病等の病態解明・創薬研究及び必要な基盤構築を行う。また、遺伝子治療について、遺伝子導入技術や遺伝子編集技術に関する研究開発を行う。さらに、これらの分野融合的な研究開発を推進する。
4.ゲノム・データ基盤プロジェクト 170億円(AMED152億円、インハウス18億円)
ゲノム・データ基盤の整備・利活用を促進し、ライフステージを俯瞰した疾患の発症・重症化予防、診断、治療に資する研究開発を推進することで個別化予防・医療の実現を目指す。
5.疾患基礎研究プロジェクト 177億円(AMED)
医療分野の研究開発への応用を目指し、脳機能、免疫、老化等の生命現象の機能解明や、様々な疾患を対象にした疾患メカニズムの解明等のための基礎的な研究開発を行う。特に、新型コロナウィルス感染症を含む各種感染症については、予防・診断・治療に資する基礎的研究を一層加速させる。
6.シーズ開発・研究基盤プロジェクト 231億円(AMED)
アカデミアの組織・分野の枠を超えた研究体制を構築し、新規モダリティの創出に向けた画期的なシーズの創出・育成等の基礎的研究や、国際共同研究を実施する。
また、橋渡し研究支援拠点や臨床研究中核病院において、シーズの発掘・移転や質の高い臨床研究・治療の実施のための体制や仕組みを整備するとともに、リバース・トランスレーショナル・リサーチ※や実証研究基盤の構築を推進する。加えて、新型コロナウィルス感染症等に対する革新的な医薬品や医療機器、医療技術等に繋がる画期的シーズの創出・育成等を行う。
また、AMEDが行う事業として上記6つのプロジェクトの他「医療研究開発革新基盤創成事業」(CiCLE)があります。
事業の目的は、産学連携により、我が国の力を結集して行われる医療現場のニーズに的確に対応する研究開発の実施や医薬品、医療機器、再生医療等製品、医療技術等の実用化の加速化等が抜本的に革新される基盤(人材を含む)の形成、医療研究開発分野でのオープンイノベーション・ベンチャー育成が強力に促進される環境の創出を推進することを目的にしています。
具体的には、上記の目的に沿った研究開発行為を実施しようとする企業(代表機関)への貸付制度で、大きくは研究開発タイプと実用化開発タイプに分類され、実用化開発タイプでは原則1億円~50億円の貸付を受けられ、主には開発に係る設備、備品、人件費などに充てることが出来ます。
返済は開発目標を達成した場合は借り受けた費用を一括返済(年賦返済有り)し、その成果の利用により売上が生じた場合は、成果利用料として売上の1%をAMEDへ支払いますが、難病を対象とする医薬品及び、希少疾病医薬品等についての成果利用は免除されます。仮に開発目標が未達の場合は、借り受けた費用の10%を一括返済し、取得した物品等の評価額をAMEDへ支払います。
AMEDの三島理事長は今後の推進方針のトップに「新型コロナウィルス感染症対策のための研究開発」を掲げておられます。研究開発の成果に期待したい。
【用語解説※】
クライオ電子顕微鏡
液体窒素冷却下でタンパク質などの生体分子に対して電子線を照射し、試料の観察を行うための装置。
従来のX線構造解析で困難だったタンパク質の構造解析が可能となる。
コロナウィルスの表面にあるスパイクタンパク質の立体構造の解明に寄与した。
リバース・トランスレーショナル・リサーチ(rTR)
基礎研究で得られた発見を診断や治療に結びつけ、生み出された新規診断法や新薬の臨床現場における問題点や疑問点を基礎研究者にフィードバックすること。
<参考資料>
令和3年度社会保障関係予算について(財務省ホームページより)
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2021/seifuan2021/13.pdf
AMED事業内容について(AMEDホームページより)
https://www.amed.go.jp/program/index.html