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月刊JGAニュース

総合診療専門医 ~新専門医制度 12月に「総合診療専門医」の第一号誕生~  

 2018年度から開始された「新専門医制度」において、「総合診療専門医」が新設された。専門医の領域は「基本領域」の専門医を取得した上で「サブスペシャリティ領域」の専門医を取得する二段階制を基本としており、総合診療医は基本領域の19番目の専門医として養成されることになった。
 基本領域には、内科、小児科、皮膚科、精神科、外科、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、脳神経外科、放射線科、麻酔科、病理、臨床検査、救急科、形成外科、リハビリテーション科がありこれに総合診療が加わる。
 新たな専門医養成の流れとしては、医学部(6年)を卒業し医師国家試験を合格し、2年間の大学病院・臨床研修病院での法に基づく臨床研修を修了した後に新たな専門医の養成を受け3年以上の期間を経て専門医の資格を取得する流れとなる。
 18年4月から新専門医制度がスタートし、総合診療専門医の専門研修も開始されている。日本専門医機構によると、総合診療専門研修者第一号の専門医試験は21年9月に行われ、21年12月に合格発表が行われ総合診療専門医の第一号が生まれることになる。
 総合診療専門医については、13年4月に厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」が公表した報告書で定義された。日常的に頻度が高く、幅広い領域の疾病と傷害等について、わが国の医療提供体制の中で、適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的に提供することが求められるのを「総合診療医」に位置づけ、専門医としての名称を総合診療専門医とした。
 検討会報告書によると、現在、地域の病院や診療所の医師がかかりつけ医として地域医療を支えている。一方で今後の急速な高齢化等を踏まえると、健康にかかわる問題について適切な初期対応等を行う医師が必要になることから、総合的な診療能力を持つ医師の専門性を評価し新たな専門医の仕組みに位置づけることが適当で総合診療専門医の養成が必要であるとされている。
 さらに報告書では、総合診療専門医には地域によって異なるニーズに的確に対応できる「地域を診る医師」としての視点も重要であり、他の領域別専門医や他職種と連携して、多様な医療サービスを包括的に柔軟に提供することが期待されるとしている。
 厚労省が提唱する中学校区を基本にした圏域で医療や介護を提供する「地域包括ケアシステム」の担い手として総合診療専門医が主導的な役割を担うものとみられる。

◇総合診療医、専攻希望数は「内科」の1割以下 応募数伸び悩みが課題

 養成が着実に進む一方で課題もある。
 厚労省の医道審議会医師分科会医師専門研修部会の資料によると、総合診療専門医を目指す総合診療専門研修の専攻医数は18年度が184人、19年度が180人、20年度が222人となる。
 内科の専攻医数は18年度が2670人、19年度2794人、20年度2923人と比べ総合診療専門医の応募者は圧倒的に少ない。
 全国国民健康保険診療施設協議会(国診協)押淵徹会長(当時)は19年12月に地域医療を守る病院協議会後の会見で、19年度の総合診療専門医の専攻医の募集数について「一説ではこの10倍以上が現場で必要という声もあり、期待されている数には達していない」と話し、若い医師が将来を見据えて安心して選択できるよう制度設計を進めていく必要があると指摘した。
 協議会では、「総合診療専門医の具体的な姿がはっきりしないので、選択肢として明確にコースを確立すべき」「3年間という決まった期間で学ばなければならず、現実問題として取得しにくい」といった意見が出た。
 押淵氏は「国診協の約800会員のほとんどが総合診療専門医を求めている」と述べ、現場のニーズは大きいと指摘。会見に出席した全国自治体病院協議会の小熊豊会長も「全自病としては医師の2割、3割は総合診療的な人がいてもいいのではないかと思う」と述べ、協議会では「半数近くが総合診療専門医でもいいのではないか」との意見もあったことを紹介した。
 高齢化社会で地域医療の担い手として満を持して養成が始まった総合診療専門医だが、専攻医数が伸び悩んでいる。19番目の専門医として養成が始まったばかりで専門医取得後の将来像が見えにくいことも指摘されており、養成を進める日本専門医機構などが研修医にキャリアパスを示すことが課題解決の一助といえる。

 

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