小林化工の調査報告書の価値
長年にわたるGMP違反によって福井県から行政処分を受けた小林化工に対して、外部の有識者で構成される特別調査委員会が実施した調査の報告書が4月16日に公表された。
報告書は、弁護士2人と元PMDA(医薬品医療機器総合機構)専門委員の3人からなる特別調査委員会のほか、外部の弁護士やコンサルティング会社による調査がまとめられたもので概略版は135ページにわたる。
一連の問題発覚の契機となった抗真菌剤イトラコナゾールへの睡眠剤リルマザホンの誤混入が発生した経緯や同社の矢地工場、清間工場、品質管理部で起こっていたGMP違反の詳細、新たに明らかになった研究開発本部における不適切な承認申請手続きの内容など生々しい実態が記されているほか、なぜ問題は発生したのか、経営層や役員はどのような認識だったのかも追求されており、最後は同社再生のための提言で締めくくられている。
同社でGMP違反が続いてきた理由を簡単に言えば、事業や生産量の拡大に人的リソースが伴わず対応を先送りにしてきたためで、急成長の中で生じたゆがみを見て見ぬふりし続けた結果が今ということになる。
報告書では、法令違反が常態化している現状に疑問を抱き、時には上司に改善を訴えていた従業員の存在も指摘されている。ただ、それを受け入れるだけの土壌も十分に整っていなかった。委員会は同社に対しては「再発防止策」ではなく、製薬企業として新たに生まれ変わることが必要とし、経営陣やGQP三役、GMP三役を中心とした企業としてのガバナンスの再生、GMP意識改革による従業員の再生、法令順守のための組織再生などが不可欠と訴えた。
膨大な量の報告書だが、医薬品製造業、医薬品製造販売業にかかわる人間であれば1度は目を通しておきたい、ある意味貴重な資料で、学ぶものも多いはずだ。日本ジェネリック製薬協会も、すでに発表されている日医工の外部弁護士事務所による調査報告書とあわせて小林化工の報告書を是正措置・予防措置(CAPA)事例対象として検討していく方針を示している。このような報告書を「最後の教材」にするためにも業界をあげて信頼確保に取り組んでいきたいところだ。