簡易懸濁法及び粉砕後の安定性に関する最近の話題
〇インタビューフォームによる簡易懸濁・粉砕情報提供
2019年4月より適用された「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」では、「簡易懸濁試験」や「粉砕後(脱カプセル後)の安定性試験」は承認上認められていない用法・用量に該当し、求めに応じで提供する情報になることから、それまで自社HPに掲載していたメーカーも取り下げることになりました。しかしながら、医療現場からの強い要請により、2019年9月6日に厚生労働省より「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインに関するQ&Aについて(その3)」が発出され、『承認上認められていない用法等である錠剤の粉砕や崩壊・懸濁性及び経管投与チューブの通過性等に関する情報』を、インタビューフォーム(IF)において情報提供することが可能となりました。添付文書の記載要領の改訂で対応が遅れていましたが、今後、徐々にIFに掲載されることになると思われます。IFに掲載される場所は『ⅩⅢ.備考 1.調剤・服薬支援に際して臨床判断を行うにあたっての参考情報』なので、巻末から探せば掲載の有無が確認できます。また、各社のHPへの掲載については、IFから抜粋したものや加工したものを添付することは禁じられておりますので、将来的にはIFの該当項目にリンクして直接閲覧できるようにするメーカーが出てくると思われます。
〇簡易懸濁法による服薬支援に調剤報酬が算定
令和2年度の調剤報酬改定で在宅業務の推進のため、経管投薬の患者への服薬支援として、簡易懸濁法を開始する患者に必要な支援を行った場合に調剤報酬が算定されることになりました。
算定要件として、胃瘻若しくは腸瘻による経管投薬又は経鼻経管投薬を行っている患者若しくはその家族等から求めがあった場合であって、処方医に了解を得たとき又は保険医療機関の求めがあった場合に、患者の同意を得た上で、簡易懸濁法による薬剤の服用に関して必要な支援を行った場合(簡易懸濁可能な薬剤の選択等)、初回に限り経管投薬支援料として 100 点が算定されます。
簡易懸濁が可能な薬剤であるか否かは、書籍またはメーカーから情報を収集する必要があります。「簡易懸濁試験」や「粉砕後(脱カプセル後)の安定性試験」に関する情報は物性データであり、あくまで参考情報です。調剤や服薬における必要性が患者に与えるリスクを上回るか否かの判断は薬剤師に委ねられます。日本服薬支援研究会(元簡易懸濁法研究会)2020年6月15日作成の「簡易懸濁法を取り巻く大きな変化」には、「簡易懸濁法では、剤形の特徴を加味した薬剤選択が重要である。薬剤師であれば徐放性製剤は粉砕も簡易懸濁もできないのは当然と考えるだろう。しかし、ロンタブタイプ、レペタブタイプなど徐放性のしくみを習っているのは薬剤師だけである。医療従事者であっても薬剤師以外は、錠剤が創意工夫された製剤技術の結集であることはわからない。錠剤は単なる粉体の塊と思われている。簡易懸濁法を実施するには、各医薬品の製剤技術を考慮して薬剤を選択する必要がある。」と記載されています。「経管投薬支援料」の100点は簡易懸濁を行う行為に対してではなく、患者に適切な薬剤や剤形を選択し情報提供して了解を得る過程を経て簡易懸濁法を行う支援に対しての調剤報酬と考えられます。
(関連サイト)
〇「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/000359881.pdf
〇「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインに関するQ&Aについて(その 3)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000545828.pdf
〇「後発医薬品インタビューフォーム作成について(2020 年 9 月暫定第 1 版)」
https://www.jga.gr.jp/interviewform.html
〇令和2年度診療報酬改定の概要(調剤)厚生労働省保険局医療課
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000608537.pdf
〇簡易懸濁法を取り巻く大きな変化「経管投薬支援料」の算定 日本服薬支援研究会
http://fukuyakushien.umin.jp/shinryohoshu_2020_01_03.pdf