一変承認について
〇一変承認とは?
医師、歯科医師等の処方箋により使用される処方箋医薬品(ジェネリック医薬品を含む医療用医薬品)については、品目ごとに厚生労働大臣による製造販売承認(以後「承認」と称します。)を受けなければ製造販売を行うことは出来ません。この承認事項は、医薬品の名称(販売名)、成分、分量、用法、用量、効能、効果、製造方法、貯蔵方法、有効期間、規格、規格を確認する試験方法となっています(薬機法 1)第 14 条)。
また、承認を受けた後に承認された事項の一部を変更しようとするときは、その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければなりません(薬機法第 14 条第 15 項)。この変更に関する承認を受けることが承認事項一部変更承認です。通常は一変承認と称されています。なお、その変更内容が軽微なものについては、承認ではなく厚生労働大臣にその旨を届け出ることにより変更することも可能で、これは軽微変更届と称されています(薬機法第 14 条第 16 項,薬機法 施行規則第 47 条)。
1) 薬機法:医薬品等に関する法律で、従前の薬事法。正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。通称は薬機法と称されている
〇一変承認での変更事項とは?
前述のとおり承認内容を変更する場合、一変承認にて変更する場合と軽微変更届にて変更する場合がありますが、この変更により承認された医薬品の同一性が失われない場合に限られます。
薬機法 施行規則第 47 条に規定されている「承認事項の軽微な変更の範囲」以外については、一変承認に係る申請を行い、審査機関(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA : Pharmaceuticals and Medical Devices Agency))による審査及び調査を受ける必要があります。
一変承認で変更可能な事項としては、用法及び用量、効能又は効果、製造方法(原薬及び製剤)、貯蔵方法及び有効期間、規格及び試験方法について、それぞれの変更及び追加を行う場合が対象となります。
また、製剤の剤形の変更についても同一性が失われない場合には一変承認で対応できる場合もあります。例えば、素錠から糖衣錠への変更は服用後の体内での吸収などに影響しない場合もあることから、一変承認にて変更が可能とされています。また,容器の材質及び形状の変更は品質に影響を与える場合もありますが、その影響が少なく同一性が失われない場合は変更が可能になります。
しかし、承認事項のうち、販売名、有効成分の変更、有効成分の分量の変更については、同一性が失われることから一変承認では変更できない事項であり、改めて新規承認が必要となります。
なお、注射剤においてバイアル又はアンプル製剤にプレフィルドシリンジ製剤 2) を追加する場合も新規承認が必要になります。
2) プレフィルドシリンジ製剤:治療に必要な注射液が注射器にあらかじめ充填されている製剤。アンプルやバイアル製剤のように注射器での吸入操作が省略されているため医療現場での業務の効率化や吸入操作による異物混入の防止にもなると言われている。
〇一変承認の申請から承認までの期間は?
医薬品は新規申請後に PMDA において審査・調査等が行われ厚生労働大臣により承認されますが、申請から承認までには、大まかな所要時間が定められています。それを標準的事務処理期間(TC;タイムクロック)と称しています。ジェネリック医薬品の場合、新規承認の申請から承認までの TC は 1 年と設定されています。一方、一変承認の申請から承認までの TC の設定には以下の 3 通りの取扱いがあります。
① 製造方法自体に変更がなく製造所を追加又は変更(迅速審査通知に該当)する場合は、迅速一変と呼
ばれており、製品の安定供給を考慮して、TC は 3 カ月とされています。
② 製造方法の変更・追加を行う一変承認のうち、平成 17 年度施行改正薬事法に基づく製造方法の記載整
備内容の審査が完了していない品目においては、審査において記載整備内容の審査も併せて行われるこ
とから TC は 12 カ月とされています。
③ それ以外の一変承認の TC は 6 カ月とされています。
〇軽微変更届の事項は審査されないのか?
軽微変更届は、変更が生じた日から 30 日以内に厚生労働大臣に届け出る制度であり、届出ですので、その時点ではその変更内容について審査は行われません。
しかし、届出後に他の承認事項の変更によって行われる一変承認の審査の過程で、新規承認或いは一変承認から当該一変承認までの期間内に提出された全ての軽微変更届の内容が妥当であるかどうかの審査が行われることになります。なお、この審査において妥当性が確認できない場合は、当該一変承認とは直接関係はありませんが、届け出ている軽微変更届に関する追加のデータや資料の提出を求められますので、それらの対応も必要になります。
〇一変承認の申請に係る申請添付資料の様式は?
ジェネリック医薬品の新規承認の申請においても新規有効成分含有医薬品(新医薬品と称されています。)と同じように CTD 様式(コモン・テクニカル・ドキュメント(国際共通化資料))による申請添付資料の提出が求められています。
ジェネリック医薬品の一変承認の申請においても原則として CTD 様式による資料の提出が必要とされており、変更により同一性が失われていないことを説明する資料やデータはこの CTD 様式の資料で提出することになります。
なお、一部 CTD 様式による申請が行われない一変承認の申請においては、その変更内容を説明する「申165号 2022年令和4年 1 月知っ得!豆知識JGA NEWS 30請に係る概要書等」を添付することが望ましいとされています。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品からの切替えで継続使用されるため、そのライフサイクルは長期間になる場合もあります。その間の品質向上に向けた様々な改良、安定供給のための製造所の追加や先発医薬品が追加した効能の追加変更が行われることがありますが、このような場合も含めて行われる変更手続きに必要な手順として一変承認、軽微変更届が定められています。
(参考資料)
薬機法(一変承認)
第十四条第 15 項
承認を受けた者は、当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするとき(当該変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときを除く)は、その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない。
第十四条第 16 項
第一項の承認を受けた者は、前項の厚生労働省令で定める軽微な変更について、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣にその旨を届け出なければならない。
薬機法 施行規則(承認事項の軽微な変更の範囲)
第四十七条
法第十四条第 16 項の厚生労働省令で定める軽微な変更は、次の各号に掲げる変更以外のものとする。
一 当該品目の本質、特性及び安全性に影響を与える製造方法等の変更
二 規格及び試験方法に掲げる事項の削除及び規格の変更
三 病原因子の不活化又は除去方法に関する変更
四 用法若しくは用量又は効能若しくは効果に関する追加、変更又は削除
五 前各号に掲げる変更のほか、製品の品質、有効性及び安全性に影響を与えるおそれのあるもの