令和4年度診療報酬改定で考える患者中心の医療の未来像
ミクス編集部 デスク
望月 英梨
令和4年度診療報酬改定は、本体を0.43%引き上げることで決着した。後発医薬品に限ってみれば、後発医薬品使用体制加算や後発医薬品調剤体制加算の基準引き上げはあったものの、初収載は維持され、インパクトは少なかったのではないか。一方で、令和4年度改定は、患者中心の医療への第一歩を感じさせるものとなっている。
「症状が安定している患者について、医師の処方により、医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる、分割調剤とは異なる実効的な方策を導入することにより、再診の効率化につなげ、その効果について検証を行う」-。令和4年度改定では、リフィル処方箋が導入され、この活用促進による効率化として、▲0.10%を織り込んだ。看護師の処遇改善など、働き方改革を進めるなかでの有用なツールとしても期待される。
リフィル処方箋をめぐっては中医協の場でも議論が継続的に続けられてきたが、日本医師会など診療側が強い反発を示していた。令和4年度診療報酬改定答申後の会見でも日本医師会の中川俊男会長は改めて長期処方への懸念を表明。そのうえで、「長期処方にはリスクがあるとし、不適切な長期処方には是正が必要だ。そのために定期的に患者を診察し医学的管理を行うことがまさに安心安全で質の高い医療と考える。実際に日数制限がないといっても、医師は無制限に処方しないのが現実だ。しかしながら、リフィル処方箋が導入されることで、医師や患者の対応がこれまでと異なる可能性も考えられる。重ねて申し上げるが、新しい仕組みを導入する際は、患者の健康に大きくかかわるので、慎重にも慎重に、そして丁寧に対応することが望ましいと考える」と述べている。
一方で、期待されるのが患者の意識や受療行動の変化だ。これまでは定期受診をすれば安心、という患者も多かった。しかし、生活習慣病などでは、医師による治療はもちろん重要だが、患者自らが病状を把握し、生活習慣を見つめなおすことが最も重要だ。リフィル処方箋はこうした患者の意識変革が期待される。あわせて重要になるのが、患者にとって気軽に相談ができる、薬物治療のパートナーとも言える、かかりつけ薬剤師の存在だろう。もちろん医師の処方権自体が変わるわけではないが、薬剤師が地域で果たす役割にも期待がかかる。
中医協では患者代表として参画する支払側の間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)が繰り返し、患者目線での薬剤師の職能発揮を訴えたのも印象的だった。薬剤服用歴管理指導料が算定されているにもかかわらず、十分にお薬手帳の確認もされず、服薬指導のなかったという、患者としての自身の経験を披露。「患者が指導をきちんと受けたという実感が得られる対応が大事だ。そういう流れを作っていただきたい」と述べ、薬剤師に対人業務の充実を求めたシーンもあった。「すべて
の薬剤師がやっているわけではない」というような暴論ではなく、一人ひとりの患者の声に真摯に耳を傾けるべきだ。患者目線を意識した、薬剤師としての職能発揮が求められているのは言うまでもない。
リフィル処方箋の導入は一種、患者と医療との距離をぐっと近づけることが期待される。2025年に到来する超高齢社会、さらにはその先を見据えた医療システムの変革はもうすでに医療現場で起き始めている。製薬企業も医療システム全体に貢献する新たな姿に変革する必要がある。