安定確保医薬品8成分が基礎的医薬品に
日刊薬業編集部
大塚 達也
2022年度薬価基準改定において、抗菌薬のセファゾリンナトリウムやセフメタゾールナトリウムなど安定確保医薬品8成分69品目が基礎的医薬品の適用を受けた。医療上の必要性の高い医薬品についてはかねて薬価の維持や下支えを求める声が出ていた中、2021年3月の安定確保医薬品選定を経て、2022年度改定で基礎的医薬品としての措置が取られることになった。
2019年に発生したキードラッグのセファゾリンの欠品問題や、新型コロナウイルス感染症の拡大による一部製品の原薬調達の遅延などを受け、医療上の必要性が高い製品について、サプライチェーンの観点を踏まえて安定確保に取り組む必要性が高まった。厚生労働省は2020年3月から関係者会議を開催して、58の学会から551成分を安定確保医薬品の候補として選定。▽対象疾患が重篤▽代替薬・代替療法がない▽多くの患者が服用している▽製造の状況やサプライチェーンの状況-の要件に基づいて対応優先度をカテゴリ分けした。
2021年3月には、生産や流通体制が一般的な医療用医薬品と異なる血液製剤やワクチンを除き、最終的に506成分を安定確保医薬品とした。対応の優先度が最も高いカテゴリAは21成分、Bが29成分、Cは456成分だった。
そして、2022年度薬価改定ではカテゴリAのうち、一定の要件を満たす成分を基礎的医薬品に加える制度が導入された。基礎的医薬品は▽過去に不採算品再算定が適用された品目▽病原生物に対する医薬品▽医療用麻薬▽生薬▽軟膏基剤▽歯科用局所麻酔剤-6区分で「収載後25年以上が経過」「全体の平均乖離率以下で取引」といった要件を満たす品目について、最も販売額が大きい銘柄に価格を集約し薬価を維持するルールだ。ここに安定確保医薬品の区分が追加された。
カテゴリAの中で基礎的医薬品となったのは8成分で、セファゾリンとセフメタゾール以外は▽ミタゾラム▽ドパミン塩酸塩▽アドレナリン▽ノルアドレナリン▽メロペネム水和物▽アンピシリンナトリウム・クロキサシリンナトリウム-。これらの品目の中には先発医薬品も含まれるが、ほとんどはジェネリック医薬品だ。
サプライチェーンの関係で必要不可欠な医薬品の確保に支障をきたす問題は、言ってしまえばそうした医薬品を低コストで製造せざるを得なくなっている、産業構造上の問題でもある。引き続き薬価上の措置を維持、改善するのは当然ながら、経済安全保障の観点からもサプライチェーンや国内製造体制の強化に直接踏み込まなければ根本的な解決には至らないだろう。