抗菌薬の安定供給に向け5学会が新提言、キードラッグ32薬剤も選定
大塚 達也
日本感染症学会や日本化学療法学会など5学会が、新たに抗菌薬の安定供給に向けた提言を取りまとめ、薬価上の措置やサプライチェーンの課題把握などとともに医薬品の品質確保も訴えた。あわせて医療上の必要性が高いキードラッグ32薬剤も選定した。
抗菌薬に関する提言については、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本臨床微生物学会、日本環境感染学会が2019年8月30日付においても厚生労働大臣宛に提出した。この時は、セファゾリンの欠品に伴う各種抗菌薬の供給不足問題を受け、「抗菌薬の生産体制の把握・公表」「国内で製造可能な条件の整備」「既存の抗菌薬の薬価の見直し」「厚生労働大臣のリーダーシップによる解決」を要請した。さらに薬価上の措置が必要なキードラッグとして、セファゾリンやペニシリンG、バンコマイシンなど、特に安定供給が不可欠な抗菌薬10薬剤を選出した。
その後、厚労省は2020年3月に医療用医薬品の安定確保策に関する会議を設置。抗菌薬以外も含め506成分を安定確保医薬品として選んだ。安定確保医薬品は22年度薬価改定において基礎的医薬品の要件に追加されるなど、取り組みは一定の進展を見せている。
ただ、現在も多くの医薬品で出荷停止があったり、出荷調整が行われるなど、供給問題が解決したとは言えない状況にある。これを踏まえ、日本小児感染症学会を加えた5学会で再度提言をまとめ、2022年3月10日付で厚生労働大臣に提出。4月末に各学会のホームページでアナウンスした。
5学会による新たな提言も4つのテーマで構成される。「薬価の再評価」「国内生産体制の整備」「サプライチェーンの状況把握と課題の把握」の3つは前回の提言を踏襲する形となった。このうち、サプライチェーンについては、安定確保医薬品で、最も優先度の高いカテゴリAに分類された成分などは積極的に状況を把握し、有事に迅速に対応策を取れるようにすることを求めた。
残りの1つが、新たに加わった「後発医薬品を含めた医薬品の品質確保」だ。ここでは、不適切な製造管理や品質管理を発端とした医薬品の自主回収や出荷停止が多発していることを念頭に、「後発医薬品の生産体制を強化し、医薬品全体の品質確保を担保」することを要望した。
また、「企業側が一定程度の収益を見込めて販売中止にしなくてもいい薬価の再評価を希望する」キードラッグも計32薬剤を新たに選んだ。前回の10薬剤に加えてアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ミカファンギン、セファレキシンなどが入った。