会長就任ご挨拶
高田製薬株式会社 代表取締役社長 高田 浩樹
この度、日本ジェネリック製薬協会(以下GE薬協)会長に選任いただきました高田でございます。大役を仰せつかり身の引き締まる思いです。会長就任にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
まず、ご退任されました澤井前会長に対しまして、2期4年間、精力的かつ真摯にGE薬協会長職を務められましたことに心から敬意を表したいと思います。協会会員の皆様を代表して深く感謝申し上げます。澤井前会長が、今日までリーダーシップをとり進めてこられました信頼回復の取組みを継続し、ジェネリック医薬品の信頼回復に努めてまいりたいと思います。
初めに、ジェネリック医薬品業界では2020 年末以降に複数の会員企業が不適正な製造管理、品質管理による行政処分を受けた影響もあり、現在も多くの品目で供給不安が起きております。患者様、医療機関様、薬局様、流通関係者様、保険者様、行政の皆様に多大なるご迷惑をお掛けしていることに、改めて深くお詫びを申し上げます。
事案発生以降、GE薬協では、ジェネリック医薬品の信頼回復に向けて、澤井前会長のリーダーシップの下、会員会社一丸となって「信頼回復に向けた取り組み」を進めてまいりました。私たちジェネリック医薬品企業は、単なる製造販売企業ではなく、人々の生命に直結し、保健衛生の向上に寄与する生命関連産業の一員であり、品質が担保され、「有効」で 「安全」な医薬品を市場に安定的に供給することが、私たちの社会における存在意義であると認識しております。
私たちがこれまで進めてまいりました、信頼回復に向けた取組み、
・コンプライアンス・ガバナンス・リスクマネジメントの強化
・品質を最優先する体制の強化
・安定確保への取組み
・積極的な情報の提供と開示
・協会としての活動の充実、国等との連携
は、令和4年度では、会員各社における体制をさらに強化し、各社の責任のもとで取組みを継続・強化するフェーズに移行いたしました。協会は、各社の取組みを支援すると共に、引き続き会員会社以外の企業にも信頼回復に向けた取組みを広く呼びかけ、協会の枠を超えた幅広い活動を行ってまいります。これらの活動により、失ったジェネリック医薬品の信頼の回復に努めてまいります。
供給不安に対しましては、これまで厚生労働省、日本製薬団体連合会、安定確保委員会への参画を通じて、直近では供給状況に関する用語定義を進めてまいりました。まずは業界としてのスタンダードが発出された事で、情報の精度は上がるものと考えます。また、GE薬協内の取組みとして、現在会員会社における品目毎の供給調整状況一覧をGE薬協ホームページで公開しております。3月24日の会見で報告いたました、供給情報提供サイトを今後更に充実させるべく、7月に公開することを目標に、現在システム改修を進めております。皆様から情報の速やかな提供を求められる中で、重要な一歩と考えております。
さて、昨年度の薬価調査ではジェネリック医薬品のシェアは79.0%となりました。医療用医薬品の50%以上をジェネリック医薬品が占める中、GE薬協の役割は患者様及び医療関係者に 「安心」して使用いただける品質の担保されたジェネリック医薬品のみが安定的に市場に流通する状況を実現することであります。国民の皆様の医療の質の向上に貢献し続けるため、ジェネリック医薬品を永続的に供給していかなければなりません。それが医療用医薬品の50%以上を占めるジェネリック医薬品の「インフラ」としての役割であります。
その実現に向けて、喫緊の大きな課題の2点に触れさせていただきます。
1点目、業界を取り巻く環境を見てみますと「新型コロナウィルス感染症」の世界的な流行による、経済活動の停滞、医薬品原材料・資材等の価格高騰と調達に関するサプライチェーン課題の顕在化、エネルギー価格、およびそれに伴う流通コストの上昇などが起きており、我々の事業環境は厳しさを増しています。そうした中で、今年2月のロシアによるウクライナ侵略による、状況悪化に加えて、急激な為替変動が起きるなど、経済安全保障に重要な医薬品関連産業全体に大きな影響を及ぼす事態となっています。ジェネリック医薬品は、特許期間の満了によって、国民の共有財産となった情報や技術を使用することで、開発費用を抑えることができる一方で、原価に対する原材料費の占める割合が大きく、これらの価格高騰は経営に大きな影響を与えかねないと懸念しております。そして、原材料等の価格高騰だけではなく、サプライチェーン問題の顕在化、新たな増産に必要な新規設備・機器の納期遅延などの諸課題が、安定供給に影響を及ぼすことが無いよう、関係業界団体、行政の皆様、議員の皆様と緊密に連携を図り対応してまいります。
2点目として、現在の安定供給の課題に取り組むため、ジェネリック医薬品を製造する各社が生産設備増強を進めております。他方、医薬品に求められる製造・品質管理体制が年々高度化しております。現在稼働している工場を維持・発展させ、最新のレギュレーションに対応するために必要な設備更新等も重要な課題であり、さらに、製造・品質管理の高度化等に対応した人材育成は、企業にとって常に最も重要なテーマとなっております。
国民の皆様の医療の質の向上に貢献し、国民皆保険の堅持のために必要とされるジェネリック医薬品を、品質を担保し、安定的に供給し続けるためには、莫大な投資を継続する必要があります。それに対し、いわゆる中間年改定など薬価に関わる環境はますます厳しくなってきており、大変な危機感を持っています。基礎的医薬品、安定確保医薬品を含むジェネリック医薬品のような長期にわたり欠かせない多くの医薬品を生産する企業が所属する当協会として、薬価に関連する諸課題について、危機感を共有し、議論を重ね、提案してまいります。
2021年9月に医薬品産業ビジョン2021が策定されました。医薬品産業政策が目指すビジョンの実現を図るための3つの焦点の一つとして「ジェネリック医薬品」が掲げられております。我々は、品質確保と安定供給の徹底を行政の皆様と連携を図りながら官民一体で進めてまいると同時に、この医薬品産業ビジョン2021の方向性に沿った、新たな挑戦をしていかなければなりません。GE薬協では、2017年5月に「ジェネリック医薬品産業ビジョン」、2019年9月に「次世代産業ビジョン」を策定いたしました。その2つのビジョンの中で掲げている、海外展開は「医薬品産業ビジョン2021」、でも、「ジャパンブランド」を訴求したジェネリック医薬品の海外普及が掲げられており、着実に進めていきたいと思います。また、ジェネリック医薬品の製剤工夫による服薬アドヒアランスの向上や識別性・安定性の向上、等の工夫が医療現場等でも十分には認知されていないと記されております。我々としましても、今一度、ジェネリック医薬品における価格以外の価値を、患者様、医療関係者の皆様に認知していただくための情報発信を強く進めていくとともに、生産技術でくすりのイノベーションを推進していきたいと考えます。
引き続き、皆様の声に耳を傾け、医療関係団体、保険者団体、関係業界団体の皆様、行政、議員の先生方とも意見を交換させていただきながら、この先の将来においてもジェネリック医薬品産業が良質な医療を届け続ける一翼を担っていけるよう活動して参りたいと考えております。
今後ともGE薬協の活動にご理解、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
【会長挨拶ページ】
https://jga.gr.jp/information.html