オレンジレターで「不祥事の種」を確認
日刊薬業編集部 大塚 達也
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は今年度から、GMP調査における指摘事例をホームページ上で「オレンジレター」として公表している。国内の製造所全体の品質向上を目的としたもので、7月までに3回作成されている。
これまで、GMP調査の指摘事項は調査対象となった当該施設のみに交付されてきた。ただ、PMDAは品質確保・改善に向けた取り組みの一環として、業界への周知が有用と考えられる事項を注意喚起の意味でオレンジレターに掲載することにした。指摘を受けた企業名や具体的な製品名などは公表されない。
調査において公表すべき事例が確認されるたびに随時発行される臨時公表は7月時点で、4月、5月、7月の3回出されている。そのほか、年に1回程度、総括としての定期公表も発行される予定だ。
4月号のオレンジレターでは、原料の受け入れ時に容器に貼付されたラベルで供給元のメーカー名を確認していなかった事例を紹介した。担当者は、容器のラベルではなく、試験成績書でメーカー名を確認していたが、受け入れ記録では、ラベルで直接確認したように記録されていた。
5月号では、受託製造メーカーが、GMP省令適用外の治験薬の製造委託を受けた際、薬理作用や毒性といった科学的評価の情報を入手することなく、残留管理のための限度値を設定せずに製造を行っていた事例を掲載。
7月号では、規格不適合の試験結果を受けた処置が、当該ロット以外のロットの試験結果にもたらす影響を評価していなかった事例が記載された。
いずれの事例に対しても、再発防止のためのチェックポイントが併記されている。共通しているのは「本来、何のためにその作業を行うのか」を確認する必要があるという点で、基本や原則に忠実に向き合うことが重要とあらためて認識させられる。
製造上の不祥事というのは、小さなゆるみが常態化していくことで発生しがちだ。割れ窓を放置せず、蟻の一穴も作らせないため、「不祥事の種」が掲載されるオレンジレターを他山の石として活用していくことも大切なのかもしれない。