電子処方箋について
電子処方箋事業は10月31日よりモデル事業が開始され、令和5年1月に本格導入されます。それに伴って、本稿では間もなく導入開始となる電子処方箋について説明いたします。
電子処方箋とは、データヘルス改革の一環として、これまで紙でやりとりしていた処方箋をオンラインで連携する仕組みです。複数の医療機関・薬局にまたがる過去の薬の情報を医師・薬剤師と共有することができ、重複投与や飲み合わせの確認等、今まで以上に正確で、安心・安全な医療サービスを目指すものです。
電子処方箋では、オンライン資格確認等システムを基盤とした「電子処方箋管理サービス」を通して、医師・歯科医師、薬剤師が処方箋をやり取りします。医師・歯科医師が処方箋を「電子処方箋管理サービス」に送信し、薬剤師がその処方箋を薬局のシステムに取り組み調剤します。調剤後、薬局は調剤結果を「電子処方箋管理サービス」に送信します。
電子処方箋管理サービスの利用には、①オンライン資格確認の導入、②電子署名等(例:HPKIカード※1)の取得が必要となります。なお、①オンライン資格確認の導入につきましては2023年4月以降、原則義務化とされております。
※1:HPKIとは、保健医療福祉分野の公開鍵基盤( Healthcare Public Key Infrastructure )の略称で、医療現場において、公的資格の確認機能を有する電子署名や電子認証を行う基盤です。厚生労働省において基盤の設置要件等を策定しており、現在は日本医師会、日本薬剤師会、医療情報システム開発センターにおいて、医師等の資格確認を行うためのHPKIカードを発行しています。
電子処方箋を用いるメリットは様々です。
まずは、直近のデータを含む患者の過去3年分の薬のデータが閲覧できます。医師・歯科医師、薬剤師はこれにより、患者の記憶に頼ることなく、より正確な情報を基に診察・処方・調剤を実施できます。
処方・調剤する薬の重複投与・併用禁忌に関する情報を電子処方箋管理サービスでチェックして、その結果をシステム上で確認することができます。また、医師・歯科医師、薬剤師間での処方意図や調剤結果の共有にも活用でき、連携強化も期待できます。
その他、電子処方箋発行の際、サービス上で処方箋発行の不備を確認することができるため、形式的な不備による問合せ件数の削減にもつながります。薬局においては、電子処方箋を受け付けた場合には、紙の処方箋を物理的に保管する必要がなくなるため、保管スペース確保やファイリング作業が不要となります。
• Step1:患者による「本人確認/同意」(医療機関)
患者は医療機関の受付で処方箋の発行形態を電子もしくは紙から選択します。
• Step2:医師・歯科医師による「処方・調剤された情報や重複投与チェック結果の参照」
医師・歯科医師は、処方箋の発行形態(電子・紙)に関わらず、処方する薬が過去の薬と重複していないか、併用禁忌ではないか等を「電子処方箋管理サービス」にて確認します。
• Step3:医師・歯科医師による「処方箋の登録」
医師・歯科医師は、確定した処方内容を電子処方箋管理サービスに登録します。電子処方箋を発行する場合には、電子署名で署名します。電子処方箋を発行した場合には、「処方内容(控え)」を、紙の処方箋を発行した場合には、従来通り、紙の処方箋を患者に渡します。
• Step4:患者による「情報の閲覧」
電子処方箋管理サービスに蓄積された処方薬のデータは、マイナンバーカードを用いてマイナポータルを経由することで患者自身がオンラインで閲覧することができます。
また、電子版おくすり手帳アプリを用いて引換番号と被保険者番号等を薬局に事前送付することで紙の処方箋の撮影・登録の手間の削減や、待ち時間短縮につながります。
• Step5:患者による「本人確認/同意」(薬局)
マイナンバーカードによる受付の場合、患者は顔認証付カードリーダー上で過去のお薬情報の提供に同意するかを選択、併せて患者自身が医療機関で電子処方箋を選択した場合は、調剤対象の当該処方箋を選択すると、電子ファイルが薬局システムに取り込まれます。
健康保険証による受付の場合には、引換番号を提示し、被保険者番号などを基に薬局システムに処方箋を取り込みます。
・Step6:薬剤師による「処方箋の取得」
薬剤師は処方箋の電子ファイルを取り込むタイミングで、電子処方箋管理サービスにて、今回処方された薬が過去の薬と重複していないかをチェックし、当該結果も併せて取り込みます。
・Step7:薬剤師による「処方・調剤された情報や重複投薬チェック結果の参照」
患者からの同意がある場合、薬剤師は過去の薬に関するデータを参照できます。
・Step8:薬剤師による「調剤内容の登録」
調剤後は、調剤内容を含む電子ファイルを電子処方箋管理サービスに送信します。
なお、電子処方箋を受けつけた場合は、薬剤師の電子署名が必要となります。
<参考>
○厚生労働省:電子処方箋
https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html
○厚生労働省:令和4年度第1回オンライン説明会「そうだったのか、電子処方箋」説明資料
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000975529.pdf
○厚生労働省:HPKI認証局運用規約関連資料・証明書類
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/pki-policy/repository.html