医療費適正化計画について
少子高齢化が進むなかで、国民皆保険制度と医療体制の維持は重要課題として認識されており、国と地域をあげた医療政策(医療費適正化計画)が実施されています。2024年度からは第4期医療費適正化計画が開始する予定で、計画策定にはCOVID-19対応で得られた知見などを踏まえた議論が求められています。
2022年10月13日、医療費適正化計画の見直しについて厚生労働省保険局より発表がありましたので、これまでの経緯と方向性について解説していきたいと思います。
<参考>
〇厚生労働省:医療費適正化計画の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001000563.pdf
○第1期医療費適正化計画
医療費適正化計画は、下記の図に基づき策定され、第1期(2006~2012年度)と第2期(2013~2017年度)は5年間、第3期(2018~2023年度)は6年間を一期として実施されています。
<参考>
〇厚生労働省:医療費適正化計画担当者説明会 説明資料
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000190967.pdf
基本的な考え方である国民の健康保持の推進については、メタボリックシンドローム該当者及び予備群を2008年度と比べて10%以上減少することを目標として定め、2012年度のメタボリックシンドローム該当者及び予備群の減少率は、2008年度と比べて12.0%減少となりました。
ただし、都道府県別にみると、平成24年度のメタボリックシンドローム該当者及び予備群の減少率が20%程度の都道府県がある一方で、減少率が5%台のところや、一部で増加している都道府県があるなど、都道府県毎に大きな差が見られます。
医療の効率的な提供の推進については、医療機関の機能分化と連携推進、在宅医療地域ケア推進と療養病床の再編成を各地域で実践することで、入院期間の短縮が図られました。2012年は、平均在院日数目標値29.8日に対し全国平均在院日数29.7日で目標値を下回る結果となっています。
<参考>
〇厚生労働省:第 1 期医療費適正化計画の実施に関する評価
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000190966.pdf
なお、療養病床については機械的な削減は行わないこととしていること、療養病床のうち介護療養病床については、2017年度末まで転換期限を延長していることも踏まえつつ、今後の医療療養病床の在り方について、引き続き検討を行っていくことなりました。
【第1期医療費適正化計画の評価と課題】
第1期医療費適正化計画は、2006年度は第1期計画医療費見通し34.5兆円に対し医療費実績は34.1兆円で0.4兆円、2012年度は第1期計画医療費見通し38.6兆円に対し医療費実績は38.4兆円で0.2兆円、それぞれ医療費を削減した結果となりました。
第1期の最終年度である2012年度の特定健診実施率70%、特定保健指導実施率45%の目標については、各実績とも大きく乖離があることから、引き続き第2期医療費適正化計画においても、実施率の向上に向けて、関係者の更なる取組をより一層促す必要があるとされました。また、国においては、実施率に係る保険者種別ごとの要因分析や国民に対する制度の普及啓発を進めるとともに、現在厚生労働省において、専門家の知見も借りながら、特定保健指導の医療費適正化効果等について検証し、当該検証結果の内容が都道府県や保険者に情報提供されました。
また、医療機能の分化・連携等を推進、医療機関が病床の医療機能を都道府県に報告など、都道府県は、地域の医療需要の将来推計や報告された情報等を活用して、二次医療圏等ごとの各医療機能や在宅医療の将来の必要量を含めた地域医療構想の策定が、第2期以降の課題とされました。
<参考>
〇厚生労働省:第1期医療費適正化計画(2008 ~ 2012年度)について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000190959.pdf
○第2期医療費適正化計画
医療費適正化計画は継続的な改善を促す必要があることからPDCAサイクルが推進されており、2008年度を始期とする1期5年間の計画であるため、1期の中間年度である2010年度において進捗状況の評価を行った上で、2013年度から第2期の計画期間が始まりました。目標の達成状況及び施策の実施状況については、中間評価に加えて、必要に応じ、計画の途中期間であっても評価を行い、計画の見直し等に反映させることとなりました。
第1期の結果と傾向と比較して、第2期医療費適正化計画は達成の可否と傾向に大きな差は見られないものの、特定健康診査実施率と特定保健指導実施率は上昇、メタボリックシンドローム該当者および予備群は減少傾向にあります。平均在院日数は、多少の地域差はでたものの、着実に短縮傾向にありました。第2期医療費適正化計画には後発医薬品の使用推進が新たに盛り込まれており、こちらも年を追うごとに使用割合の上昇が確認できます。
下記に第2期医療費適正化計画の策定に向けた考え方やポイントの図を示します。
<参考>
〇厚生労働省:第2期医療費適正化計画(2013 ~ 2017年度)について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000190967.pdf
<参考>
〇厚生労働省:第2期医療費適正化計画(2013~2017年度)について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000190967.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190688.html
○第3期医療費適正化計画
2018年に開始された第3期医療費適正化計画では、地域医療構想に基づいた医療資源の有効活用と地域内における医療機関の連携推進、糖尿病をはじめとした生活習慣病の重症化予防、後発医薬品利用のさらなる推進などが盛り込まれているのが特徴です。都道府県の事情を反映した個別取組目標は任意事項にとどまっています。団塊の世代の後期高齢者入りを前に、「経済財政運営と改革の基本方針(以下、骨太の方針)」には医療提供体制と医療費の地域差半減に向けた取り組みとして医療費適正化計画の見直しを行う旨の文言が記載されました。
<参考>
〇厚生労働省:第3期医療費適正化計画(2018~2023年度)について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000190972.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190705.html
○第4期医療費適正化計画の見直し案
2024年度からは第4期医療費適正化計画が開始する予定です。
厚生労働省が発表(2021年)している「健康寿命」は、男性が72・68歳、女性は75・38歳となっています。4人に1人が高齢者となり、まさに団塊の世代の年齢が後期高齢者となる2025年には、医療費がますます増加してゆくことが見込まれています。
本原稿執筆の段階で、公表されている全体像は下記のようになっております。
<参考>
〇厚生労働省:健康寿命の令和元年値について
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000872952.pdf