承認品目数、2回連続で100以下 安定供給の観点か
編集局日刊薬業編集部 大塚 達也 氏
厚生労働省が2月に承認したジェネリック医薬品は22成分81品目にとどまった。2022年8月の承認も21成分89品目と、近年では少ない品目数で、安定供給の問題が深刻化する中で製薬各社が慎重な判断を取っていることが示唆された。
今年2月承認の中にはARB「アジルバ錠」(一般名=アジルサルタン)のジェネリックが含まれ、同時期で最多の12社が承認を取得した。先発品は配合剤も含めると売り上げ規模が800億円を超える大型品ということもあり、集中は当然の結果ではあった。一方、新規の成分規格が14もありながら、その中で3社以上が承認を取ったのは、アジルバのみで、全体の品目数も81と少なかった。
特許切れとなる先発品の成分数やその売り上げ規模によって承認される全体の品目数は変化する。今年2月の承認に関していえば、目立った大型品はアジルバと、特別な安全管理対策が必要な抗造血器悪性腫瘍剤「レブラミドカプセル」(レナリドミド水和物)だったため、全体の品目数が伸びなかった側面もある。
もっとも、昨年8月の承認においてもPPI「ネキシウムカプセル」(エソメプラゾールマグネシウム水和物)や抗うつ剤「レクサプロ錠」(エスシタロプラムシュウ酸塩)などのジェネリックへの集中があったものの、全体は21成分89品目にとどまっていた。
2018年以降5年間の年2回のジェネリックの承認品目数を見てみると、おおむね100品目から200品目程度で推移している。1番少なかったのは19年8月の21成分53品目で、この時の新規9成分では制吐剤「イメンドカプセル」(アプレピタント)に2社が参入した以外、すべて単独での承認取得となっていた。それでも、19年2月は27成分147品目、20年2月は35成分352品目と、結果的に19年8月の品目数減少は一時的だった。
この5年で2回連続しての100品目割れは今年2月が初めてだ。その背景としては、先にも書いたように候補品のラインアップが影響する部分はあるが、やはりこれまで以上に安定供給に意識が向いた結果でもあるだろう。
●企業は安定供給を最優先
20年末以降、企業の製造上の不祥事が相次いで発覚し、当該企業の出荷調整や供給停止が多発した。それらの同種同効薬や代替薬も需要急増によって供給制限を余儀なくされ、安定供給問題が深刻化した。また、21年2月に初承認され、同年6月に収載された抗うつ剤「サインバルタカプセル」(デュロキセチン)は、大手企業の収載見送りや剤形の特殊性などが重なり、多くの企業が安定供給のために収載から発売まで時間を要した。この時、一部企業は発売前、あるいは発売と同時に出荷調整を行う事態になった。
こうした混乱を招く要因として、産業構造やビジネスモデルに関する課題が指摘され、厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」でも議論が行われている。そこでは安定供給のための業界再編の必要性が指摘されると同時に、「少なくとも5年間は継続して製造販売」「常に必要な在庫を確保」といった安定供給の要件の見直しを求める意見も相次いでいる。
ただ、そもそも有識者検討会の議論があろうとなかろうと、企業は安定供給を最優先し、患者の健康に貢献する社会的使命を負う。そのために、新製品の承認や収載をも慎重に計画するのはある意味当たり前のことで、各種問題が相次ぐ中でようやく当たり前の判断が下される傾向になったのかもしれない。(文中の数字は筆者が集計)
<参考>
日本ジェネリック製薬協会Webサイト
リンクページ:内閣府(内閣府ホーム 内閣府の政策 経済安全保障)
https://www.jga.gr.jp/link.html