日本薬品工業株式会社
日本薬品工業株式会社は一般用医薬品の製造販売会社として1960年に創立されました。その後、1969年の日本ケミファ株式会社による関連会社化を経て、1970年に一般用医薬品に加えて医療用医薬品の製造販売を開始し、2010年には日本ケミファ株式会社の完全子会社となりました。製造拠点として、国内は茨城県の筑西市(つくば工場)と稲敷市(茨城工場)の2工場、海外は当社の子会社であるNippon Chemiphar Vietnam co., ltd.がホーチミン市近郊にベトナム工場を有しています。また、国内各地に30数名の自社MRを配置しており、親会社の日本ケミファ株式会社と協力しながら、グループ全体で効率的な情報提供活動を展開しています。
今回は当社グループ初の海外拠点であるベトナム工場とその周辺環境などについてお話ししたいと思います。
■立地・人材採用
ベトナム工場はベトナム南部の最大都市であるホーチミン市から北に20kmほど行った、ビンズン省のベトナム・シンガポール工業団地(VSIP1)という場所にあります。当社が初めての海外生産拠点にベトナムという地を選んだ理由としては、①日本との関係が良好なうえ当面は人件費や操業コストの面でメリットが続きそうなこと、②日本からの距離が比較的近く製品の輸送や技術者の派遣などがスムーズに行えること、③台風や地震などの災害が少なく工場の安定稼働が見込めること、などがあげられます。
またホーチミン市に近いことから、都市部に住む優秀な人材を採用するのに有利なロケーションではあるのですが、ベトナムの若者は勤勉である一方、ジョブホッピングにより経験知識を高めて行く傾向にあるため、時間をかけて教育をしてもすぐに転職してしまうのが悩みの種です。社員の入れ替わりが激しいため、必然的に新入社員に対する教育を一から始める機会が多いのですが、こういった雇用環境に合わせ短期間で教育を行う仕組みが必要であると痛感しています。
■生産能力・運営体制
現在のベトナム工場の生産能力は年間5.5億錠です。2018年12月の製品初出荷以来、製造量が多くコストメリットの出せる品目を中心に、毎年日本工場からの品目移管を進めており、順調に生産量を増やしてきました。昨今の日本での医薬品供給不足に対応するため、つい先ごろ勤務の二交代制も開始しております。従業員数は130名あまりで、日本から数名の技術者を派遣していますが、現在はほぼ現地スタッフのみで製造や品質管理などの業務を行っております。
■コロナ禍のピンチ
商業生産開始以降この4年間で最大の困難は、2021年の新型コロナウイルスパンデミックによる都市ロックダウンでした。突然、道路に関所がつくられ人・モノの移動に制限が課され、生産停止も余儀なくされました。いったん工場を離れると再度出社することができないため、従業員には一時期工場に寝泊まりしてもらい、さらに日本から食料を送ってもらうなどして何とかこのピンチをしのぎました。また輸出入のバランスが崩れたためコンテナ不足となり、ベトナムから日本への出荷が出来ない事態も発生しました。海外に工場を持つリスクを実感し、BCP対応の大切さを再認識した出来事です。
■今後の展開
現在は主に日本向け製品の生産を行っていますが、今後は現地拠点を活かしたベトナム市場への展開も進めてまいります。ベトナムでは国民の生活が豊かになるに連れて、健康志向が高まっていることから、医薬品の市場規模も拡大しています。日本品質の製品を現地で製造しタイムリーに患者さんに届けることで、ベトナムの医療に貢献して行きたいと考えています。