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月刊JGAニュース

「念書ルール」に続くGE安定供給策は 注目される新会議体での議論  

株式会社じほう 報道局日刊薬業編集部 海老沢 岳 氏

 後発医薬品の供給不安が改善されない中、厚生労働省が「念書ルール」に続く問題解決に向けた一手として、品目数の適正化などを検討している。厚労省は「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の議論をまとめた報告書で、品目数の適正化を盛り込み、業界再編の取り組みや、安定供給を行う企業の評価などのキーワードを並べた。これらの検討をどのように進めていくのか。今後有識者検討会とは別に設置される会議体での具体策の議論に、業界関係者が関心を寄せている。
 日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)によると、2022年10~12月の後発品数量シェア(速報値)は過去最高の81.2%となっている。厚労省が診療報酬で使用促進策を打つ中で、07年9月の34.9%(薬価調査調べ)から急速にシェアが拡大した。一方、生産数量を増やす中で品質の確保が追い付かず不正製造を行う企業がいることが明らかになり、現在の医薬品供給不足の問題につながっている。

●多品目少量生産のリスクに対応

 後発品企業は薬価改定の度に既存製品の薬価が下がるため、半年ごとに発売する新製品の売り上げで利益を出す。その繰り返しで多品目少量生産がビジネスモデルとなっている。
 多品目少量生産では1つの製造ラインで短期間に複数の製品を製造するため、次に製造する製品の事前準備で打錠機の洗浄などの工程が多発し、異物混入など品質不良のリスクが増大する。リスク管理を十分行い安定供給を続ける企業もある一方、新製品の発売を優先させ安全管理をおろそかにした企業がGMP違反で都道府県から行政処分を受けている。
 また多品目少量生産では1年先まで生産する品目がタイトに計画されており、他社が製造停止となった際にすぐに代替品を増産するのが困難な課題もある。 
 こうした問題に対し、厚労省は対策を打ち始めている。21年12月の追補からは収載希望申請において、過去5年以内に収載した製品で欠品、出荷調整、回収などで供給不足を発生させた製造販売業者に対し、新たに同様の問題を起こした場合に収載を2回見送ることを記した念書を提出させるルールを導入した。
 ルール導入により新規追補品への参入社数は減少している。念書導入前の20年12月の追補品である疼痛治療剤「リリカ」(19年度の先発品売り上げ1015億円〈薬価ベース〉)には22社が参入した。一方、念書導入後の22年12月追補では、市場規模が似ているPPI「ネキシウム」(21年度先発品売り上げ913億円〈同〉)への参入は8社で、リリカの半数以下となった。他の追補品でも同様に参入社は減少傾向で、自社の供給体制から慎重に判断していることが見て取れる。

●有識者検討会の報告書に「品目数の適正化」

 さらに念書ルールに続く施策例として、厚労省は有識者検討会の報告書で品目数の適正化を挙げている。
 品目数の適正化については、沢井製薬の澤井健造取締役副会長(前代表取締役社長)が会見などで、必須な品目を残しつつ、役割を終えた品目を整理する必要性を訴えていた。
 日本エスタブリッシュ医薬品研究協議会(松森浩士代表)も、各社から販売を中止したい品目を厚労省が聞き取り整理した上で、1成分当たりの企業数を絞り込むことを提言している。

●「業界再編」「安定供給の企業評価」も

 報告書ではまた業界再編も視野に入れつつ、品目数の適正化の結果、その後も製造を続ける企業に対し製造ラインの増設を支援することも検討項目に挙げている。
 新規品目の上市に当たって、十分な製造能力を確保していることや継続的な供給計画を有しているといった安定供給を担保するための一定の要件を求め、これらの要件を満たさない企業は結果として市場参入することができなくなる仕組みの検討も挙げている。
 安定供給体制へのインセンティブ導入はGE薬協もすでに要望している。

●関係者から課題を指摘する声

 一方で現場では、念書ルールの課題が見えてきている。報告書で打ち出された品目数の適正化については慎重なルール作りを求める声も聞こえてくる。
 念書ルールは、供給体制が整わない企業による安易な参入を防ぐ狙いがあり、参入企業は今まで以上に供給体制を慎重に検討するようになった。ただ参入した後発品メーカーの関係者に話を聞くと、生産数量をかなり保守的に見積もった影響から製造が過剰になり、結果的に在庫が廃棄となる新たな課題も見え始めているという。
 品目の適正化、いわゆる品目の統合については、採算が合わないため品目を撤退する企業が殺到することが想定される。別の業界関係者からは、供給を続ける企業に過度な負担がかかる恐れもあり、慎重に制度設計を組むよう求める声が早くも出ている。
 新たな会議体は、後発品産業のあるべき姿やその実現のための具体策を議論するために設置される。報告書で挙がったメニューを着実に実現させ後発品の供給不安を一日も早く沈静化させるには、会議体で対策による効果とともに悪影響も踏まえ、検討を進めていく必要がありそうだ。

 

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