株式会社パウレック
はじめに
・・・直打法をご検討の皆様へ、含量偏析の問題はありませんか?
GE 薬協会員の皆様、賛助会員の株式会社パウレックと申します。弊社は『ハードウェア、ソフトウェア、エンジニアリング、計装制御』を4本柱とし、製剤装置・システムを提供致しております。
昨今、打錠用賦形剤などの原料や製剤技術、モニタリング技術の進化により、固形製剤の製造現場においては連続直接打錠(以下、直打)や連続生産の興隆が進んできております。新しい製剤技術は、工程の削減、省エネ、省コスト、少人化などをもたらすことが期待されておりますが、一方、製法を変更することで製品品質にどのような影響やリスクがあるかについてしっかり評価しておかなくてはなりません。
理想は、品質の良いものを「少ないコスト」で、「早く」「安全に」「環境負荷を抑えて」作ることです。一見、直打法は、それらを適える理想的な製造法のように思えます。しかしながら、直打法では含量偏析に注意を払う必要があります。均一性良く混合した後、混合機からの排出や空気輸送、打錠機ホッパ1)からの原料投入、そして投入後の振動、、、。これら様々な要因が重なると、流れやすい粒子とそうでない粒子との間で流れに差が生じ、下図のように偏析が生じてしまうことがあります。これを打錠するとどうなるか、説明するまでもなく錠剤は含量不適合となり出荷できません。
こうした現象は、原料それぞれが持つ粉体特性の違いがもたらします。同じ見た目の白い粉でも「個性」が異なるのです。「真密度」の高い(低い)粉、「サイズ」の大きい(小さい)粉、「形状」が丸い(角張っている)粉、「付着性」が強い(弱い)粉、などなど。単に混合しただけでは、わがままで個性豊かな「粉」達はたちまちバラバラに動いてしまうか、動かなくなってしまいます。
打錠用原料粉体の流動性が悪いと、打錠機のホッパ内でブロッキングを起こして詰まってしまい、打錠工程そのものが止まってしまいます。また、仮に流れたとしても原料の成分間で流動性に違いがあると偏析を起こしてしまい、錠剤そのものの品質(含量均一性)が低下してしまうでしょう。
それら厄介な「粉」達を扱いやすい「粒」へと変化させるのが「造粒」という技術です。
造粒は何のため?・・・多くの手間を対価に得られる大きなメリット
釈迦に説法で恐縮ですが、“造粒”はとても重要な工程です。筆者がパウレックに入社したばかりの頃は素人同然で「造粒なんか要らないんじゃないか?」「混ぜるだけでもいいのでは?」と造粒の意義を理解していませんでした。ところが、造粒が持つ様々な利点を理解していくうちに、そのありがたみを痛感していくようになっていきました。造粒にはコストと時間をかけるだけのメリットがたくさんあります。
造粒は先人達が残した知恵と努力の結晶であり、とても重要かつ有用な技術です。
造粒は、一般的に粒子を混合した後、水分やバインダーによる結合力を利用したり、圧縮力によってフレーク状の塊を作ってから破砕して粒子径を整える方法が採用されます。弊社で代表的な造粒方法としては、撹拌造粒法、乾式造粒法、流動層造粒法、直接顆粒化などがあります。造粒によって打錠に最適な顆粒が製造できます。
直打への取り組み
一方、冒頭でも述べましたが、直打法は製造サイドから見て多くのメリットがあり魅力的です。弊社では、最適な直打システムを提供すべく様々な検討を行っております。混合においては、近赤外光分析装置をセミバッチ式混合装置の容器の窓に取り付け、内部の混合度を計測しながら混合の終点判定を行うシステムを採用しております(右下写真)。また、混合後の打錠機へのマテリアルハンドリングにおいては、空気輸送よりも偏析が生じにくいリフタ搬送方式や、最終打錠直前の混合状態の計測にも取り組んでおります。 (左下写真)。
さいごに
賦形剤の開発や、混合機・造粒機・打錠機・計測機や品質管理手法等の進化が直打法の進化と商業化をもたらしました。さらに、 SDGs3)・EHS4)活動の活発化などの社会的背景もあり、これからの時代に見合った製造方法が選択されるべきで、直打法は理想的な手段になりうるでしょう。
しかし、最も大事なことは患者様の目線に立つことであり、偏析などの問題により医薬品の品質が低下するようなことは絶対にあってはなりません。もし直打での製造がどうしてもうまくいかない場合、従来の造粒をはじめとした製剤技術による製造方法に立ち返る勇気も必要だと思います。
弊社は、連続生産や直打、それらに付随するモニタリング技術などの新技術開発に取り組んでいますが、従来から培われた製剤技術についても大切に受け継いで守り、皆様の研究開発・工場での生産などあらゆる面でサポートして参ります。何か技術課題がございましたら是非お気軽にご相談ください。
【用語】
1) ホッパ:hopper, 原料貯留・供給容器のこと。
2) ママコ (継粉) :粉を水などでこねたり、水に溶いたりするときに、分散せずに粉末のまま固まった部分。“だま”とも言う。
3) SDGs:Sustainable Development Goals「持続可能な開発目標」。2015年開催の国連サミットにて採択。
4) EHS: 環境(Environment)・健康・衛生(Health)・安全(Safety)を一体的にマネジメントしていく活動。
近年、サステナビリティ(Sustainability)を加えEHSSとしている事業者もある。
詳細は弊社HP( 右記) へお問合せください。