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月刊JGAニュース

安定供給問題に関する議論を眺めて  

 本年6月の医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会(以下、「有識者検討会」)報告書を受けて、各分野での検討が始まり、検討会ラッシュとの報道もあった。新たな会議体として始まった、後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会(以下、「後発品検討会」)、「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」も議論を始めている。
 中医協でも令和6年度薬価改定に向けて議論が始まり、9月20日に中医協・薬価専門部会で、業界意見陳述(ヒアリング)が行われた。先発品、後発品含めて、薬価が急激に引き下げられる状況では、新薬のドラッグラグ・ドラッグロス、後発品を中心とする供給不安に悪影響を及ぼすので、薬価の下支えを求める声が大きかった。
 中医協委員からは、「通常にも増して、今回は、新薬、後発品ともにプラス評価を求める要望事項ばかりのように見えるが、業界の皆様は、その財源についてはどのようにお考えか?」と苦言を呈されている。後発品の供給不足については、診療側委員から、日薬連の毎月のレポ―トでは、出荷調整中の後発品の品目数(限定出荷と供給停止の合計品目数32.3%(8月調査))は減っておらず、供給不安は改善していない。医療現場は疲弊している。即効性のある対策を示せとの意見が出されている。
 その中で、安定供給のための新たな提案が、日本医薬品卸売業連合会(以下、「卸連」)から提出されている。
 卸連の資料では、出荷調整中の限定出荷数量(限定出荷、供給停止、出荷停止予定の品目の納入数量)を、薬価帯に分類したデータを提出して、医薬品全体、後発品において、出荷調整中の品目は、薬価20円未満に集中していることを示しており、医薬品全体の限定出荷数量の86.2%は薬価20円未満に集中している。現状打開には、薬価20円未満の医薬品で、安定確保すべき医薬品の薬価を引上げることを検討すべきと要望をまとめている。
 しかし、後発品の大多数(数量ベースで、8割以上)が薬価20円未満の価格帯に属するので、出荷調整中の品目がこの価格帯に集中するのは当然と言う見方もあるなかで、この中の多くの品目の薬価を引き上げることには、中医協でも反対が多いと思われる。
 安定供給に向けて、有識者検討会の報告書に
(安定供給を行う企業の評価)
○新規品目の上市時における対策の検討に加えて、品質が確保された後発品を安定供給できる企業が市場で評価され、結果的に優位となるような対策が求められる。
 とあり、それを受けて、後発品検討会開催要綱の検討事項で、
 2.検討事項
  (1)上市に当たって十分な製造能力等を求める仕組みの構築
  (2)安定供給を行う企業の評価
 が挙げられている。
 今後、後発品検討会で企業の評価方法がどのようにまとめられるのか、また、それを受けてどのような方向性が中医協で示されるのか注目したい。

(S.M.)

 

<参考>
〇薬価専門部会(第209回)薬-4 日本医薬品卸売業連合会 意見陳述資料
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001147785.pdf

〇後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会 
第1回 参考1 開催要綱
https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001127687.pdf

 

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