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月刊JGAニュース

問われる“業界団体”としての姿勢
安定供給めぐる中医協委員の指摘にどう応える?  

株式会社ミクス
ミクス編集部 デスク 望月 英梨 氏

 「各企業の取り組み次第とするのではなく、今の医療現場の状況下では、業界がしっかり取り組み姿勢を示さないと改善しないと思われる」。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は業界ヒアリングが行われた12月6日の中医協薬価専門部会で、こう指摘した。2024年度薬価改定に向けて、後発品の安定供給に向けて、企業指標の試行導入の検討が進められている中で、問われるのは“業界”として安定供給に取り組む姿勢にほかならない。

 後発品を中心とした医薬品の安定供給が2024年度薬価改定の柱の一つとされる中で、薬価上の評価に安定供給を指標として入れることが検討されている。試行導入では、他社が出荷停止又は出荷量の制限を行った医薬品に対する自社品目の追加供給の実施など製造販売する後発品の供給実績や薬価の乖離状況などを評価。今後は、後発品の安定供給に関連する情報の公表や後発品の安定供給のための予備対応力の確保を追加する方針だ。評価項目をポイント化(点数化)し、合計点を相対的に評価。「一定水準を超える取り組みを行っていると評価できる企業の区分(A区分)」に該当する企業の一部品目について、一定
の条件の下で3価格帯とは別の扱いとするとしている。

 日本ジェネリック製薬協会の高田浩樹会長は、「各企業が安定供給や供給状況に関する情報開示することによって、結果的に企業指標に準じた体制を各企業が整えることや、また安定供給が可能な企業以外は参入が難しくなる方向であることによって、後発品産業の構造変化につながり、ひいては持続的な品質確保と安定供給につながると考えている。また流通改善等の薬価以外の検討も進められていることを踏まえ、総合的な対策によって、より安定確保につながるものと考えている」と“個社”の行動変容をうながすきっかけとなることを強調した。

 一方で、中医協委員からは、個社としての取り組みにとどまらず、“業界”としての姿勢を問う声が相次いだ。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も、「メーカー主体で、という話があったが、増産など努力されていることは十分理解している。ただ、日本ジェネリック製薬協会がしっかり取りまとめないといけない。先が見えない中で、正直どうなっていくのか現場としては不安なところがある。是非、先に向けてどう具体的に解決していくのかお示しいただきたい」と釘を刺した。支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)も「企業にお任せするというところですね。そのように理解した」と話すなど、診療・支払各側から批判が相次いだ。

 製薬業界と中医協委員との見方の隔たりは、業界と医療現場の見方の隔たりとも言える。長引く供給不安は医療現場に影を落としている。日本製薬団体連合会(日薬連)の調査によると、2023年10月時点で、限定出荷・供給停止が合計24%(3,970品目)。限定出荷の要因としては「他社品の影響」が最多となっている。
 安定供給に個社の責任が問われるのは当然のことと言える。医療現場や薬局から見れば、業界全体として供給不足が解消できなければ、製薬業界が産業としての責任を果たしているとは言えないのではないか。中医協委員が突き付けた指摘に、業界団体としてどう応えるか。課題に業界として、真摯に向き合うことが必要ではないか。

 

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