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月刊JGAニュース

第26回日本医薬品情報学会総会・学術大会一般演題発表について  

安全性委員会

会 期:2024年6月1日(土)、2日(日)
場 所:千葉大学医学部、医学部付属病院
一般演題発表形式:口頭発表

演 題:ジェネリック医薬品の電子添文から考える医薬品情報~新記載要領対応で生じた情報相違~
演 者:日本ジェネリック製薬協会 安全性委員会副委員長 大野 公嗣 氏

 

 ジェネリック医薬品の新記載要領電子添文については、JGAニュース2024年5月(No.193)にて詳細に述べていますが、今回の学会ではその問題点を情報の使い手である医薬関係者へ広く周知することを目的として第24回(2022年)、第25回(2023年)に引き続き日本医薬品情報学会総会・学術大会で口頭発表しました。今年度の学会では、前回の報告以降、GE薬協 安全性委員会に設置されている電子添文検討部会の活動を通じて得られた成果の一部と課題をエッセンスとして、医薬品情報学を専門とする薬剤師の先生方に報告しました。2024年3月末を以て全ての医療用医薬品電子添文が新記載要領に基づき改訂が行われていますので、今後、先発医薬品とジェネリック医薬品、あるいはジェネリック医薬品間で電子添文に記載されている情報の相違が確認されるような機会が増えると思われます。そうした観点からも薬剤師の先生方への現状の課題周知は非常に意義があるものと考えています。

発表内容ですが、情報相違の具体的事例として

・ラベプラゾールナトリウム錠

・セフタジジム注

・オランザピン錠

を取り上げました。3事例とも情報提供充実通知に基づき公表されている情報(学術文献、先発医薬品の申請資料概要・審査報告書など)に基づき先発医薬品と同一あるいは同等の情報提供を行うことができるかどうか検討を行いました。その結果、先発医薬品とは症例数や有効率の数値や内容が異なる情報となり、この情報が情報提供充実通知において示されている「同等」の範疇なのか、企業ごとに判断が分かれるような事例でした。

 セフタジジム注については、既に先発医薬品が製造販売を中止し、PMDAホームページからも電子添文が削除されており、現時点ではジェネリック医薬品の電子添文のみが公表されている状況です。そのため、セフタジジム注の適正使用のために必要な一部の情報については、公表されている情報に基づき同一の記載が出来ないジェネリック医薬品の電子添文のみとなり、先発医薬品の電子添文にて提供されていた情報が消失してしまうという状況に陥っています。

 オランザピン錠については、性差情報に着目した検討が行われ、先発医薬品とジェネリック医薬品、そしてジェネリック医薬品間で情報相違が認められるとの内容が別の学会で発表されましたので、当該学会発表の内容をご紹介して、情報の作り手側の目線で問題点・課題点を報告しました。これまでの学会報告では臨床成績の有効率や副作用発現率の情報相違が中心でしたが、投与可否や用量調整などの臨床的判断が求められる性差による薬物動態の相違に着目した点は、今後の電子添文検討部会における課題研究に新たな着眼点をもたらしたものと考えています。
 報告のまとめとして、
・「同等」の考え方が通知で定義されていないため、どれくらいの差であれば「同等」と判断して良いのか、考え方が企業ごとにまちまちであること
・そのため、客観的に「同等」と判断されなかった場合の対応も企業ごとにまちまちであること
・本来、医療用医薬品電子添文に記載する情報は、医薬関係者が入手可能な情報に基づき作成され、同一成分では同一記載となるべきであること
・先発医薬品が撤退する中、公表資料に基づいて先発医薬品とジェネリック医薬品の電子添文が同一記載できれば良いが、同等記載に留まる場合は、撤退によって適正使用のために必要な情報が消失することになること
を述べた上で、先発医薬品と同一記載するためにはどのような環境整備を行うべきか、問いかけました。座長から、同一記載とするために企業側が考えるロードマップ・行動計画を問われましたので、情報の使い手である医薬関係者に同等記載の問題点・課題点をインプットし、医薬関係者から問題点を指摘いただくことが同等記載問題を解消する原動力となりますので、引き続き医薬関係者の皆様に対する本件に関する周知を行っていく旨、回答しました。
 今後は、「薬物動態等」の情報充実に引き続き取り組むとともに、医療用医薬品の適正使用のためにも重要な情報である「薬物動態等」の情報については、同一成分では同一記載という電子添文の本来あるべき姿にすることを理念として、引き続き行政当局との折衝、医療関係者の皆様への問題提起を行い、活動を継続して参ります。