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月刊JGAニュース

未来への手紙  

 スマートフォンの画面に映し出されたメッセージ。「誕生日おめでとう!」と、地球の裏側に住むホストファミリーからの心温まる祝福だ。私は、「ありがとう」と返信し、続けて日本の暑く厳しい夏について話し始めた。彼らもまた、異常な暑さに苦しんでいるという。同じ話題で盛り上がる中、ふと胸に寂しさが広がった。スマートフォンを介した会話が、何か大切なものを奪っているように感じたのだ。
 私が留学していたのは遠い昔のこと。あの頃は、日々の冒険と目新しいカルチャーの発見に胸を躍らせていた。刺激的で、新しい世界が広がっていた。留学期間が終わり、日本に帰国したとき、まず、感じたのは深い孤独感と、日本の蒸し暑い夏の息苦しさだった。その日のうちに、ホストファミリーへ無事に帰国したことを告げる手紙を書いたことを今でも覚えている。
 当時、手紙を書き、返事を待つことが当たり前だった私には、スマートフォンの画面越しにリアルタイムで世界中と繋がる未来など、想像もできなかった。こうした未来が現実となることを、皆さんは予想していただろうか。今、私たちが当たり前のように享受しているデジタルの便利さは、偶然ではない。誰かがその未来を描き、実現に向けて情熱を注いだ結果なのだ。そのビジョンに共感し、選択し、行動した人々の力が、私たちの現在を築いている。
 しかし、この便利さの裏には多くの課題も潜んでいる。環境問題、人と人とのつながりの希薄化、そして、本当の温もりの喪失。これらは、我々が解決すべき重要な問題だ。特に、現在において地球温暖化は私たち全人類が直面する大きな課題となっている。気候変動の影響は年々顕著になり、私たちの日常生活にも大きな影響を及ぼしている。
 そして、世の中の変化や人々の価値観の変化によって、企業の価値、あり方も変化している。かつての企業価値は主に経済的な成功に基づいていたが、今後の企業価値は環境への配慮や社会貢献の重要性に重きを置くものへとシフトしている。未来の企業というものは、単なる利益追求を超えて、より持続可能な環境対策や社会貢献の重要性を含むものとなっている。環境保護に向けた技術革新や地域社会の再構築に向けた取り組みは、企業の責任と使命としてますます重視されている。
 特に、気候変動による異常気象や自然災害の頻発は、地球規模での対策が急務となっている。環境への配慮は、企業の持続可能性と直結している。エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの活用、廃棄物の削減など、企業が取るべき具体的なアクションは多岐にわたる。また、社会貢献性の高い事業活動は、企業の信頼性とブランド価値を高める。教育支援やコミュニティの活性化など、社会全体への積極的な関与が求められているのだ。そして、私たち一人ひとりの行動がこのような企業や組織、未来を作っていくものだと信じたい。
 このデジタル時代において、私は地球の裏側に住むホストファミリーに、心からの手書きの手紙を送ることに決めた。画面越しではなく、紙に書かれた文字で伝える思いやりや感謝の気持ちは、伝えることができなくなっているかもしれない。今だからこそ味わえる人と人とのつながりを再確認し、デジタルでは得られない温かみを伝えるために選択できる一つの方法だ。
 世の中は私たちの選択と行動の結果として、かたち作られる。企業や個人の行動や挑戦が、これからの未来を築く礎となる。私は、デジタル社会の中においても、人と人とのつながりや温かみを感じることができる世の中が続くよう、一人ひとりが真剣に考え、行動することが重要だと思っている。

 この先も、手書きの手紙に込めた思いが、遠く離れた友や家族まで届くことを信じて。

(T.T)