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月刊JGAニュース

ご趣味は?  

 「私の趣味は着物です。四季折々に合わせ、普段着から冠婚葬祭まで全て着物で賄えるように揃えています。もちろん自分で着付けることも出来ますよ。」

 こう聞くと、「お嬢様だ」、「お金持ちだ」、「お花かお茶を習ってるのかな」、「清楚な人なんだ」、そんなイメージを持たれるでしょう。これら全て、私自身が言われた経験があります。実際は一般的なサラリーマン家庭に育ち、ごくごく平均的な社会人人生で、お稽古事とは縁遠く、また誠に残念なことに、直接私を知る方に「清楚系」と言って頂いた経験もありません。
 触れる機会の少ない方にとっての着物は、“高級なお召し物”、もしくは七五三や成人式といった“一生に一度、着る物”といった認識の方が多いかと思います。実際にはフリマアプリやリサイクルショップなどで一着千円から手に入り、洋服と変わらない値段で一式揃えることが可能です。もちろんリサイクル市場の値段はピンキリです。高い物はリサイクルでも何十万というお値段が付く物もあります。有名な作家さんがデザインした物、特定のブランドの物、それらは洋服と同じく高い価値があります。しかし、一概に言えるのは一度仕立ててしまった着物は袖を通したかどうかに関わらず各段に安くなることでしょう。なぜなら、着物は“一人一人の体形に合わせ誂える(あつらえる)物”だからです。反物(生地)から仕立ててしまった瞬間、それは“その人専用のお召し物”になる。だからこそ、着物の買取価格は十分の一どころではなく、“はした金”にしかならないことが多いのです。
 平成になり、着物は誂える物から、洋服と同じようにS、M、Lといった標準サイズ展開がされるようになりました。これはプレタ着物と呼ばれ、誂え着物とは一線を画し、着物を非常にお手頃にしたと思います。巻物状の反物からの生地選び、採寸、仕立てといった手間も時間も必要だった着物が、洋服と同じようにハンガーに掛かった状態で選べるようになったのです。とは言え、着物最大の難点は価格やサイズではなく、“着付け”だろうと思います。着付けが出来ないために興味はあっても買わない方も多いのではないでしょうか。あくまで実感としてですが、私の祖母世代(80歳以上)は着付けが出来て当たり前ですが、親世代(60歳代)では既にそうではないように思います。“平面の着物を立体的に着付ける”これは私自身も悩まされており、上級者とはまだまだ言えません。特に、私が嗜む着物はリサイクル品が多く、サイズもまちまち、丈や袖(ゆき)が短いのは当たり前、アンティーク着物なら多少の汚れや痛みはご愛嬌♪といった物ばかりで、誂え物とは真逆の“着物に合わせて”着付けなければならず、日々苦戦しています。
 こんな話をすると、やはり着物はハードルが高いと思われるかもしれませんが、同じく平成になり、帯についても進歩が起こりました。いわゆるワンタッチ帯、作り付け帯と言われる、既に形が出来上がった帯が登場したことです。これらの登場により帯を結べなくても簡単に着られるようになりました。特に浴衣はぐっと身近になり、夏になると全国チェーンの大手洋服店や商業施設で見かけることも多いのではないでしょうか?このように、プレタ着物や作り付け帯の登場で着物へのハードルは大幅に下がったように思います。
 着物の進化は続き、最近ではワンピース型の浴衣、マジックテープやジッパーでまるで洋装のように切られる着物など、着付けを全く知らなくても楽しめるようになってきています。ただ、それらはまだ出始めたばかりで種類は多くなく、冒頭で紹介したリサイクル市場では伝統的な型の着物がほとんどであるのが現状です。
 ここまで色々書いてきましたが、私が最も伝えたいことは、「着物はリーズナブルに楽しめる趣味だ」ということです。皆さんが思っている以上にお手軽に、お手頃に楽しめるのです。着物、帯、帯留、帯締め、バッグ、足袋、草履・・・・組み合わせは無限大、個性的な着こなしから、伝統的な着こなしまで幅広い自己実現が可能なのです。
 「着物がもっともっと多くの人に親しんでもらい、一生に一度の特別な物ではなく当たり前の日常になったらいいな」とひっそりと願っております。

 

個性溢れるお気に入りの帯
帯留めコレクション
(K.S.)