平成30年1月23日に厚生労働省医政局長および保険局長の連名で発出された「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」(以下:流通改善GL)において改善を求められている一次売差マイナスの解消について解説します。
「一次売差」とは、医療用医薬品を販売する卸売業者の立場でみた時に、メーカーからの仕入れ値(=仕切価)と、卸の粗利を乗せた医療機関への売り値(=納入価)との差額の部分を指します。
世間一般的な商慣行としては、卸は自分たちの儲け(=利益)を出さないといけないので、一次売差はプラスになるのと考えるのが普通です。ところが、医療用医薬品の販売実態においては、この一次売差がマイナスになっていること(いわゆる逆ザヤ)が問題として取り上げられています。
参考1で示しますが、仕切価1よりも低い納入価2で販売するために儲け部分がマイナスになっているということです。背景には、卸間での受注競争や、医療機関からの値引き要求などにより価格を下げざるを得なくなっているという実情があります。
では、そのマイナス分をどうやって補って利益を出しているかというと、仕切価とは別にメーカーから支払われる割戻(リベート)やアローアンスがあり、これらをすべて合算したものを仕入れの最終原価3と考えれば利益を捻出できているという姿になっています。(2-3がプラスということです)
【参考1】第26回医療用医薬品の流通改善に関する懇談会資料より
【 図 1 】: 第 2 6 回 流 改 懇 資 料 よ り
一次売差は一次マージンともいわれ、それに呼応して割戻(リベート)を二次マージン、アローアンスを三次マージンということがあります。
参考2で示していますように、一次売差が平成15年度以降マイナスになっており、かつその率が拡大していることが問題視されています。
今般発出された流通改善GLでは、メーカーに対して、最終原価3を勘案して最初から適切な仕切価を提示する、それに伴って割戻やアローアンスの部分を整理する、そしてそれらの運用基準を契約によって明確にする、ということが記載されています。
価格交渉面では、もう一つ、卸と医療機関の交渉において、単品単価契約を行うことと、早期交渉妥結を推進することが謳われています。これと一次売差マイナスの解消をセットで進めたいというのが行政の意向です。医療機関に対しても、過大な値引き交渉は慎むよう促されています。
今後開催される流通改善に関する懇談会を通じて、これらの改善状況が定期的に報告されていくことになります。改善度合いが思わしくない場合は、診療報酬上の対応も含めて国が主導していくという宣言にあたるのが流通改善GLです。
交渉に関与するメーカー、卸、医療機関の関係者すべてに改善要望が示されていますので、業界が一丸となって各課題に取り組んでいくことが求められています。
【参考2】第26回医療用医薬品の流通改善に関する懇談会資料より
JGAニュースNo123からの転載です