はじめに
医薬品は、製造されてから患者様が服用するまでの間、例えば流通段階や医療機関あるいは家庭における保存の過程において、その品質が保たれていることが重要です。医薬品は、温度や湿度、光などの環境因子でその有効性及び安全性に影響を受けることがあり、適切な保存条件(包装形態)にて保管する必要があります。同じ保管条件下で医薬品の品質が経時的に安定であるかを確認し、その結果に基づいて医薬品の使用期限(有効期間)を設定します。
市販後においても設定した使用期限(有効期間)内に、設定した保存条件にて医薬品の品質が保持されていることを確認することが重要です。そのためにも安定性モニタリングの実施は必要になります。
安定性試験
安定性試験とは、医薬品の有効期間や保存条件(貯蔵方法・包装形態)を設定するために、医薬品の承認申請時に行う試験のことで、『安定性試験ガイドライン』に基づき、当該医薬品の品質が経時的変化することなく、有効性及び安全性が設定した使用期限(有効期間)の間担保されていることを確認します。安定性試験には、「長期保存試験」、「加速試験」及び「苛酷試験」の3種類があり、それぞれの目的は以下の通りです。
長期保存試験:申請する貯蔵方法において、物理的、科学的、生物学的及び微生物学的性質が申請する有効期間を通じて適正に保持されることを評価するための試験。
加 速 試 験:申請する貯蔵方法で長期保存した場合の科学的変化を予測すると同時に流通期間中起こり得る貯蔵方法からの短期的な逸脱の影響を評価するための試験。
苛 酷 試 験:流通の間に遭遇する可能性のある苛酷な条件における品質の安定性に関する情報を得るための試験であり、加速試験よりも苛酷な保存条件を用いて行う試験。
安定性モニタリング
安定性モニタリングは、医薬品のライフサイクル管理の一環として、承認後の医薬品について、医薬品の品質が担保されていることを継続的に確認・保証することです。そのため、販売されている医薬品に対して、継続的な安定性試験を実施するとともに、承認後の様々な変更、例えば原材料や医薬品の変更(製造所、製造機器など)を行った際にも安定性試験を実施し、その変更が当該医薬品の有効性及び安全性に影響を与えていないかの確認を行います。また、安定性モニタリングにて得られた経時的な試験結果について傾向分析を行うことで、品質問題の早期発見や調査及び予防的措置を講じることも安定性モニタリングを実施する目的のひとつです。
安定性モニタリングの試験項目
安定性モニタリングにおける試験項目は、『改正GMP省令(2021年)の第11条の2 安定性モニタリング』にて、「当該医薬品の品質規格のうち、保存により影響を受けやすい項目及び当該規格に適合しない場合に当該医薬品の有効性又は安全性に影響を及ぼすと考えられる項目を、試験検査の項目として選定すること。」と記載されており、医薬品(有効成分)の性質、剤形、保存条件により試験項目が異なります。
例えば、錠剤やカプセル剤などの内用固形剤においては、医薬品の有効性や安全性に関係する、有効成分の含量の測定、純度試験や溶出試験、保存により影響を受けやすい物理的試験などを行います。
このように、医薬品では、設計時の品質の確認・保証のみならず、市販後の品質についても継続的に確認・評価を行い、恒常的な品質の担保を図っています。
(関連情報)
GE薬協Webサイト「ジェネリック医薬品について(4.ジェネリック医薬品の承認申請)」
https://www.jga.gr.jp/medical/about.html#Sec3
JGAニュースNo166からの転載です