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バリデーションについて

バリデーションについて

〇バリデーションとは何?

 バリデーション(validation)の日本語の意味は、「確認」、「批准」ですが、最近では「妥当性を検証すること」、「ある基準について、その基準と合致しているかどうかを検査する」という意味として解釈されています(実用日本語表現より)。
 医薬品においては、改正GMP省令(注1、注2)第二条第13号により「バリデーション」は、製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法(以下「製造手順等」という。)が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることと定義されています。
また、同省令の第十三条には、バリデーションについては
・あらかじめ指定した者が手順に基づき行うこと。
・バリデーションを行う必要がある場合、計画及び結果は、品質保証に係る業務担当組織に文章で報告すること。
等が規定されています。
 さらに、バリデーション基準(注3)において、バリデーション手順書に掲げる事項、バリデーション責任者の責務、バリデーションを実施する際の基本的要件が規定されています。

〇バリデーションは何故必要?

 バリデーションは、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造できることを証明するために行います。
 製品の品質は、製品の一部を採取して出荷試験を行い出荷に際して規定されている規格に適合していることを確認するだけでは保証したことにはなりません。
 例えば、錠剤における有効成分の均一性(例えば10mg錠の錠剤に等しく有効成分が10mg含まれているか)を評価するには、出荷試験を行う検体は製造したロットを代表するものでなければなりませんし、常に均一に有効成分が分散されていることを限られた検体から保証しなければいけません。
 特に、無菌試験においては、限られた検体から製造された製品全ての無菌性を保証しなければなりません。
 そのため、出荷試験における規格の適合のみで製品の品質を保証することには限界があります。これを回避し、保証しようとする製品の品質を恒常的に維持するためにバリデーションを実施して、バリデーション結果に基づく最適な製造が行われるための製造手順等を検証し、文書化する必要があります。これは、新薬やジェネリック医薬品の区別なく必要なことです。

〇バリデーションはどのような時に行う?

 製品の製造プロセスにおいて、製造管理方法や品質管理方法(試験方法も含む)等の妥当性を確認するためにプロセスバリデーション(PV:製造過程で、設備・製造工程の管理が目標とする品質を達成するものであることを検証し、文書化すること)を行う必要があります。具体的には、医薬品の工業化研究の結果や類似製品に対する過去の製造実績等に基づき、得られている知見やデータ等から、あらかじめ特定した製品品質に影響を及ぼす変動要因(原料及び資材の物性、操作条件等)を考慮した上で設定した許容条件の下で工程が稼働し、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造するために妥当な工程であることを確認し文書化します。
 プロセスバリデーションには、次のものがあります。
予測的バリデーション…製品の商業生産を行う前に行うバリデーションです。製造販売承認取得に当たっては、製造販売承認申請品目のGMP適合性調査時に、バリデーションの妥当性の確認が行われます。
コンカレントバリデーション…バリデーション済みの工程を改良して製造する等の場合に用いられます。
プロセスバリデーションの他に洗浄バリデーション、再バリデーション及び変更時のバリデーションがありますが、これらのバリデーションは、個々に行われるわけでは無く、変更時の(再)バリデーションにおいてリスク評価に基づいて、プロセスバリデーションや洗浄バリデーションを実施することもあります。

〇バリデーションによって品質はどのように保証される?

 予測的バリデーションを行い開発部門又は委託元から技術移管を適格に行うことにより、目的とする品質に適合する製品が商業生産されます。生産後は製品の終結まで、再バリデーションや変更時のバリデーションを適宜行うことにより、当初設計した品質を検証し、GMP管理を行うことで、品質保証がされた製品を恒常的に供給することが可能となります。

〇バリデーションは1回実施すれば終わり?

 プロセスバリデーションは予測的バリデーションを行って妥当性が確認されれば終わりではありません。製造方法(設備、システム、装置、製造工程及び洗浄作業等)においてバリデートされた状態が維持されていることを、定期的に再確認する必要があります。これを再バリデーションといいます。実施の必要性、時期、項目は、製品品質の照査の結果等を考慮して決められます。なお、無菌性保証に係わるバリデーションは、定期的に再バリデーションを実施しなければならないことになっています。

〇バリデーションと変更管理の関係は?

 変更の管理については、改正GMP省令 第十四条第1項において、変更による製品品質及び承認事項への影響を評価することになっています。また、改正GMP省令 第十四条第2項で「製品品質への影響を再確認し、当該変更の目的が達成されていることを確認するための評価を行うこと。」となっており、これがバリデーションの中で「変更時のバリデーション」と言われるものです。
 変更する内容によっては、製品品質への影響について確認するため、改正GMP省令 第十一条の二「安定性モニタリング」(製品の有効期間内での品質の安定性確認)が必要になる場合があります。

〇そもそも変更管理とは、変更した後はどうする?

 改正GMP省令 第十四条(変更の管理)に、製品若しくは原料等の規格又は製造手順等について変更を行う場合について規定されています。
 変更は、製品品質及び承認事項への影響を評価し、影響を及ぼす又はその恐れがある場合製造業者から製造販売業者に連絡、確認を受けることとなっており、変更後も連絡を行うこととなっています。第十四条第2項1号に、製品品質への影響を再確認し、当該変更の目的が達成されていることを確認するための評価を行うこととされています。
 この評価の一つとして、バリデーションが行われることになります。また、変更の内容によっては、安定性試験を行う場合もあり、その試験のために期間が必要になります。さらに、承認事項の変更が必要になる場合は、薬事手続き終了までの期間が必要になります。これらの確認や手続き等が終了して初めて変更した製品の出荷を行うことが可能となります。

(参考資料)
注1:令和3年4月28日厚生労働省令第90号「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部を改正する省令」

注2:令和3年4月28日薬生監麻発0428第2号三課長通知「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正について」

注3:平成17年3月30日薬食監麻発0330001号監視指導・麻薬対策課長通知「薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律の施行に伴う医薬品、医療機器等の製造管理及び品質管理(GMP/QMS)に係る省令及び告示の制定及び改廃について」(第3章 第4、バリデーション基準)
(平成25年8月30日薬食監麻発0830第1号監視指導・麻薬対策課長通知「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の取扱いについて」により一部改正)

JGAニュースNo164からの転載です