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薬価調査について

 薬価調査について

薬価調査とは
 薬価基準は「保険医療に使用できる医薬品の品目とその価格を厚生労働大臣が定めたもの」で、保険医療で使用した医薬品の請求額を定めた公定価格です。同時に、この薬価基準は、医療保険から保険医療機関や保険薬局(医療機関等)に支払われる際の医薬品の価格を定めた保険償還価格となっています。
 医薬品の取引は自由な市場経済の原則で行われており、医療機関等の購入価格が薬価基準で定められた価格を下回っている場合でも、保険者への請求額は薬価基準で定められた価格となることから、この差額を縮小するため、定期的に価格の見直し(薬価改定)が行われています。
 医薬品価格調査(薬価調査)とは、薬価改定の基礎資料を得ることを目的として、薬価基準に収載されている全ての医薬品について、医療機関等に対する医薬品卸売販売業者の販売価格及び医療機関等での購入価格・数量等を調査するものです。統計法に基づき総務省の承認が必要な一般統計調査であり、調査対象者の回答は任意とされています。
 薬価調査の実施計画は厚生労働省より提示され、中央社会保険医療協議会(中医協)で了承された後に実施されます。

薬価調査の方式
薬価調査の方式には、自計調査と他計調査があります。
○自計調査
 医薬品卸売販売業者や医療機関等自らが調査データを厚生労働省へ報告する方式。
○他計調査
 厚生労働省職員などが医薬品卸売販売業者へ出向き調査を行う方式。

薬価調査の種類
薬価調査には、薬価本調査と経時変動調査があります。
○薬価本調査
 薬価基準に収載されている全ての医薬品について、医療機関等へ医薬品を供給している医薬品卸売販
 売業者の販売価格及び一定率で抽出された医療機関等での購入価格、及び販売・購入数量を調査するも
 ので、自計調査で実施されます。
○経時変動調査
 常時、市場実勢価格を的確に把握するとともに、薬価本調査を補完するために行う調査であり、本調査
 のデータの信頼性を高めることを目的としています。随時、他計調査及び自計調査で実施されます

薬価調査の概要と結果
 薬価調査の概要と結果は、厚生労働省のホームページに公開されます。直近の調査である令和3年に実施された薬価調査の実績は以下の通りです。

 

(令和3年度 薬価調査の実績)


○調査期間
 令和3年度中の1か月間(9月分)の取引分を対象として実施
○調査の対象及び客体数(回収率)
(1)販売サイド調査
  保険医療機関及び保険薬局に医薬品を販売する医薬品卸売販売業者の営業所等の全数を対象   
  調査客体数 6,476客体(回収率86.1%)
(2)購入サイド調査
  ①病院の全数から、層化無作為抽出法により20分の1の抽出率で抽出された病院を対象     
   調査客体数 410客体(回収率72.9%)
  ②診療所の全数から、層化無作為抽出法により200分の1の抽出率で抽出された診療所を対象   
   調査客体数 512客体(回収率74.2%)
  ③保険薬局の全数から、層化無作為抽出法により60分の1の抽出率で抽出された保険薬局を対象 
   調査客体数 1,017客体(回収率81.3%)
○調査事項  ※価格は、調査実施時点で妥結しているもの
(1)販売サイド調査
  品目ごとの販売価格、販売数量
(2)購入サイド調査
  品目ごとの購入価格、購入数量、購入先の医薬品卸売販売業者情報(業者名、本店・営業所名)
○調査手法
 厚生労働省から直接客体に調査票を配布・回収 


薬価制度の抜本改革による診療報酬改定がない年の薬価改定の薬価調査
 薬価改定は原則2年に1度(偶数年)行われてきましたが、平成28年12月に4大臣合意(内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、厚生労働大臣)により「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」がとりまとめられ、市場実勢価格を適時薬価に反映して国民負担を抑制するため、全品目を対象に、毎年薬価調査を行い、その結果に基づき薬価改定を行うとされました。そのため、2年に1回行われている薬価調査に加え、その間の年においても、大手事業者等を対象に調査を行い、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行うとされました。
 診療報酬改定がない年の薬価改定のための薬価調査初年度となった令和2年度薬価調査は、新型コロナウイルス感染症の影響に配慮する観点から、通例、全数を対象としている販売サイド調査については、販売サイドの負担軽減を図りつつ、一定の調査精度を確保できるよう3分の2の抽出率で数を絞って実施されました。また購入サイド調査に対しても、令和元年調査の約半分の抽出率で抽出して実施されました。
令和2年に実施された薬価調査の実績は以下の通りです。

 

(令和2年度 薬価調査の実績)


○調査期間
 令和2年度中の1か月間(9月分)の取引分を対象として実施
○調査の対象及び客体数(回収率)
(1)販売サイド調査
  保険医療機関及び保険薬局に医薬品を販売する医薬品卸売販売業者の営業所等の全数から、層化無作為抽出法により3分の2の抽出率で抽出された営業所等を対象         
  調査客体数 4,259客体(回収率86.8%)
(2)購入サイド調査
  ①病院の全数から、層化無作為抽出法により40分の1の抽出率で抽出された病院を対象    
   調査客体数 205客体(回収率74.6%)
  ②診療所の全数から、層化無作為抽出法により400分の1の抽出率で抽出された診療所を対象  
  調査客体数 253客体(回収率76.7%)
  ③保険薬局の全数から、層化無作為抽出法により120分の1の抽出率で抽出された保険薬局を対象
   調査客体数 500客体(回収率83.2%)
○調査事項  ※価格は、調査実施時点で妥結しているもの
(1)販売サイド調査
  品目ごとの販売価格、販売数量
(2)購入サイド調査
  品目ごとの購入価格、購入数量、購入先の医薬品卸売販売業者情報(業者名、本店・営業所名)
○調査手法
 厚生労働省から直接客体に調査票を配布・回収


 令和2年度薬価調査では、販売サイド調査が3分の2の抽出率で実施されていることから、全数調査との市場実勢価格における誤差が必然的に生じることになりました。次の診療報酬改定がない年の薬価改定に向けた令和4年度薬価調査については、中医協において、改めて薬価調査の対象範囲や方法等について議論が行われ、了承後に実施されることになります。

<参考資料>
〇厚生労働省ホームページ 医薬品価格調査
 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/157-1.html
〇厚生労働省ホームページ 診療報酬関連情報
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html
〇厚生労働省ホームページ 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会)
 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128157.html

JGAニュースNo172からの転載です