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安定供給ガイドラインについて

安定供給ガイドラインについて

厚生労働省は、後発医薬品のさらなる使用を促進するため、現在の使用促進策に係る課題を明らかにするとともに、新たな目標を設定して、行政、医療関係者、医薬品業界など国全体で取組む施策として「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を平成25年4月に策定しました。このロードマップに業界団体として取組む「安定供給ガイドラインの作成」と各社が取組むそのガイドラインに準拠した「安定供給マニュアルの作成」があります。「安定供給ガイドライン」は、この目標に従い平成26年3月に日本製薬団体連合会GEロードマップ対応プロジェクトが作成いたしました。「安定供給ガイドライン」には、先ず安定供給に寄与する組織と責任者について定めています。会社内において安定供給にかかわる部門は、研究開発部門から購入部門、生産部門、営業部門、物流部門に至るまで、多くの部門がかかわり、その全ての部門が安定供給に寄与していることを自覚し、緊密な連絡調整が図れる体制を構築することが大切であるとしています。そして、安定供給を管掌する役員相当として「安定供給管理責任者」を定めること、並びに実務担当者として「安定供給責任者」を定めることとしており、その責務を次のように明記しています。


<安定供給管理責任者の責務>

  • 「安定供給責任者」の業務が適正かつ円滑に行えるよう取り計らうこと。
  • 「安定供給責任者」が制定・改訂を行った「安定供給マニュアル」を承認すること。

<安定供給責任者の責務>

  • 「安定供給マニュアル」の制定・改訂を行い、「安定供給管理責任者」の承認を得るとともに社内関係者に周知徹底すること。
  • 安定供給に関する情報を的確に判断し、安定供給に支障をきたすおそれがある案件発生時には、緊急に対策会議を招集するなど社内外の調整を行い、品切れ発生を出来うる限り防止すること。
  • 品切れ発生時には社内外の調整を行い、市場に対する影響を最小限に抑えるよう努めること。

次に各企業が「安定供給マニュアル」を作成するにあたって留意すべきことを、12の手順に分けて定めています。この留意すべきことは、これまでに経験した品切れ事例を調査・分析し、その原因を排除するためにたてられた対策点並びにロードマップに定めることとして記述された点が盛り込まれています。


<安定供給ガイドラインに記載されている手順>

  1. 原薬の安定確保に関する手順
  2. 在庫管理に関する手順
  3. 生産管理に関する手順
  4. 他社に製剤を製造委託する場合の手順
  5. 配送に関する手順
  6. 安定供給に関連する情報の収集、評価に関する手順
  7. 安定供給に支障をきたすおそれがある案件発生時の対応に関する手順
  8. 品切れ等発生時の対応に関する手順
  9. 供給停止に関する手順
  10. 記録に関する手順
  11. 自己点検に関する手順
  12. 制定改廃に関する手順

全ての手順における留意点を紹介すると紙面オーバーになりますので、詳細には日本製薬団体連合会のホームページ(http://www.fpmaj.gr.jp/documents/nyn157gl.pdf)をご覧下さい。ここでは主な点のみご紹介したいと思います。


1)原薬の安定確保に関する手順

原薬製造が海外製造業者の場合には、原薬等登録原簿(マスターファイル)という制度によって、原薬の製造方法に関わるノウハウなどを守るために製剤の製造販売業者には詳細な内容を開示しなくてもよい制度があります。これは世界的にある制度なのですが、そのマスターファイルを管理する国内管理人あるいは輸入業者らしか知らない製剤に影響がある変更情報があることがあります。従って、常に3者緊密な連携を取り合って、変更情報に対応する必要があることを注意しています。その海外の製造所へGMP確認をする際には、原則現地へ赴き査察を行ってくる必要があること、もし自社のリソースが足らなければ第三者調査機関等も活用し現地査察を行いGMP管理の徹底をするべきとしています。また、急速に市場が伸びる後発医薬品のために、あるいは、リスク管理のために、原薬の供給状況、市場動向を踏まえて評価を行い、必要に応じて原薬のダブルソース化を図るようにするべきとしています。


2)安定供給に関連する情報の収集、評価に関する手順

安定供給を図るためには、他社の製造中止・回収及び出荷調整等の情報、製造所(原薬、副原料、資材、製品)の供給情報、製造所における災害・事故並びに製造国の政治情勢、市場動向(大口医療機関の採用状況、感染症・花粉症等季節性疾患の発生状況、治療ガイドラインの改訂情報等)、海外における査察指導の情報などの種々の情報を速やかに収集し、一か所に集めて総合的に判断する必要があります。本手順においては、以上のような情報を誰がどこから収集し、安定供給責任者に速やかに報告し、安定供給責任者が速やかに情報を評価し、必要な措置を講じることを定めるべきとしています。


3)品切れ発生時の対応に関する手順

万が一にも品切れが発生してしまった場合にも、市場に対する影響を最小限に抑える必要があります。従って、その時の対応についても手順を定めておくことは、非常に重要なことだと思います。先ずは、代替品の市場への供給等に関して、同一含量規格の後発医薬品を製造販売する他社へ連絡し、協力要請をする必要があります。また、シェアによっては先発会社へも協力要請をしなければいけません。そして、その代替品等を含めた品切れに関する情報を迅速に医療機関、取引先に提供することです。そして、決して忘れてはならないこととして、厚生労働省医政局経済課に事前に報告すること。品切れが発生した原因を究明し、再発防止の措置を取ることです。


4)供給停止に関する手順

供給を停止しなければならなくなった場合にも、決して勝手に停止してはいけません。業界で定めた医薬品供給停止手続きの流れに沿って行うことが重要です。医療機関への供給停止案内は、日本医師会の疑義解釈委員会了承後に行うことは当然として、在庫消尽までに余裕の期間を持つことが大切ですし、同一含量規格の後発医薬品を製造販売する他社へ事前に情報提供し、代替品の確保に努めることも必要です。


JGAニュースNo.097(2016年5月号)

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