COP実務委員会 東和薬品株式会社 天野雄介
平成24年に国際製薬団体連合会(IFPMA)が「IFPMAコード・オブ・プラクティス」を作成したことが契機となり、わが国の薬業団体も「コード・オブ・プラクティス(以下、「COP」とする)」を作成することになった。当協会でも、「GE薬協コード・オブ・プラクティス」を平成26年4月から運用しているが、従来の「医療用医薬品プロモーションコード」と異なり、プロモーション(営業)活動だけでなく広く企業活動全般に対する倫理的な指針となっている。昭和59年7月に施行された医療用医薬品製造販売業公正競争規約(以下「公競規」とする)は、景品表示法の規定により、事業者又は事業者団体が、消費者庁長官及び公正取引委員会の認定を受けて、景品類に関する事項について自主的に設定する製薬業界のルールである。この2つのルールは、医療用医薬品のマーケットの変化とともに密接に絡み合いながら発展してきている。これら2つのルールについて目的・性格・対象範囲・判断基準について整理した。
【目的】
COPは「企業が常に高い倫理性と透明性を確保し、多くのステークホルダーに対して説明責任を果たし、社会の信頼に応えなければならない」ということで広い意味での社会的責任がその目的となっている。一方で、公競規は「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するべく、公正な競争秩序を確保する」ということで、マーケットでの公正な競争の確保が主な目的となっている。
【性格】
COPは倫理に基づく自発的・自律的なもので、強制力はない。一方で、公競規は法を根拠として消費者庁長官と公正取引委員会が認定したものであるため、業界の自主ルールとはいえ、法律に準じたものと言えるだろう。ただ、両ルールとも実務の世界では基本的なルールとして、会員各社には取り組んでいただいている。
【対象範囲】
既に述べたようにCOPは従来のプロモーションコードと異なり、企業の社会的な責任まで範囲が広がっている。ただし、プロモーションコードの章においては、医薬品情報の提供・収集・伝達のあり方については従来のプロモーションコードと同様にMR活動の基本指針となっている。一方で、公競規は医療用医薬品の取引に付随して医療機関等に提供する景品類のみを対象としている。なお、ここで言う景品類とは「顧客を誘引する手段として、自己の供給する医療用医薬品の取引に附随して提供する物品、金銭等その他経済上の利益」をいい、世間一般で言う景品類より広い範囲のものとなっている。
【判断基準】
COPは目的からも理解できるとおり製薬企業として行為がふさわしいか、社会の期待に添っているかが判断の基準となる。一方で、公競規は取引を不当に誘引していないか、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害しないかが判断の基準となる。
以上のように、COPと公競規は密接に関係しており、高い倫理的自覚を求められる製薬企業が社会の期待に応え、継続的に発展していくために必要不可欠なルールとなっている。会員企業においては、これらのルールを自社のルールとして定着させるために、現場のMRや関係者が活用しやすいように教育を促していく必要があり、会員各社には地道な取り組みを期待している。
JGAニュースNo.099(2016年7月号)