医療用医薬品の流通に関する諸問題の中で、特に重要課題である「総価取引の改善」については未だ道半ばと思われますが、今回は主だった医薬品の取引形態である総価取引と単品単価取引についてその現状を踏まえて解説したいと思います。
総価取引とは
単品ごとに仕入れ値を決めるのではなく、医療機関が購入する全品目を薬価基準で算出した上で、 「ひと山いくら」で割引率と取引価格を決めるやり方を指す。総価で交渉し総価で見合うよう個々の単価を卸の判断により設定する契約(単品総価契約)または個々の単価を薬価一律値引きで設定する契約(全品総価契約)がある。
現在使用されている総価取引という文言は、こと医療現場においては古くから「総価山買い」と呼ばれてきました。ただし総価取引には多くの問題があると古くから指摘されており、個々の医薬品の価格設定の主体性が乏しく、またコスト積算根拠も見えづらいなどの弊害が認知されていました。そのような背景もあって、厚生労働省の政策部会である「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会」が「医療用医薬品の流通改善について」という緊急提言を発表。「長期にわたる未妥結・仮納入や総価取引が購入量の大きい医療現場で継続している」とし、メーカーの医薬品卸に対するリベートありきの取引是正や長期にわたる未妥結・仮納入の改善及び「総価取引の改善」を求められました。特にメーカーと卸間の価格体系の透明性、また卸における価格設定の自立性の確保が重要と提言され、総価取引に代わる「単品単価取引の推進」が重要と位置付けられた訳です。
単品単価取引とは
銘柄別薬価制度の趣旨を踏まえ、文字通り、薬の品目ごとに購入価格を決める取引を指す。
当然ではありますが、医薬品には個々の価値に応じた価格があり、単品単価取引の普及は薬価基準制度の根幹とも言えます。当然価値に見合った市場価格の形成が必要です。
薬価基準制度を背景とした医薬品の適正価格取引は、「未妥結・仮納入問題」と表裏一体ではありますが、一昨年に導入された「未妥結減算ルール」により未妥結・仮納入問題の是正については一定の成果を得ました。ただし、残念ながら、通常よりも短期間で妥結する作業が要求された状況下において、それが逆に単品単価取引推進の阻害要因になったとの記事も同時に散見されました。
上記のように、適正な医薬品流通形態を推進するためには、単品単価取引の普及は大変重要であると言えます。特にジェネリック医薬品市場80%時代を前に、物量ベースで50%に及ぶと想定されているジェネリック医薬品の取引においても、その強化が求められています。
JGAニュースNo.101(2016年9月号)