基礎的医薬品とは
基礎的医薬品は、平成28年度薬価制度改革から試行的に導入された制度で、保険医療上の必要性が高く、医療現場において長期間にわたり広く使用されて有効性・安全性が確立されている医薬品であって、継続的な市場への安定供給を確保する必要があることから薬価上の措置が行われた医薬品群です。
導入経緯
日本の薬価基準制度は、原則2年に1度の薬価改定により価格を改める(引き下げる)仕組みが取り入れられています。この仕組みは、市場競争を価格に反映することができるので、国民負担の軽減の観点から適切な制度として運用されています。
しかし、度重なる薬価改定を経た医薬品の中には、薬価が引き下がり過ぎて不採算に陥る品目も発生して来ます。その為、薬価を下支えする仕組みとして最低薬価と不採算品再算定という制度が設けられていますが、不採算品再算定を受けた品目の中には、この再算定の適用を繰り返し受ける品目が多数含まれるという状況にもなっていました。不採算品となれば製造中止という選択肢もありますが、医療現場から継続供給の要望のある臨床上不可欠な医薬品や、古くても今もなお治療の最前線で投与されている医薬品もあり、製薬企業の継続した安定供給を行う使命から製造中止が出来ない状況ともなっていました。
そこで、不採算品再算定、最低薬価になる前の薬価を下支えする制度として位置付け、その明確な対象要件を設けた上で、平成28年度薬価制度改革で試行的に導入された制度が『基礎的医薬品』になります。
対象要件
薬価改定の際、以下の対象要件に該当する既収載品は基礎的医薬品(十分な収益性が見込まれるものを除く)とされ、改定前の薬価が維持されます。なお、基礎的医薬品である間は、継続的な安定供給が求められます。
イ 医療上の位置付けが確立し、広く臨床現場で使用されていることが明らかであること
ロ 当該既収載品並びに組成及び剤形区分が同一である全ての類似薬のうち、薬価収載の日から25年を経過しているものがあること
ハ 当該既収載品と組成及び剤形区分が同一である類似薬がある場合には、当該既収載品を含む類似薬の平均乖離率が、全ての既収載品の平均乖離率を超えないこと
ニ 当該既収載品の市場実勢価格の薬価に対する乖離率が、全ての既収載品の平均乖離率を超えないこと
薬価上の措置
・基礎的医薬品の対象要件を満たす品目の薬価は、最も販売金額が大きい銘柄に価格を集約して、その薬価が維持されます。
・基礎的医薬品の対象外となった品目の薬価は、対象外全品目の市場実勢価格の加重平均値で改定されます。
対象品目
平成28年度の基礎的医薬品は、①過去の不採算品再算定品目に加え、古くから医療の基盤となっている医薬品として、②病原生物に対する医薬品(薬効分類番号600番台)及び③医療用麻薬(薬効分類番号800番台)を基に選定され、134成分617品目が対象品目となりました。平成30年度の基礎的医薬品は、生薬や軟膏基剤、歯科用局所麻酔剤等の追加が求められ、その対象品目は261成分660品目となっています。
区分 | 成分数 | 品目 |
不採算 | 119成分 | 370品目 |
病原生物 | 81成分 | 205品目 |
麻薬 | 9成分 | 24品目 |
生薬 | 48成分 | 55品目 |
軟膏基剤 | 3成分 | 3品目 |
歯科用局所麻酔剤 | 1成分 | 3品目 |
合計 | 261成分 | 660品目 |
参考)厚生労働省HP基礎的医薬品対象品目リストより
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000195935.pdf
2018年6月27日時点