ICHは、International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)の略称です。ICH活動の目的は、世界規模で薬事規制上のガイドライン(科学的・倫理的に適切と考えられる指針)の調和を図ることにあり、安全性・有効性・品質の高い新しい医薬品が確実に開発・上市され患者さんが新しい治療を継続的に利用できるよう促進しています。新医薬品申請に関する規制は各国で独自に定められていたため従来は各規制への対応のために追加試験や不必要な試験の繰り返しが行われていましたが、ICHの活動によりこれらの面が改善され資源の節減と承認審査の迅速化が進められています。
ICH会議には,日本・米国・EU(欧州連合)の規制当局および医薬品業界団体、カナダ、スイスの規制当局、ならびに国際的な医薬品関連団体(IGBA、WSMI(OTC団体)およびBIO(バイオ団体)などの13団体がメンバーとなり、当協会も加盟する国際的なジェネリック医薬品業界団体であるIGBA(InternationalGenericandBiosimilarMedicinesAssociation、国際ジェネリック・バイオシミラー医薬品協会)もメンバーとして参画しています。さらに、オブザーバーとして、IFPMA(国際製薬団体連合会)、WHO(世界保健機構)など21団体が参画しています。ICHは、世界各国・地域からのメンバー・オブザーバーを更に増やし、より国際的な規模での活動を推進することにより、ガイドラインが世界のより広い地域に普及し、活用されていくことを目指しております。
ICHでは、医薬品の承認に際して必要な品質(Quality)、安全性(Safety)、有効性(Efficacy)および前三領域に共通する複合領域(Multidisciplinary)の各領域について、専門家により構成される作業部会が科学的な議論を行い、下表の5段階のプロセスによって、総会においてガイドラインが合意・批准され、各地域・国において運用されています。
表 ガイドラインの合意までのプロセス
ステップ1 |
新しいガイドライン作成について提案され、総会の承認を経て専門家作業部会が設置される。 専門家作業部会はガイドライン案のベースとなる技術ドキュメントを作成。 |
ステップ2 |
ステップ2a:ステップ1で作成された技術ドキュメントの総会での承認。 ステップ2b:ステップ2aで承認された技術ドキュメントに基づくガイドライン案の総会での規制当局代表者による承認。 |
ステップ3 |
ICH 各地域・国の規制当局(日本 : 厚生労働省)によるガイドライン案の公表、 意見募集。公募意見に関して専門家作業部会で協議、ガイドライン案を修正 |
ステップ4 | 修正ガイドライン案の総会での規制当局代表者による最終合意、採択。 |
ステップ5 |
ICHに参画する各地域・国の規制当局が、ガイドラインを施行・実施。 日本では厚生労働省医薬・生活衛生局から通知される。 |
これまでに各領域合わせて50を超えるガイドラインが合意・実施されていますが、既存のガイドラインについても、ガイドラインの理解を深めるためのQ&Aの作成や科学技術の進歩に対応した改定が必要に応じて行われ、こうした追加や改訂も総会の承認により決定されています。
ICHガイドラインは、従来新医薬品の申請承認に適用されてきましたが、今般ジェネリック医薬品においても適用され始めております。
当協会はIGBAを通じ、オブザーバーの立場としてICH活動に参画してきましたが、IGBAが総会メンバーに昇格し、今後より主体的かつ積極的な関与が重要となってきております。会員各社様にもICHの重要性をご理解いただき、当協会としてのICH活動への取り組みにご支援のほどお願いしたく存じます。
参考
ICHホームページ: http://www.ich.org/home.html
PMDA「ICH説明」:https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0014.html
JGAニュースNo.107(2017年3月号)