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ジェネリック医薬品80%達成に向けて薬局・薬剤師が行うべき対応

日本薬剤師会 常務理事

永田 泰造

日本薬剤師会 常務理事 永田 泰造
はじめに

 政府主導による数値目標というのは、医療業界の動向に恐ろしいほど影響を与えます。
 過去、後発医薬品の全国平均使用率70%目標が掲げられたとき、多くの薬剤師が驚愕の念を示し意気消沈した姿を多くの場面で目にし、高い目標に対しての苦言も受けました。
 ところが、蓋を開けてみると、目標設定された期日に少々遅れはしましたが、見事にその数値に到達しています。医薬分業推進施策により、処方箋受取率が全国平均70%を超えるために費やした期間に比べれば、はるかに短い期間で到達できています。このことは、政府が示した後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ(以下、ロードマップ)に基づいて、保険者、医薬品メーカー、医師、歯科医師、薬剤師が、それぞれの役割の中で最善の努力を行い、最終使用者である患者自身の選択肢に意識変化をもたらせた結果であることは言うまでもありません。
 しかし、そういった努力の陰には漫然とした不安や不信が一部の医療従事者や患者にあり、そのことに起因する疑問や課題などが指摘されていることを忘れてはなりません。更なる使用促進を目指すには、これらの問題点に対して、それぞれの立場で新たな対応策を実践することが肝要です。
 この機会に、保険薬局の立場から見た問題を選出し、80%に到達するための対応策を考えてみたいと思います。


流通に関する不安

 以前より、後発医薬品(以下、GE)の流通不安定に関する問題点が指摘されています。ロードマップ検証検討調査によると、国の役割として安定供給に関する苦情の収集が行われていますが、平成28年度に収集された苦情は34件であり、平成29年度は13件と減少しております。情報収集に係る通知は毎年発出されていますので、保険薬局へのGEの流通は改善されているものと判断できます。また、不安定な供給状況となった品目に関する厚生労働省による当該企業へのヒアリング件数の数値に変化は見られません。
 このことから、流通に関する苦情が減少していることは、企業側の努力だけではなく、卸店による保険薬局への遅滞ない情報提供や経験に基づいた保険薬局自身による代替医薬品への対応策の実践なども要因として考えられます。


一般名処方への変更

 後発医薬品への変更調剤を行うにあたっての問題点は、先発医薬品に対する変更不可処方箋の存在であることは言うまでもありません。この点を踏まえ、医療保険制度において処方箋の様式変更や一般名処方推進への評価が行われています。ロードマップ検証検討調査によると、薬剤師がGEに変更できなかった理由として「医師が処方した医薬品が良い」と患者が答えた場合が最も多く選択されています。このことから、銘柄処方ではなく一般名での処方を推進することで、一定の効果を得る可能性が示唆されます。したがって、更なる一般名処方の推進が求められることになりますが、処方医から見ると一般名処方は製品名と異なり覚えにくい、処方薬の選択に関する煩雑さ、薬剤師から見ると配合剤での複数薬剤の表記による医療安全上の問題など、様々な問題点が指摘されていることも事実です。そこで、医事システムの活用による入力補助が重要となりますが、一般名処方を発行できる医事システムを導入していない医療機関は未だ40%を超えています。更なる推進を行うには、処方箋発行システムが導入されているのであれば、採用医薬品(医薬品マスター )には院内独自の選択コードを付けられているはずですので、選択コードの工夫で一般名称処方に対応可能と考えますが、時間と労力を考えるとシステム企業の協力が不可欠であると思います。


後発医薬品の使用に違和感を持つ患者

 ロードマップ検証検討調査での患者調査において、GEに対する認知度は95%を超えており、ほとんどの国民がGEの存在を認識しており、85%の患者がGEの内容を知っています。さらに、88%の患者が使用経験ありと回答しています。
 しかし、別の設問でGEの使用に関する考えを自己負担額の差の観点から確認すると、12%の患者が「いくら安くなっても使用したくない」と回答しています。主な理由は、効き目(効果)や副作用に関する不安、使い慣れたものがよい、報道等の内容が要因としたGE選択に否定的な評価などが挙げられます。
 さらに、これらの選択肢を選んだきっかけを確認すると、具体的なものはないという選択肢を選んだものが多く、その他の自由記載では、風評や主観的な信頼感など先に記述したマスコミ等からの影響によるものが多く記載されています。
 医療従事者として必然性を持つ、副作用の発現(8.6% )や効果の差(10.5% )使用感の問題(10.5%)などの選択肢より、「その他と具体的なものはない」の選択肢に記載された回答者は50%を超えます。すなわち、違和感を持つ患者の半数はGEを使用したくない明確な理由がないことになります。


後発医薬品の情報収集と分析

 検証調査の結果から、医師・薬剤師がGEを選択するにあたっての基準は、「信頼できる企業であること」及び「安定した供給が行われていること」に集中しています。信頼という観点では、医薬品の品質に関しては厚生労働省の担保があり、流通に関してはかなりの改善がみられています。
 では、当該医薬品の情報収集について改善の余地があるのでしょうか。検証事業によると、GE採用に当たっての情報収集先は、MR・MS・PMDAが上位を占めており、日本ジェネリック製薬協会は8.4%という結果でした。GE製薬企業のホームページが充実され、日本ジェネリック製薬協会のジェネリック医薬品情報提供システムがあるにもかかわらず、多くの医療従事者がインターネットを活用せず、過去からの情報入手法を変えていないことがわかります。特に、保険薬局においては、多数の医療機関からの処方箋を応需する立場ですから、地域事情や基幹病院の医薬品フォーミュラリーで推奨されるGEなどに基づき、同一成分の複数薬剤を取り扱うことが求められます。しかし、情報収集と分析を専門的に行う要員を確保している施設は少ない現状であり、この点が、医薬品情報室などの部署が設置されている病院との違いであると思います。

 先日、厚生労働省との共催で「ジェネリック医薬品シェア80%に向けた課題と解決策」を題材としたフォーラムが開催されました。パネリストとしてご登壇いただいた国立国際医療研究センター病院の坂本治彦先生より、院内においてのGE切換に対する処方医への具体的な資料を用いての説明、切り換えるべきではない製剤についてご発表頂きました。基幹病院におけるGEの選択は、他の専門病院における使用実績、品質に関する資料、試用期間の設定など院内全体で問題点の抽出と検討が行われた後に正式採用がされているということです。したがって、開示された採用薬は、保険薬局にとって自局の採用に際して非常に参考になるものと考えます。


終わりに

 最近の調剤医療費(電算処理分)の動向によると、後発医薬品割合の全国平均は73.0%(3月分)となりました。一般名処方の推進により、患者が服用している先発医薬品をGEに切換えるのではなく、初回投与からGEを選択する状況期に入ったことが要因の一つに挙げられます。
 しかし、今後を考えれば、一般名称に伴う誤認しやすい名称も一部に存在するので、医療安全の観点からも適切な処方記載の在り方を議論しておく必要があります。また、患者からの使用感や漠然とした効果に関する不安もぬぐい切れません。基幹病院における医薬品フォーミュラリーを参考に、地域薬剤師会が中心となり地域におけるエッセンシャルGEリストなどを作成し、保険薬局に対しての情報提供を行う必要があると考えます。既に、ロードマップに従ってすべての関係者が行動していますが、風評による思い込みや個人的な感覚などで、いまだにGEの使用に否定的な患者がいることも事実です。要は、医療従事者がエビデンスに基づいて使用するGEであり、効果的にそして経済的な薬剤の選択が行われていることの啓発を調剤の現場で行うことが重要です。
 そのためには、組織的な対応が選択肢として挙げられます。薬剤師会と病院薬剤師会によるGEフォーミュラリーの提案を基に、従事する薬剤師がエビデンスに基づいて継続した啓発活動が重要な鍵となると考えます。日本ジェネリック製薬協会からの組織的な更なる情報提供に期待いたします。

JGAニュースNo.126(2019年10月号)