添付文書が新様式となります
2017年6月に医療用医薬品の添付文書の記載要領がおよそ20年ぶりに改定され、2019年4月1日より運用が開始されました。但し添付文書はおよそ1万5千枚あり、新記載要領に基づいた新様式の添付文書とするには時間を要するため、5年間の経過措置期間が設けられています。このため、当分の間は新旧両様式の添付文書が混在することになります。
添付文書の何が変わるのか
新様式の添付文書に記載される情報は、現在の添付文書と大きく変わるものではありませんが、下記のような点が変更となります。
1.「1.警告」から「26.製造販売業者等」まで添付文書の各項目に固定番号が付与されます。該当がない項目は欠番となります。
なお番号は、1.、1.1.、1.1.1.のように付します。
2.従来の「原則禁忌」、「慎重投与」の項目が廃止され、新設される「9. 特定の背景を有する患者に関する 注意」又はその他適切な項に移行されます(「原則禁忌」の内容の一部には新様式とする前に「禁忌」に 移行されるものもあります)。
3.「9. 特定の背景を有する患者に関する注意」には、「9.1合併症・既往歴等のある患者」、「9.2腎機能障 害患者」、「9.3肝機能障害患者」、「9.4生殖能を有する者」、「9.5妊婦」、「9.6授乳婦」、「9.7小児等」、「9.8高齢者」の各項目が設けられ、特定の背景を有する患者等に関する注意事項が集約されます。
4.新様式ではこれまでの【使用上の注意】と言う項目名はなくなりますが、記載項目のうち、「3.組成・性状」、「4.効能又は効果」、及び「6.用法及び用量」を除く「1.警告」から「15.その他の注意」までの項目が「使用上の注意」に該当します。
また、項目によっては「9. 特定の背景を有する患者に関する注意」の項同様に下位の項目名、順番も決められており、情報の記載箇所が分かりやすくなります。
(参考 新様式添付文書の項目参照)
5.その他、新たに「25.保険給付上の注意」の項が新設され、投与期間制限の対象となる医薬品に関する情報や、保険給付上の注意がある場合の情報等が記載されます。
6.従来添付文書をPMDAに届出し、公開するための電子書式としてSGML(Standard Generalized Markup Language)を用いてきましたが、新様式ではXML(Extensible Markup Language) となります。XML化により掲載情報が標準化される他、電子的な利活用がさらに容易となります。
後発医薬品の添付文書について
後発医薬品 注) の添付文書も新記載要領が適用されますが、「使用上の注意」、及び「取扱い上の注意」は、原則先発医薬品と同じ内容(効能効果が異なる場合や、剤形の違いにより注意喚起が異なる場合等は除く)となります。このため、先発医薬品の添付文書が作成・公表された以降に後発医薬品の添付文書が新様式となります。
なお、「使用上の注意」は後発医薬品も原則先発と同じとなるため、従来「頻度不明」と記していた副作用の発現頻度も先発医薬品と同様の記載になるほか、生物学的同等性試験の結果を記載する場合、これまでは対照薬剤名を「標準製剤」と記していましたが、新様式では先発医薬品の「販売名」を記します。
さらに後発医薬品の新様式の添付文書では「16.薬物動態」、「17.臨床成績」、「18.薬効薬理」の項について先発医薬品の添付文書と「同等」の記載とすることが通知で定められ、引用した文献を「23.主要文献」の項に記載することが求められています。
これまでの後発医薬品の添付文書では不足していたこれらの情報が付加されますので、医療従事者にとって分かり易く、また使い易くなるものと思われます。
注)「バイオ後続品」も同様ですが、本稿では「後発医薬品」としてまとめています。
添付文書の今後
以上今回の医療用医薬品添付文書の新記載要領について概要をご紹介しました。記載項目の見直しや、記載内容を整備することで、理解し易く、活用し易い添付文書を目指します。
また、平成31年3月19日「添付文書の製品への同梱廃止し、電子的な方法による提供を基本とする」ことが盛り込まれた「医薬品医療機器法改正案」が閣議決定され、今国会でも審議される予定です(平成31年4月1日現在)。将来的には添付文書は電子的な提供等により、添付文書のあり方も変わって行くものと思われますが、製薬企業にとっては、これまで以上に最新の情報を迅速かつ確実に医療機関に届け、適正使用情報として活用頂ける対応が求められることになります。
参考通知
平成29年6月8日
薬生発0608第1号 「医療用医薬品の添付文書等の記載要領について」
薬生安発0608第1号 「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項について」
平成30年4月13日
薬生薬審発0413第2号 薬生安発0413第1号
「後発医薬品の添付文書等における情報提供の充実について」
JGAニュースNo133からの転載です