【Factに迫る!】『AI戦略』について
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FACTに迫る!「AI戦略」について—バックキャスティング— - YouTube
昨今、チャットGPTなどの生成AIが注目されています。政府はこの4月AI戦略会議を立ち上げました。また、5月広島サミットでもAIについて討議されています。
そのような状況の中、政府は昨年「AI戦略2022」を策定しています。今回は、AI戦略2022の概略、バックキャスティングについて紹介いたします。
①『AI戦略2022』の概要
政府は、「人間尊重」、「多様性」、「持続可能」の3つの理念のもとに、Society 5.0*を実現し、SDGsに貢献するという目標を立てています。
*Society 5.0について、既寄稿『Society 5.0』(2023.4.3)参照
(https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/230403.html)
(図1)著者作図
引用:内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 「AI戦略2022」の概要
https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/aistrategy2022_gaiyo.pdf
〇この「人間尊重」、「多様性」、「持続可能」の3つの理念の実装を念頭に、5つの戦略目標(人材、産業競争力、技術体系、国際に加え、差し迫った危機への対処)を設定しています。
〇特に、AI戦略2022においては、社会実装の充実に向けて新たな目標を設定して推進するとともに、パンデミックや大規模災害等の差し迫った危機への対処のための取組を具体化しています。
〇AIに関しては、経済安全保障の観点かの取組も始まることを踏まえ、政府全体として効果的な重点化を図るための関係施設調整や、量子やバイオ等の戦略的取組とのシナジーを追求すべきことを提示しています。
〇「他国の先進的な事例」との比較に基づき、新たな目標を設定して推進するとしています。
AI技術は「国家安全保障」「民主主義保全」などの社会の根本機能維持の必須技術として、国内外の情勢や技術動向を踏まえ、大きな価値の創出につながるAIの社会実装の促進等に向けた戦略(新たな目標設定等)が必要としています。
一方、AI技術の進展により、日本の雇用の50%近くはAIによって自動化が可能と言われています。
生産性の低い業務はAIにまかせ、ヒトでしかできない業務に人的資本を振り向けることで生産性を向上できるとしています。
AIで難しい業務は、創造力や専門性、ヒトとヒトが協調して行動する社会的知性が求められる仕事と考えられています。
既寄稿『ウェルビーイング・マーケティング』(2023.3.1)で紹介した、創造性が必要な「プロティアン人材」や「マーケティング人材」はAI業務とは一線を画す可能性があります。
また、チームビルディングが必要なミドルマネジャーのスキルはAIでの代替は難しいのではないかと考えられています。
②『バックキャスティング』
既寄稿『VUCA時代経営』(2022.5.10)の「戦略的に未来をマネジメントする方法」(図2)では、戦略的洞察(strategic foresight)を高める未来を予測するツールの一つとして、シナリオプランニングを紹介いたしました。
今回は、バックキャスティングついて紹介いたします。
(図2)著者作図
引用: ハーバードビジネスレビュー2020年9月号戦略的に未来をマネジメントする方法
バックキャスティングはある特定の未来を起点に現在を振り返り、現状の何が特定の未来の出現に繋がるかを割り出す技法です。
例えば、50年後の2073年から2023年現在の課題を掘り起こし、解決方法を探る手法です。2073年の将来世代の方々は今の課題に対してどんな提言をしてくれるでしょうか。少子化問題について、もっとこうしておけば良かったのにとか、それこそ生成AIはこの使い方だともっと上手くいったのにとか、でしょう。
この将来世代からの視点「フューチャーデザイン」は財務省2022年秋の財政制度審議会で審議された「フューチャーデザイン」未来からの提言 としてまとめられています。
(参考:フューチャーデザインとは、図3)
(図3):著者作図、一部改変
出所:財務省、将来世代の視点「フューチャーデザイン」
(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20230217/02.pdf)
我々、ビジネスパーソンもバックバックキャスティングによる戦略的洞察(strategic foresight)によって、10年後の自身のメッセージ、シグナルを現在の自分に送ることで、未来の価値を創造する可能性が高まるかもしれません。
③最後に
製薬業界においてもチャットGPTなどの生成AIの活用は必須です。著作権侵害等ネガティブな問題もありますが、化合物の開発、添付文書、インタビューフォーム、MRの情報提供のあり方等々多岐にわたり、その影響は計り知れません。
現在、製薬協が中心となり、医薬品の製品名や一般名、キーワードを入力すると、FAQや添付文書、インタビューフォームを企業横断的に一括で検索できる企業横断プラットフォーム「Phind MI」の提供を2019年から開始し、現時点で、すでに10数社が参加しています。(出所:国際医薬品情報2023.4.10)
また、国内製薬メーカー数社で、生成AIを用いたチャットツール全社運用開始について開示しています。
AIは医薬品企業にとっても、企業の存続、企業価値に関わる重要な課題です。医薬品・医療機器企業はこれから、AIを戦略的に活用し、自社を「トランスフォーメーション」し、持続可能(SDGs)な国民皆保険を含めた社会保険制度維持に貢献していくべきと考えます。
文責:ニプロ株式会社 山口博人(日本FP協会会員AFP)
参考情報
◯『PBR革命』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/230601.html
◯『日本版ジョブ型』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/230501.html
◯『Society5.0』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/230403.html
◯『ウェルビーイング・マーケティング』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/230301.html
◯『サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/230201.html
◯『インパクト加重会計』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/230105.html
◯『KPI経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/221201.html
◯『価値創造経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/221101.html
◯『ムーンショット経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/221003.html
◯『人的資本経営(パート3)』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220901.html
◯『人的資本経営(パート2)』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220801.html
◯『人的資本経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220701.html
◯『ウェルビーイング経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220601.html
◯『VUCA時代経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220510.html
◯『パーパス経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220325.html
◯『ESG経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220120.html