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前回、『マネジメント 現在・過去・未来(パート3)』について紹介いたしました。
今回も、読者の反響から、マネジメントのアカウンタビリティ(説明)に関連して、『社会的インパクト』について、取り上げます。
今回、『社会的インパクト』とそれに関連した『キャリアマップ』について紹介いたします。
①『マネジメント 現在・過去・未来』
今回、ハーバードビジネスレビュー(HBR)の論考から『社会的インパクト』ついて紹介いたします。(図1)
【社会的インパクト:短期、長期の変化を含め、事業活動の結果として生じた社会的、環境的な効果】
(図1)著者作図
引用:ハーバードビジネスレビュー2023年9月号リーダーのための成長論
ハーバードビジネスレビュー2023年9月号 リーダーのための成長論の中で、ハーバード・ビジネス・スクール ジョージ・セラフェイム教授が、「サステナブルな社会の実現に、経営の透明性は欠かせない」と題して論考しています。
セラフェイム教授は、企業が社会や環境に与える影響を財務諸表に反映させる「インパクト加重会計*」の旗振り役であり、いまやESG**(環境、社会、ガバナンス)界の
大御所と云われています。
この論考のなかで、セラフェイム教授は、例をあげて下記のように解説しています。
会計上、同程度の利益を出している2つの企業があったとします。しかしながら、中身を見てみると、1つ目の企業に比べて、2つ目の企業は、従業員に対して、質の高い仕事、高い賃金、多くの機会を提供し、顧客も満足している。出す製品は必要とされ、安全で、その製造過程の環境負荷も低い。
この2つの企業は、会計上、同じに見えても、顧客、雇用、環境 へのインパクトが全く違うわけです。
顧客インパクトの良い企業は顧客満足度が高く、
従業員インパクトが良い企業はリスクが低く、
より良い環境インパクトの企業は企業価値が高い、
そして、この3つを足した「社会的インパクト」が企業の競争力に直結する と述べています。
さらに、ガバナンス(企業のミッションを明確にし、行動基準を みえる化 すること)において、組織やヒトの透明性を上げ、アカウンタビリティ(説明責任)を高めることが大切であるとしています。
個々のビジネスパーソンに当てはめると、透明性がなければ、異なる組織、人々のパーフォーマンスをベンチマークできず、誰がよりよい仕事をしているのか見ることができない としています。
透明性、アカウンタビリティが、個々のビジネスパーソンの社会における実力主義の礎であるとしています。
まさに、「透明性、アカウンタビリティ」を高めることが、個人や企業の成長、そしてサステナブルな社会の実現へと繋がります。
*既寄稿『インパクト加重会計』(2023.1.05)参照
**既寄稿『ESG経営』(2022.01.20)参照
②『キャリアマップ』
『社会的インパクト』の「従業員インパクト」に関連して、厚生労働省 職場における学び・学び直し促進ガイドライン の、マネジメントのキャリアマップについて紹介します。(図2)
(図2)著者作図
引用:厚生労働省 職場における学び・学び直し促進ガイドライン
キャリアマップは、従業員に対してキャリア形成の道筋を示すことによって、将来のキャリアに関する目標意識を高め、その実現に向けた具体的な行動を促し、企業における「人材育成」への活用を主たる目的としています。
図2は、経営戦略、情報システム、営業・マーケティング・広告等のキャリマップを示しています。
キャリアマップでは、キャリアの道筋と、各レベルの習熟の目安となる年数が、一目で分かるようになっています。さらに、キャリアの道筋に沿ってレベルアップする際にカギとなる経験・実績や、関連する資格・検定等が記載されています。
このキャリアマップでは、レベルごとの習熟期間は、3~8年とされていますが、昨今のビジネスパーソンは、この期間を大幅に短縮してきているのではないでしょうか。
ジョブ型雇用が進むなかで、20歳台でのスペシャリストやマネージャーも散見されてきています。
また、コロナ禍以後、労働市場の流動性が高まる中、リファラル採用*などにより中途採用が増えてきていることも、スペシャリストやマネージャーが増えている要因に上げられます。
新聞紙上でも取り上げられていますが、上司代行サービスのような会社が、マネージャーを1年派遣するような時代にもなってきています。(読売新聞2024年11月9日)
既寄稿『日本版ジョブ型』** にもあるように、企業に依存せず、キャリア自立し、スキルを持ったビジネスパーソンが増加していることが、習熟期間短縮の背景にあるのかもしれません。
日本経済新聞でも散見されているように、
「経験から見出される強みを認識した上で、やりがいを感じられる役割に向けて取り組むと、
強みを伸ばしながら自分らしいキャリアを歩める」としています。
変化が激しいこれからの時代、透明性、アカウンタビリティを高めた状況で、強みを伸ばしながら、わくわくエキサイティングに仕事ができるビジネスパーソンが増えていくことを期待します。
VUCA時代のエクセレントビジネスパーソンは、いつまでも変化できる自分自身をマネジメントし、エキサイティングに、「ありたい姿」である未来の価値を創造し、自分らしい「ウェルビーイング」に近づける可能性が高まります。
*既寄稿『キャリアオーナーシップ』(2024.06.03)参照
**既寄稿『日本版ジョブ型』(2023.05.01)参照
③最後に
医薬品・医療機器企業はこれから、「社会的インパクト」を戦略的に活用し、自社を「トランスフォーメーション」し、持続可能(SDGs)な国民皆保険を含めた社会保険制度維持に貢献していくべきと考えます。
文責:ニプロ株式会社 山口博人(日本FP協会会員AFP)
参考情報
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/241202.html
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/241101.html